このごろLINEやツイッター、インスタグラムを見ない日はない。
すっかり仕事にも暮らしにも欠かせない道具になったが、
情報に追い立てられる気分は抜けない。
SNS疲れを自覚する。
それなのに、性懲りもなく、新たなアプリを試してみた。
音声版ツイッターと呼ばれるSNSで、
「クラブハウス」という。
米国で、昨年春生まれ、料理や通勤をしながらでも、使えると話題に。
日本でも、利用者が増えている。
だれでも、好きなテーマのおしゃべりの場を気軽に作れる。
届けるのは声だけ。文字も写真も
動画もなし。
やり取りは、その場かぎりで、他人の発言にコメントを付す機能もない。
ものは試しで、「天声人語」を話題にした場を作ってみた。
30分ほど参加したが、生の会話ゆえ
しばし脱線。ゆるやかな雑談が妙に楽しい。
会ったこともない方々が、次々、立ち寄ってくれた。
振り返れば、本誌にツイッターという言葉が、
お目見えしたのは、2007年春のこと。
当初は、のどかな日記風の投稿が多かった。
それが、社会を動かす原動力になり、陰湿な、いじめの刃とも
なりうるとは、想像できなかった。
他方、早々と消えたSNSも数知れない。クラブハウスが
この先どう転ぶかは、まだ見通せない。
スマホを使わない方々には、「SNSに疲れたなら、スマホを断てばよい」と、
笑われるかもしれない。
それでも、人と、人とが自由には会えない、今なら、
気軽に語り合える空間を欲する人が
多いのではないか?
雑談という営みの大切さを、改めて噛みしめる・・・。
備考:この内容は、
2021-9-30
発行:朝日新聞出版
著者:朝日新聞論説委員室
「天声人語 2021年1月-6月」
より紹介しました。