東野圭吾「小説・こちら葛飾区亀有公園前派出所」再UP...その1 | Q太郎のブログ

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パクリもあるけど、多岐にわたって、いい情報もあるので、ぜひ読んでね♥
さかのぼっても読んでみてね♥♥

こち亀実写版 に対する画像結果

 



 

 両津が昼ご飯を食べて派出所に戻ると、中川が真剣な顔つきで本を読んでいた。花

 



両津が帰ってきたことにも気づかない様子だ。

 


 両津は中川の後ろから、その本をひょいと取り上げた。

 


「わっ、びっくりするじゃないですか?」

 


「仕事をサボって本なんか読んでる方が悪いんだ。

 

一体何を読んでるんだ?」花

 


両津は、パラパラと本をめくり、さらに最後のページを開いた。

 


「なんだ、蕎麦屋が人を殺したという話か。下らん」

 


 中川は、のけぞり、泣きそうな顔になった。

 


「先輩、ミステリのオチをしゃべるなんて反則ですよ。

 

まだ読んでる最中花

 


だったのに」

 


「ミステリ?そうだったのか」

 


「そうですよ。推理を楽しみ損ねたじゃないですか。

 

それにしても蕎麦屋が

 


犯人だったとはなあ。僕はてっきり、800屋だと思っていた。

 

読みが浅かった花

 


なあ」

 


「ふん、作り物の事件なんか読んで、

 

いったい何が面白いんだ」

 

 

 

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 両津は本の表紙を見た。帯がついていて、

 

「本年度江戸川乱歩賞受賞作!」

 


とある。花

 


「何だ、この江戸川乱歩賞ってのは。江戸川区の区民賞みたいなもんか?」

 


「先輩、江戸川乱歩を知らないんですか?日本の探偵小説の基礎を築いた人物

 


ですよ。明智小五郎とか怪人20面相とかが有名です。」

 


「おう、それなら知ってる。少年探偵団ものだな。

 

あれは子供のころに読んだ赤チューリップ

 


覚えがある」

 


「その江戸川RANPOの寄付を基金として、日本探偵クラブが作った賞が

 


江戸川RANPO賞です。もともとは探偵小説の発展に貢献した人に与えられるものだったら

 


しいですけど、第3回から新人賞になりました。長編小説を公募して、その中花

 


で最も優秀な作品に与えるというわけです。ちなみに日本探偵作家クラブは、

 


現在は日本推理作家協会に名称が変わっています」

 


「ふうん、よく知っているな。で、

 

この本がそれを受賞したということか。

 


それって、そんなにすごいことなのか?」ピンクチューリップ

 


「そりゃそうですよ。何しろ、プロの作家や評論家たちが選ぶんですから

 


ね。絶対に面白いというお隅付きをもらったようなもんです。この賞を取って、

 


プロ作家になった人は大勢います。

 

それだけじゃなく、その人たちに

 


とっては、最大の登竜門と言えるんです」オレンジチューリップ

 

 

 

 

 

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 中川の説明の途中から、両津は大あくびを始めていた。

 

 

「興味ないなあ。今は本が売れない時代だという

 

じゃないか?そんな時代に

 


作家になったって仕方がない。そいつらは、

 

ほかにやることがないのか?」

 


「ミステリー小説が好きなんだと思いますよ。

 

だからただ読んでるだけじゃ飽き青チューリップ

 


足らなくなって、自分でも書いてみようと

 

思うんじゃないんですか?それに、

 


本が売れないといっても例外はありますよ。

 

たとえばこの本なんか、江戸川

 


乱歩賞受賞という謳い文句のおかげで、

 

10万部も売れているそうです」

 


 両津の目が光った。紫チューリップ

 


「10万部?すると、どのくらい儲かるんだ?」

 


 「本の価格の10%が作者の取り分になると

 

聞いたことがあります。

 


この本は1500円だから、一冊につき 

 

150円です。それが10万部だから、

 


1500万円ということになりますね」花

 


 光っていた両津の目が、激しく血走った。

 

その目のまま、中川のネクタイを

 


つかんだ。

 


「1500万? 本当かっ。そんなにもらえるのか!おい?」

 


「くく、苦しい。本当のはずです。

 

しかも賞金が1000万円です」花

 


「なんだと、じゃ合わせて2500万円じゃないか。

 

よし!」両津は中川の

 


ネクタイをいきなり離した。はずみで中川は

 

後ろにひっくり返ったが、そちらには

 


目も向けず、両津はガッツポーズを作った。

 

「わしもそれをもらうぞ。江戸川

 


区民賞を取って、2500万円を稼いでやる」花

 


 中川が小声で、江戸川RANPO賞ですよ、

 

と訂正するが、両津は無視だ。猛然と

 


飛び出していった。

 

 

 

 

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「こちらに来ていただいても困ります」

 

眼鏡をかけた女性はいった。

 

