「海のモズクと消えました」
タクシーのラジオが、たしかにそう言いました。
「運転手さん、それ、どこの局? 誰? アナウンサー? それともタレント?」
矢継ぎ早に、質問したのが悪かったが、
運転手さんは、あわてて、チューナーをいじってしまい、
どこの局の、誰が、そう言ったのか、わからなくなってしまったが、
たしかに、
どこかの誰かが、
「海のモズク」と言ったのだ。
いや、「海のモズク」であれば、間違いではない。
むしろ、それは、正しい。
「海のモズクと消えた」と言ったから、私の耳が反応したのだ。
この話を友人5人にしたところ、
3人が、「えっ?モズクは間違いなの?
私は、ずっと、そう思っていたのに」と答えた。
実に 5打数3安打の6割が、モズクなのだ。
これは、一体、どういう事なのか?
私の友人の知識レベルが低いと、いうことなのだろうか?
すると、必然的に、私も低いということになり、ええい!告白しよう。
実は、私も、高校2年まで、
「海のモズクと消えた」で、いいと思っていたのだ。とほほ・・・。
タレントの中山秀征くんは、私と同じ群馬の出身で、もうそれだけで、肩入れして
テレビを見るのだが、日本テレビの『DAISUKI!』という番組で、共演の松本明子さんと、
飯島直子さんを従え、深川の富岡八幡宮へ出かけた。
この境内には、歴代横綱の碑があり、
それを見ようという趣向。
突然、ヒデくんが言った。
「ねえ、せっかく来たんだから、
みんなで、キョウヨウしようよ」
松本、飯島の両お嬢は、もちろん、テレビの前の、私もキョトン!
「ははぁ、さては、
勉強しようの意味で、教養を動詞化したな」と思ったら、さにあらず。
3人の脇の石に
「供養塔」と彫ってあった。
映画関係者から聞いた話。
某お嬢様女優は「曲者」を、「マガリモノ」と読んだという。
「マガリモノじゃ、
ものども、出あえ、出あえ」と。
もちろん、リハーサルの段階でだが、その人 いわく
「いや映画を見るたんびに、思い出しちゃってさぁ、おかしくて、おかしくて」
そうでしょう。
そりゃ、そうでしょうとも・・・。
新聞の一面に、「米朝」という大きな活字が、踊るとドキッとする。
上方の人間国宝
桂米朝師匠の身に、なにかあったのでは、ないかと飛び上がるのだ。
当然、そんなことはなくて、
米朝のあとに、会談と続き、アメリカと、北朝鮮のことだったと知るのだが、
私は、懲りることなく、毎回驚くのだ。
思えば、私は、いやな子どもだった。
パチンコ屋の「パ」の字のネオンが壊れ、夜になると
それを指差し、連呼するのを、喜びとする子どもだったのだ・・・。
備考:この内容は、
2010-4-20
発行:光文社
著者:立川談四楼
「声に出して笑える日本語」
より紹介しました。