地球の植物を研究するため、
アメリカ郊外の、森の中に降り立った
宇宙人たち。人間に気づかれ、
宇宙船で飛び立つが、仲間の1人が
逃げ遅れ、取り残されてしまった・・・。
とある、住宅へと、姿を隠した彼は、
そこに暮らす少年エリオット
(ヘンリー・トーマス)と対面。徐々に
交流を深めていった。「E.T.」と名づけ
られた彼と、エリオットは、
やがて、テレパシーで、意思の疎通を
図るようになる。互いの行動や、体調
も、シンクロし合い、もはや、一心同体
な存在だ。
エリオットは、E.T.
が、故郷に帰れるようにと、一緒に
宇宙の仲間たちと、通信できる装置
を完成させる。が、時を同じくして、
E.T.を研究対象にしようと
するNASAの科学者たちが
迫っていた・・・。
SF映画に登場する宇宙人=
侵入者との、イメージを『未知との遭遇』
で、覆したスピルバーグは、
本件では、さらに踏み込み、接近遭遇
のみならず、具体的な友好関係を
結ぶまでに至らせた。あまりにも、
意図的なイメージ戦略だとして、
「アメリカ政府が、将来的に宇宙人の
存在を発表するに当たり、大衆が
ショックを受けないよう、スピルバーグ
に宇宙人に慣れさせる映画の
製作を依頼した」との噂が、ささやかれた
ほど・・・。『宇宙人ポール』(10年)では、
スピルバーグ本人を、特別出演
させ、その都市伝説をギャグと
して扱っている。
映画は、『スター・ウォーズ』
(77年)を、しのぐほどの大ヒット。
以降、15年間、『タイタニック』(97年)
の登場まで、”もっとも稼いだ映画”
として君臨し続けた。日本で
も大ブームを巻き起こし、老若
男女問わず、観客が映画館へと殺到。
指と指とを合わせるポーズを、
誰もが真似し、ぬいぐるみなどの
グッズも、売れに売れた・・・。
公開直後から、幾度も続編製作が、
噂に上がったが、スピルバーグは、
これを否定。しかし、公認の小説
として「E.T.」の母星の様子を
描いた『グリーン・プラネット』が
出版されたり、ユニバーサル・
スタジオに、アトラクションが設置され
たりと、異なるメディアでの続編
は実現した。これらは、ともに母星
で、植物研究に、いそしむ姿を描いた
ものだ・・・。
一方で、2002年には、シーンの
一部を、CGで置き換えるなど
した『20周年アニバーサリー特別版』
バージョンで再公開。が、
観客の評判は芳しくなく、とりわけ
「自身が父親になり、過ちに気づい
た(スピルバーグ談)」として、
子どもたちを追い詰める警官たちが、
手にしている銃を、トランシーバーへ
と、差し替えたシーンには、強い非難
が浴びせられた。観客は、物語を
通じて、成長するエリオット少年の
姿にこそ、感動したのであり、その
ためには、乗り越えるべき壁として、
立ちはだかる大人の存在は、必須
である。
銃を持った警官は、まさに
その象徴だったわけで、だからこそ、
大人たちに怯えることなく、立ち向かい、
その瞬間に自転車が空を舞う
シーンに、観客は涙したのだ。それ
をなかったことにされては、非難
も当然だろう・・・。
ちなみに、スピルバーグ
の制作会社アンブリンのロゴ
は、まさにその、空飛ぶ自転車を
象ったもの。大ヒット作を連発すれど、
未だ、スピルバーグの代表作はと
言えば、『E.T.』なのだ・・・。
備考:この内容は、
2012-8-21
発行:(株)洋泉社
「洋泉社MOOK 映画秘宝EX
映画の必修科目03
~異次元SF映画100~」
より紹介しました・・・。