「ことば」
最近の言葉から。
落語家の立川談志さんが還暦を迎えた。「歳を取るっていうのは、おとなしくなれっていう社会
常識があるでしょう。『実るほど頭を垂れる・・・』じゃないけど。そんなことは俺には出来ない。
性格を変えるってことだろ」。 つっぱり健在。
東京国際女子マラソンの出場217選手で、最年長の石神みよさん（62）。完走のゴール後
「ロバさんはどうだった？ 最後尾は老婆よ。えっ、まだ後ろがいますか。3時間15分以内に
入って、来年の出場資格を取れなかったのが悔しいわ」。 3時間17分10秒154位。
健闘とユーモアに脱帽。
『ドクトル・ジバゴ』の作家パステルナークが、22歳年下の恋人に送った手紙が競売に。
ヒロインララのモデルになった恋人は、作家の流麗な筆跡を、「まるでツルが飛んでいる
みたい」と、自身の○まで、生きるよすがにした。
相対性理論で知られるアインシュタインが、最初の妻に書いた手紙も競売に。〈 私が話し
かけたらすぐに返答しなさい。私が頼んだら、口答えせず、すぐにわたしの部屋か事務所
から出ていくように 〉。嫌気が刺した妻は2人の子供を連れ、部屋ではなく家を出たという。
詩人の田村隆一さん。〈 心という不定形なものを、表現するために、つまり、詩を発見したい
ために、僕は詩を書き続けている。心は、CTスキャンでも写らない 〉。
〈 このあいだの かぜに / こいぬが ないて / おやいぬ すぐに / こやのおくに しまった 〉。
10年前に亡くなった童話作家、東君平さんの遺稿詩集『このあいだのかぜに』（くもん出版）
が出た。 〈 このあいだのかぜに 〉で始まる四行詩222編。懐かしく優しい心の風景が
広がる。親しかった画家11人がイラストを添えた。〈 このあいだの かぜに / においを
かいだ / こどもの ころの / ゆうがたの ろじの 〉
備考：この内容は、1997-4-15 朝日新聞論説委員室著「天声人語」より紹介しました・・・。