いつ頃からかな・・・?
海を遠くから眺めるようになったのは。
水着に着替えて
焼けた砂を歩くのではなく
碧い海に飛び込んで泳ぐのでもなく
海辺のバーで1人でカウンターに座り、
バーテンと小さな賭けをする。
それだけで・・・、
美しい海の時間が手に入るなんて
いうこともあるのかもしれない・・・。
そう・・・、
アメリカ西海岸の
パシフィック・コースト・ハイウエイを走る。
エアコンの利いた車の中から
ハイウェイ沿いの海辺の光景を楽しむ。
夏の日の午後・・・。
ラグーナビーチからニュートンまで、そして、ロングビーチ・・・
若者たちで賑わう夏の海岸は、
サイレント映画のように
音もなく、静かに通り過ぎて行きました。
まるで、
あの、遠い夏の日の・・・。
いくつもの海岸を走り抜けた車は、
やがて、
サンタモニカに辿り着きます。
昔、懐かしい木製の桟橋の両脇に
レストランやカフェ、土産物屋が立ち並ぶ。
「サンタモニカピア」という海岸。
そこには、今も、
古びた観覧車が、
カルフォルニアの青い空に向かって
夢見るように回っています。
子どもたちの歓声が、
青空の高みへと走り出します。
夏の海辺は夢の岸辺・・・。
そこで人生は、観覧車より
ほんの少し、ゆっくり回リます。
遠い思い出を
旅しているんです・・・。
夕暮れ・・・、
サントロペの岬の方角に太陽が沈むと、
紺碧海岸には、
碧い光が降りてきます。
昼と夜の間に広がる
トワイライトブルー。
空も、海も、そして、風も碧く染まり、
マリーナへと引き返す白いヨットも
その、碧い風を受けて
夕闇に消えて行くのです。
光でもあり、闇でもある。
あるいは、光でもなく、闇でもない。
ブルーと言う名の、不思議な時間・・・。
心地よく冷えた シャンパンを片手に
ホテルの窓辺に佇み、
静かに、その碧い時間に溶け込んで行く。
夏の夕暮れの旅・・・。
いくつかの遠い思い出と、
いくつもの未来への夢が、
静かに、碧い時間の中で溶け合う
永遠のような一瞬の旅・・・。
気が付くと・・・
窓辺のシャンパングラスには、
そっと、夜が降リてきて、
碧い時が、星の光に姿を変えて、
コートダジュールの空に輝いています。
そう・・・、
ディナーのために、
CIランドコットンのシャツに袖を通していると、
開け放したままの窓から、
星の光を纏った地中海の夜風が、
そっと、パームツリーを揺らす音も
聞こえてきます・・・。
過去と未来の間に、
夢と現実の間で、
静かに飛行を続けているあなたに、
高度1万メートルの風が優しく奏でた。
大空の間奏曲
ジェットストリーム・・・
どうぞ、この風の音楽が、
あなたの旅を美しい夢の色に彩りますように・・・。