 


 あるマンションの一室だ。

 

ドアには(日本推理作家協会事務局)と書かれた花

 


プレートが貼ってある。

 


「なんでだ?ここへ来れば、

 

江戸川区民賞がもらえるんじゃないのか?」両津は

 


怒鳴った。

 


「それ、たぶん江戸川乱歩賞のことだと思いますけど、

 

こちらで差し上げる花

 


わけではありません。まず原稿を指定の送り先に

 

郵送してください。作品は今、

 


どこにありますか?」

 


「作品?ここだ」 両津は自分の頭を指差した。

 


「えっ?」花

 


「この頭の中にある。あとは書くだけだ。

 

だからもうできたも同様だから、

 


賞をくれと言ってるんだ!」

 


 眼鏡の女性は困惑した顔で、首をひねった。

 


「ですけど、それがどういうお話なのか、

 

まず書いていただかないとわかり菜の花

 


ませんから。それに賞を獲れるかどうかは、

 

選考委員の方が判断するわけです

 


し」

 


「何を言ってるんだ。わしが一番面白いに

 

決まっている。賞をくれたら、

 


ゆっくり書いてやるから、先にくれよ」桜咲く

 


「いいえ そういうわけには・・・。あの、

 

ここに応募要領がありますから、それ

 


をよく読んで、その通りに応募してください。

 

お願いします」 眼鏡の女性は、

 


ぱたんとドアを閉めた。かちゃりと

 

鍵をかける音も聞こえた。

 


「くっそー、頭の固い連中だ。そんなことだから

 

本離れの時代だなどと言われ花

 


るのだ」

 

 

 

 

 

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こち亀 に対する画像結果

 

 


 両津が歩きながら ぶつぶつぼやいていると

 

携帯電話が鳴りだした。中川から

 


だった。

 


「先輩、江戸川RANPO賞を狙うのなら、

 

紹介したい人がいるんです。これから花

 


派出所に連れて行きますから、会ってみませんか?」

 


「ほう、どんな奴だ?」

 


「そういう方面に詳しい人です。会えばわかります。」

 

そういって中川は電話を


切った。花





 


 派出所で待っていたのは、痩せて青白い顔をした

 

男だった。しかし金縁眼鏡

 


の奥で光る目は鋭い。

 


 黄泉よみ太(よみよみた)、と男は名乗った。

 

新人作家発掘のプロだという。

 


「黄泉さんは、長年、あらゆる新人賞の下読みを

 

してこられた人で、各賞のはな

 


傾向と対策に精通しておられるんです」 

 

中川がそう紹介した。

 


「下読みというのは?」 両津が聞く。

 


「予備選考係と考えていただいて結構です」 

 

黄泉はゆっくりと口を開いた。

 


「江戸川乱歩賞の場合、応募数は約300です。

 

それらを何人かの下読みが手分け花

 


して読み、1割程度を残します。

 

つまりその段階で、9割の作品が落とされ


るわけなんです」。

 


「えっ、すると、9割の作品は、

 

たった一人の下読みの方に読まれるだけなん

 


ですか?」 中川が聞いた。花

 

 

 そういうことです、と黄泉は無表情で答えた。

 


「えーっ、それって、すごく運不運が関係しませんか?

 

たまたまその下読みの

 


方の好みに合わなかっただけで、ほかの人なら

 

落とさないってこともありうる

 


んじゃないですか?」フラワーシャワー

 


「それはあります」 黄泉はうなずいた。

 

「乱歩賞の場合、予備選考が三次まであり

 


ます。今私がいったのは、一次選考のことです。

 

中川さんがおっしゃったように、

 

 

運が良ければ二次選考ぐらいまで残ったのに、

 

下読みとの相性が悪かった

 


せいで一次で落ちた、ということは頻繁にあると考えられます」チューリップ君

 


「ううむ、そんなことが頻繁にあっていいのか?」 

 

両津が聞いた。

 

 

「要は考え方です。江戸川乱歩賞の目的は、

 

ナンバー1の作品を選ぶことに

 


あります。本来ならば二次選考まで残りそうな

 

作品が一次で落ちようが、また

 


その逆のことが起きようが、最終候補に残るほどの作品が、

 

下読みの好み程度のことで一次でチューリップ

 


落ちることなど、まずありえないからです。

 

逆に言えば、好みだけで辛うじて

 


1次を通過した作品などは、2次選考、3次選考の段階で、

 

必ず落ちます。

 


これは断言できます」

 


 長年下読みをしてきたというだけあって、

 

黄泉の言葉には自信が込められてチューリップ

 


いる。それだけに説得力もあった。

 

 

 

 

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「要するに、本当に面白いものを書けば、

 

運とかは関係なく受賞できるという

 


ことですか?」

 


 中川の言葉に黄泉は大きくうなずいた。ume.

