「文は人なり」とよく言われるように、
書いたものには、その人の考え方、感じ方などが現れます。
ならば、少しでも読む人の心をとらえ、
胸に染み入る味わい深い文章をかけるようになりたいもの。
長年「エッセイ教室」で、指導されてきた下重暁子さんに、
エッセイの書き方の基本を解説いただきました。
「下重暁子」(しもじゅうあきこ)
作家・エッセイスト
1959年、早稲田大学教育学部卒業。
MHKアナウンサー
となり、退社後、文集活動に入る。著書に「鋼の女」
「不良老年のすすめ」(ともに集英社)など。
日本ペンクラブ副会長。
【エッセイを書くということ】
読み手がいるということを忘れずに・・・
MHK文化センターで、エッセイ教室を
初めて10数年になる。その間、どのくらい多くの
人と、エッセイに接してきただろう・・・?
2年ごと
にまとめる文集『あかつき』も 6冊になる。
エッセイとはなんですか? 書き方があるので
すか? と聞かれる度に、自分が、一番現わし
やすい方法で自由に書いてみてほしいという。
400字詰め原稿用紙3枚半や、5枚と文字数
は決めるが、あとは、「詩」に近い形や、小論文に
近いものまで様々。手元の辞書「岩波国語辞典」
にもこうある。
エッセイ=①自由な形式で、気軽に自分の
意見などを述べた散文。随筆。随想。
②特殊の主題に関する試論。小論。
大きなテーマは教室では、私が出すが、「電話」
「あじさい」など、具体的なものから「憂うつ」
「期待」など、抽象的なものまで、どうとらえ、
解釈してイメージするか、個々人にまかせ、
エッセイの題は、自分でつけてもらう。
身近で見つけたこと、感動したこと、何で
もいい。文字に表現するのは、1人ひとり
違っていい。教室で私は教えない。個性を
引き出す手伝いをするだけ。先生と呼ばれる
人の好みや、個性に合わせることは避けたい
からだ。
書きたいこと、書く方法は、自分で見つける
ことが大事。「書くとは」、自分を掘る作業。
耳をすませて、自分の気づかなかった自分を知る
ことなのだから・・・。
忘れてならないのは、読む人が居るということ。
自由といっても、日記やブログと違う。
読み手が感じ、わかるよう、自分を客観視して
書くことだ。
備考:この内容は、
平成20-9-1
発行:PHP
より紹介しました。