【全員ズタボロだ!】
ところが、空想科学世界の皆さんは、
そんなことを気にしている様子が
まったくない。全員 はみ出しまくりである。
キングギドラから、見てみよう。
この宇宙大怪獣は、、マッハ3で飛ぶという設定に
なっているが、流線型から、ほど遠いあの
スタイルで、音速を超えるのは、自○行為で
ある。マッハ 3 の先端
角度は、30度であるから、間違いなく翼を
直撃する。
しかも、こいつは、頭が3つもある。
どの頭も、他の2つの頭から発生した衝撃波を
受けてしまう構造になっているのだ。
これなら、対戦相手のゴジラは、何もする
必要がない。飛んでくる途中で、勝手に
首がぶっ飛んで「完」である。繰り返し
襲来することで有名な怪獣だが、何度
来たって結果は同じだ。
AHO~!
キングギドラに比べると、ウルトラマンの
飛行姿勢は、かなり流線型に近い。
しかし、飛行速度はマッハ 5 だから、
衝撃波の先端角は23度。画面でおなじみの、
両手を揃えて、首を立てるという姿勢だと、
目から上あたりが、砕けて散ってしまう・・・。
それでも、彼はまだマシだ。絶望的に
アブナイのは、マッハ 7 で飛ぶ「ウルトラセブン」
である。先端角は 16 度!
これは、もう「キリ」だ。しかも、理不尽
きわまりないことに、セブンは両手を広げ
て飛ぶのである。
どう考えても、両腕
から、それぞれ先端角16度の衝撃波が発生し、
どちらも彼の顔面を直撃する。顔は
ザクロのように弾け散り、もちろん体も2つ
に避けてしまう・・・。
無残な話である。だが、事件はこれ
だけでは終わらない。裂けたウルトラセブンは
当然、地上に落下する!
上空 1万m で裂けたとすると、堕ちて
くるのは、14.3秒後。この間に、水平方向に
34km飛ぶ。西に向かって飛行中、
新宿上空で墜落し始めた場合、落下地点は
「八王子」。対地角3.4度で突入する。
この角度なら、潜り込んで、クレーターを
形成するようなことはあるまい。
おそらく平らな石を水面スレスレに投げた
ときのように、何度もバウンドするだろう。
1度目に身長と同じ40mの高さまで跳ね上げるなら、
17kmにわたってバウンド
した後、丹沢山地あたりから滑走に入る。
その後は、地面との摩擦でスピードが
落ちるが、なにしろ滑り出しの速度が、
マッハ7だから、なかなか止まらない。
琵琶湖をかすめ、中国地方に侵入し、
636kmを走破して、広島当たりで停止する・・・。
所要時間は、9分30秒。放出されるエネルギーは
5兆J。しかもこれは裂けた
半身の分なのだ。2つ合わせてダイナマイト2万4千t分!
ウルトラ戦士の超音速
飛行は、人類にとって天災以外の何物でもない。
「ウルトラマンA」
兄が、これほど人類に迷惑をかけるというのに、
まったく反省する様子が
見られないのが、ウルトラマンAに、
ウルトラマンタロウである。
この両名の飛行速度は、マッハ20というのだから、
もうどうしようもない。
「ウルトラマンタロウ」
先端角は、驚くべし、5.7度!
これはもう針ではないか! どうすれば
そんな円錐に体を収められるというのか!?
特にタロウ! 頭にあんなデカい角を
つけてマッハ20
で飛ぼうなんざ、あまりにも身の程知らずというものだ。
せめて5分刈りにせい! 5分刈りに・・・!
備考:この内容は、
2018-11-30
発行:(株)KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 1」
より紹介しました。