 


「まさにその通りです。傾向と対策と言いますが、

 

実際にはそんなことは

 


考えない方がいい。傾向と対策を考えている

 

応募者が時々いますが、そんな

 


ことを意識して書かれた作品より、何も考えないで

 

書かれた作品のほうが、圧倒

 


的にたくさん受賞しているのです」花

 


「なんだ、じゃ あんたに来てもらった

 

甲斐がないじゃないか?」 両津は素直に

 


不満を口にした。

 


「いえ、アドバイスできることはあると思います」

 

 黄泉は冷静な目をして

 


いった。「でもそれはあなたが作品を書いてからです。

 

あとまだ、1年以上ありますカーネーション

 


から、書き上がったら読ませてください」

 


「1年以上?どうして?」

 


「だって、今回の締め切りは明日です。

 

あなたが狙うとすれば、早くても来年です」

 


「明日?そうか、締め切りがあるのを忘れていた!」

 

両津は立ち上がった。はなはな

 


「来年まで待っていられるか。

 

こんなことをしてる場合じゃない」

 


「どこへ行くんですか?」中川が聞いた。

 


「決まってるだろ。小説の取材だ。

 

急いで書かなきゃならんからな」そういう

 


と両津は、またしてもどこかへ立ち去った。hanapana

 


「応募原稿の規定は、原稿用紙で350枚から550枚なんだけどな」

 


黄泉がつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

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東京刑務所 に対する画像結果

 

 

 


 東京拘置所・・・

 

 


 プロの○し屋、番場幸太郎の独居房を

 

ノックするものがいた。番場が外を見るにじ

 


と、両津がにやにやと笑っていた。

 


「あっ、両津。お前、どうしてここに・・・?」

 


「看守に知り合いがいるので通してもらった。

 

ところでお前、一人しか

 


○してないと言い張っているそうだな。本当はもっと○しているくせに」くろーぱー

 


「わっ、馬鹿、何をいい出すんだ!」

 


「わしは何でも知ってるんだぞ。二人以上○したことがバレれば○刑になる

 


ので、証拠が見つかった件だけ自白したんだろう。ところがわしは、おまえの

 


秘密の隠れ家を知ってるんだ。そこを捜索されれば、ほかの○しも全部バレるくろーばー

 


な」

 


「げっ、どうしてそこまで・・・」

 


「バラされたくなかったら、わしに協力しろ。これまでにやった○しを、全部AKB

 


白状するんだ」

 


「馬鹿か? お前。そんなことをしたら○刑確定だ」AKB48 渡辺麻友

 


「話を最後まで聞け。わしにだけ話せばいいんだ。そうすれば悪いようには

 


しない」

 


「俺の話を聞いて、どうする気だ?」AKB48 小嶋陽菜

 


「お前がそれを知る必要はない。どうする? それともバラしてやろうか?」


 

「わかった、わかった。だけど、かなり長い話になるぞ」ともちん

 


「構わん。メモの用意はしてきた」両津は大学ノートとボールペンを取り出し

 


た。

 

 

 

 

 

 

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 1時間後、結婚詐欺で拘留中の駒士洋一が入っている独居房がノックされた。

 

 


外には両津が立っていた。不気味な笑顔を浮かべている。ニコニコ

 


「久しぶりだな」両津がいった。

 


「何の用だ? 俺はお前のせいで捕まったようなものなんだぞ」

 


「お前がわしの姪を騙そうとしたのがいかんのだ」ニコニコ

 


「あれは失敗だった。デートの相手に、親戚のおやじの尾行がついているとは

 


夢にも思わなかったった。しかもそいつが警官とは・・・」駒士は頭を抱えた後、

 


我に返って、もう一度両津を見た。「何の用だと聞いてるんだ?」

 


「お前、騙したのはうちの姪だけじゃないだろう。ほかにもやっていること

 


はわかっているんだ」ニコニコ

 


「何を言う。そんな証拠がどこにある?」

 


「とぼけても無駄だ。わしはお前の顔写真を持って、東京中を歩き回ったんだ。

 


お前に騙されたという若い女性を8人も見つけたぞ。お前の次の裁判

 


までに、その情報を警察に流してやる」ニコニコ

 


 駒士は自分の顔が引きつるのを感じた。冷や汗が出てきた。

 


「頼むっ、それだけは勘弁してくれ。刑務所から出たら、全員に詫びるつもり

 


だったんだ。駒士は土下座をした。

 


「だったら、わしの言うことを聞くか?」ニコニコ

 


「聞く。何でも聞く」

 


「よし。じゃあ、おまえがどうやって女性たちを騙したのか、全部ここで白状

 


しろ」ニコニコ

 


「えっ?」駒士は目をぱちくりさせた。

 

 

 

 

 

備考:この作品は、

2011-5-25

発行:集英社文庫 

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所 の中の
東野圭吾 著 

[目指せ乱歩賞]

より紹介しました。