西村京太郎 「上野駅○人事件」...その1 | Q太郎のブログ

Q太郎のブログ

パクリもあるけど、多岐にわたって、いい情報もあるので、ぜひ読んでね♥
さかのぼっても読んでみてね♥♥

上野駅 に対する画像結果

 

【第1章 眠らない駅】  #1

 

 

 

 内勤助役の沼田は、構内に蛍の光のテープが流れ 誕生日ケーキ 音譜

 

るのを聞きながら、1、2番ホームに向かって

 

急いだ。

 

 

 

 すでに、午前1時である。

 

 

 

 北の玄関、上野駅を出発する列車は、0時22分 電車

 

発の長野行き急行、『信州9号』を最後に、すべて

 

出てしまった。

 

 

 

 あとは、ここ上野止まりの、京浜東北線の最終車が バス

 

あるだけである。

 

 

 

 磯子発で、1時04分上野着の電車を迎え、乗客

 

をさばいてしまえば、上野駅の1日の業務は、一応

 

終わる。1日といっても、もう、日付が変わってしま 星空 時計

 

っているのだが・・・。

 

 

 

 沼田を入れて、助役6人、駅員6人、公安官4人

 

が、ホームに出て、最終電車を迎える。

 

 

 

 定刻の AM01:04 に、ライトブルーの京浜東北線 地下鉄 電車

 

が到着した。

 

 

 

 ドアが開き、乗客が、どかどかと降りて来る。

 

 しかし、車内で眠りこけている人もいるし、泥酔

 

して、シートに倒れている人もいる。沼田たちは、

 

分散して、各車両に入り、眠っている乗客を起こし、 UMAくん

 

泥酔者を助け起こす。

 

 

 

 これが、一苦労だった。今日は、そうでもないが、バイキンくん

 

年末や年始には、酔っ払った乗客に絡まれて、

 

往生する・・・。

 

 

 

 どうにか、そんな乗客たちが、駅を出ていくと、

 

最後は、上野駅の構内を、根城にしている浮浪者たち 宇宙人くん

 

の追い出しである。

 

 

 

 上野駅周辺を縄張りにしている、浮浪者が何人いるか、スライム

 

正確なところは、わからない。

 

 

 

 

 

 温かい時期は、20~30人だが、冬になると、

 

それが100人くらいに、増えることだけは、確かである。コアラ 

 

 

 

 常連で、沼田が顔を覚えてしまった浮浪者も、

 

何人かいる。

 

 

 

 公安官と協力して、立ち退かせても、すぐ、戻って パトカー

 

来てしまう。よほど、彼らにとって、上野という

 

駅が、住み心地がいいらしい。上野駅には、東北から

 

やってくる乗客が多く、そういう人たちは、純朴

 

だから、浮浪者にねだられると、100円、200円と与え コインたち

 

てしまう。それが、あるからかもしれない。

 

 

 

 沼田も、東北の生まれだから、今日みたいに寒い日 雪だるま ピリピリ

 

に、宿無しの彼らを追い出すのは、可哀そうだと

 

いう気がしないでもなかった・・・。

 

 

 

 しかし、1日1回は、駅を閉めて、明日の準備を

 

しなければならないのである。

 

 

 

浮浪者を1人ずつ、駅の外へ追い出しては、

 

いくつかある乗降口のシャッターを閉めていく。 ダウン

 

 

 

 これがいつも、20~30分かかってしまうのだ。

 

 

 

上野駅当直室 に対する画像結果

 

 最後に、浅草口出口のところへ来て、駅員の1人が、

 

そこに寝ている浮浪者を引っ張ろうとして、

 

「様子が変です!」 ガーン あせる

 

と、沼田を呼んだ。

 

 

50歳ぐらいの浮浪者で、勝っちゃんと呼ばれて

 

いる男だった。

 

 

 

 なぜ、勝っちゃんなのか、沼田にもわからない。真顔

 

おとなしい男で、ときどき待合室の客に、小銭を

 

ねだり、それで、自動販売機の酒を買って飲んでいた。

 

相手が小銭をくれなくても、べつに、怒ったりは

 

しない男だった。

 

 

 

「どう変なんだ?」 チーン はてなマーク

 

と、沼田が聞いた。

 

 

 

「○んでるみたいなんです」 ガーン ビックリマーク

 

若い駅員が言う。

 

 

 

沼田は、かがみ込んで、勝っちゃんの顔を覗き チーン

 

込んだ。

 

 

ぷ~んと、浮浪者特有の異臭が匂ってくる。

 

 

眼は、開いているが、瞳孔が動かなくなっていた。 ガックリ

 

手首に、触れてみたが、脈も消えている。

 

 

同じ内勤助役の鈴木が、寄って来て、

 

「○んだのか?」

 

 

「そうらしい。とにかく病院へ運んで、診て ランニング

 

もらおう」

 

 

と、沼田は言った。

 

 

 

 上野駅には、旅行者援護所があり、職員1名と、看護師 病院

 

がいるが、ここは、午後8時で閉まってしまう。

 

 

 

 上野駅で、病人などが出た場合は、最寄りの病院に

 

運ばれる。

 

 

 沼田は、救急車に来てもらって、勝っちゃんを、K病院 救急車 ダッシュ

 

へ運んでもらった。

 

 

 

 救急車が走り去るのを、見送ってから、浅草口出口 ダウン

 

のシャッターを降ろした。

 

 

 

 いつもより、5分ほど遅くなって、AM1:56 時計

 

である。

 

 

 

救急病院浅草雷門 に対する画像結果

 

 これから、AM4:00に、シャッターを開けるまで、

 

表面上は、上野駅は眠りにつく。

 

わずか、2時間の眠りである。 ふとん1ふとん2ふとん3 zzz

 

 

 しかし、本当に、眠ったわけではない。

 

 沼田は、内勤助役室で、もう1人の助役と、当直

 

である。

 

 

                                   バス

 

 また、現在、上野駅は、東北新幹線のための地下  新幹線後ろ新幹線真ん中新幹線前

 

駅を建設中なので、それに必要な資材の運び込みも、

 

4時までは、行われることがある。そのときには、

 

駅員が、また、シャッターを開けなければならない。

 

 

 

 沼田は、営業係がまとめた、昨日1日の営業成績表 タバコ

 

に眼を通す。

 

 

 

 上野駅の1日の乗降客は31万人。乗り換え客が アップ

 

1日45万人。合計76万人が、上野駅を利用

 

している。

 

 

 

 このところ、1日の収入は、9,400~9,500万円で

 

ある。新幹線が発着するようになれば、飛躍的に 

 

伸びるだろうと、沼田は期待していた。

 

 

 

 2時を過ぎたとき、電話が入った。電話

 

 

 

 浮浪者の勝っちゃんを運んだ浅草雷門のK病院 神社 病院

 

からだった。

 

 

仁科という当直の医者は、緊張した声で、

 

「さっき、運ばれてきた患者ですがね、どうやら、滝汗

 

青酸中毒○のようですよ」

 

と言った・・・。

 

 

 

 

 

備考:この内容は、昭和60-6-20 

発行:光文社

著者:西村京太郎

「上野駅○人事件」

より引用しました・・・。