ときに渦を巻き、ときに身をくねらせる黄土色の大蛇が、日本列島に挑みかかる。
気象衛星「ひまわり」がとらえた「黄砂監視」映像は、驚きの迫力である。
中国上空から朝鮮半島をかすめて
黄砂が日本を襲う・・・。
この春(2021年)、北東アジア一円で、黄砂の被害が相次ぐ。
北京在住の同僚に聞くと、過去10年で最も深刻
という。高層ビルは黄色く かすみ、視界不良によるノロノロ運転で、渋滞が起きる。人々は
スマホでまめに「浮土」(フィートゥー)”砂ぼこり”予報を確かめる。
韓国では、ほぼ全土に黄砂警報が出された。「中国で発生」、「大気の質が大きく低下」。
そんな韓国メディアの報じ方に、中国政府がかみつく。
「中国は発生源ではなく途中駅にすぎない!」と
報道官。
「中国世論は、モンゴルを”前の駅”だと非難はしない。
微妙な言い回しで、モンゴル由来説に
触れた・・・。
モンゴル在住の本紙取材スタッフに尋ねると、今年の砂嵐は、近年にない、すさまじさだと言う。
10人を超す○者が出て、家畜が吹き飛ばされ、停電も相次ぐ。
ただ、今春の砂は、中央アジアの
国々から飛来したとの見方が有力という・・・。
こと、「黄砂」に関しては、それぞれの国が、
それぞれに被害者意識を持つらしい。
東京で10年ぶりに
黄砂が観測されたきのう、
スカイツリーに登った。
地上450mから、西の方角に目を
凝らす。空は、鉛色に曇り、近くのビルが、かすんで見えた。
<黄砂ふる地球の微熱続きをり> 山口隆右(たかすけ)。
黄砂とは、同じ北半球に暮らし、同じ偏西風を
浴びる者の、避けがたい宿命と言うべきか・・・。
備考:この内容は、
2021-3-31付け 朝日新聞より
2021-9-30
発行:朝日新聞出版
著者:朝日新聞論説委員室
「天声人語」
より紹介しました。