山口百恵「蒼い時」...その2「出生」 | Q太郎のブログ

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 私自身がいったい、いつ、どこで、どんなふうに

 

産まれたのかも、私は知らない。

 

 

 

 世間一般の親子のように、母親が子供に向かって、

 

 

「お前が生まれたときはね・・・」と言った

 

 

話をされた記憶がない。

 

 

それを、私が尋ねた記憶も・・・ない。

 

 

 

 産院で産まれたのか、アパートなのか、

 

助産婦さんの手によってなのか、

 

医者によってなのか。

 

 

 

難産だったのか、安産だったのか、誰かが喜んでくれたのか、

 

それとも厄介な存在として生まれたのか、

 

 

 

そして、何よりも父と母は、

 

いつ、どんな形でめぐり逢って、

 

恋愛をして、一緒になったのか?

 

 

 

私を産むにあたって、籍が入っていないという、

 

ためらいはなかったのか、周囲の反応はどうだったのか、

 

母は父のどの言葉を信じ、何を頼りにしていたのか。

 

 

 

母は父を愛していたのだろうか? 

 

私は何も知らなかった。

 

手がかりを、つかみたかった。

 

 

 

自分の言葉で、父という立場にあった人を語ることによって、

 

 

母や自分や、そのほかの人間関係においての、

 

 

自分の中での空白部分を、

 

 

埋めていきたいと思ったのだ・・・。

 

 

 

 

 

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思い切って、母に尋ねてみた。

 

 

「お父さんのこと、書くけど・・・」

 

 

「お父さんの何を?」

 

 

「私からみた、いろいろな・・・」

 

 

「あなたにとってと、お母さんにとっては、違うのよ」

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

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無風状態の空間に漂う、白い煙の源を、

 

 

指先で押さえつけながら、母が言った。

 

 

「あなた達には、そう悪い父親には、映っていないでしょう?」

 

 

 

母は、私を見なかった。

 

 

 

 肯定、否定、どちらに対してか、わからないが、

 

 

伏し目がちな母の横顔には、わずかだが、怯えに似た

 

 

ものが感じられた・・・。

 

 

 

 

 

 私は、言葉を失った。絶句するしか、術がなかった。

 

 

もうすでに、過去になっているはずだと思って

 

 

いた父が、憎悪の対象だとばかり思っていた父が、

 

 

未だに、いくらかの光を放って、母の中に生きて

 

 

いる。娘のかかわり知らないところで、

 

 

母の中の女が息づいている。憎悪とか、後悔とかいった

 

 

単純な言葉では、言い尽くすことの出来ない母の歴史。

 

 

それを目のあたりにし、私は動揺した・・・。

 

 

 

 

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 母は、父にとって、唯一無二の女ではなかった。

 

 

いや、正確に言えば、一瞬間、唯一の女だった

 

 

のかもしれないが、心おきなく、

 

 

唯一の女に浸る権利を有してはいなかった・・・。

 

 

 

 父と母は、いわゆる法律的には、

 

 

認められた夫婦関係ではなかった。

 

 

父にはすでに家庭があり、

 

 

子供もいた。母を愛し始めた時、父は、母の父に、

 

 

「責任を持って、きちんとします」と言明したと

 

 

言う・・・。

 

 

 

 

 

 だが、戸籍に書かれた娘の名前の上には、

 

 

「認知」という2文字が、置かれている。母は、

 

 

そんな いきさつを、娘たちには、

 

 

ことさら、報せようとはしなかった・・・。

 

 

 

 

 

 私がそのことを知ったのは、

 

 

高校に入学してすぐだった。

 

 

すでにその頃、芸能界で仕事をして

 

 

いた私の、ゴシップの1つとして、週刊誌が、

 

 

戸籍謄本を「出生の秘密」と題して掲載したので、

 

 

ある。

 

 

 

 

 

 事実を知らされても、私は、驚かなかった。

 

 

そうだったからと言って、母に対する気持ちも、

 

 

自分が、現在生きていることに対しても、

 

 

何も変わりはなかった。

 

 

 

 

それに、何よりも、私には、

 

 

それまで娘たちに、1度として引け目を

 

 

感じさせてこなかった強い存在・・・母親がついていた。

 

 

記事を読みながら、私は改めて、母に感謝した。

 

 

 

 

 

 

 しかし、母にとって、このことは、私の想像を遥かに

 

 

上回る程の辛い経験だったに違いない。

 

 

そのことが、白日のもとにさらされた時、母には、

 

 

私達2人の娘の他に、もう1人、密かに心に

 

 

かかる存在があったのである。

 

 

 

 

・・・こわいおばさん・・・。

 

 

 

 

 誰に教わったわけでもないのに、

 

 

私は、その女(ひと)を、そう呼んでいた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

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備考:この内容は、

昭和56年4月25日   第1刷

昭和58年12月28日   第26刷

著者:山口百恵

プロデュース:残間里江子

発行者:堀内末男

発行所:(株)集英社 

「蒼い時」より紹介しました・・・。