立川談四楼「食ってから訊け」... | Q太郎のブログ

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パクリもあるけど、多岐にわたって、いい情報もあるので、ぜひ読んでね♥
さかのぼっても読んでみてね♥♥

 

 

 

 入門早々、談志のカバン持ち、つまり付き人をしていた頃、食事の際に供された

 

料理を見て、見慣れぬモノであったんで、供した人に「これ何ですか?」と訊ねた。

 

途端に 談志のカミナリが落ちた。

 

「食ってから訊け。食いもんに決まってるじゃねえか!」

 

 

 

 小言の勢いにはショックを受けたが、内容には合点がいった。そう、飲食店の料理は

 

すべて食い物なのだ。食えない物を出すわけがないのだ。カネを取るのだから。

 

口に入れ、味わい、それでも、わからなかったら、そこで初めて、素材や調理法を

 

訊けばいいのである。

 

 

 

 以来、私は、とりあえず何でも口に放り込む男になった。日本はもちろん、中国、

 

香港、韓国、台湾、タイ、インド、UAE、ヨルダン、エジプト、イスラエル、トルコ、

 

ケニア、ナイジェリアなど、どこでもである。で、どうなったかと言うと、これが評判

 

がいいのである。

 

 

 

 これは、日本人に食えないだろうというモノを、質問もせずにパクリと

 

やるのであるから、料理人も現場に住む日本人も驚き、なんだかわからないが、

 

エライということになるのだ。

 

 

 

 エヘンと1つ咳払いをして能書きだ。

 

 

 

「食い物に決まってるわけでしょ。口に

 

入れる前に、これ何ですか? ってのは、作った人に失礼ですよ」

 

 

 

 談志の受け売りを、まるで自らが発見した真理であるがごとくに語るわけだが、

 

そうなると、周囲は、ますます尊敬のまなざしになるわけで、私は更にふんぞり返る

 

という・・・。

 

 

 

「カレーライスは、どう食っても構わんが、蕎麦だけはちゃんと食え!」

 

 

 

 これも、入門早々に言われたことだ。つまり、「ワサビをツユに溶くな」

 

「ソバをツユにジャブジャブ浸けるな」

 

「さっさと食え」ということである。

 

 

 

「いつまでクチャクチャやってやがんだ。口ん中で、クソになちゃうじゃねぇか!」

 

という小言もあるくらいで、落語家は、かなり蕎麦にはうるさいのである。

 

 

 

 

 

蕎麦屋満員 に対する画像結果

 

 

 

 談志の師匠 柳屋小さんの蕎麦の食いっぷりは見事だった。ある晩、上野は鈴本

 

演芸場の高座を終えた小さんが、我ら若手を蕎麦屋に誘ってくれた。

 

 

 

 蕎麦屋は満員で、小さんの前に蕎麦が運ばれた時、店内の視線が小さんに注がれる

 

のがわかった。小さんは、この晩 自らが演じた『時そば』によって蕎麦が食いたく

 

なったのであり、客もまた小サンの『時そば』を聴いて蕎麦屋に駆けつけていたのだ。

 

 

 

 一同が凝視する中、小さんが蕎麦に取り掛かった。見事な、落語さながらの食いっ

 

ぷりで、もり2枚が瞬くうちに小さんの腹に納まった。その芸(?)には高座同様の

 

拍手が送られたくらいで、小さんはポンと勘定を済ませ表へ出た。我らがあわてて

 

後を追ったら、小さんがポツンと立っていた。

 

 

 

 

 

もり蕎麦 に対する画像結果

 

 

 

「他人に見られていると、味がわからねえな。

 

さ、口直しだ、も一軒行こう・・・」

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

2010-4-20

発行:(株)光文社

著者:立川談四楼

「声に出して笑える日本語」

より紹介しました。