「頭上から3トン」 ピロタン 37歳
20代の頃、勤めていた会社がテトラポッドを作って川に設置する工事を受注した。
テトラポッドを土手の上のクレーン車から吊り上げ、川に据え付けていた。私と部長
は川に降りてテトラポッドを誘導していた。私がテトラポッドが頭上からこちらに
近付いてくるたびに安全な距離を取っていたから、部長(土木は力でやるものと
疑わない、脳まで筋肉タイプ)が、
「テトラがくるたび、いちいち逃げんじゃねえ!ワイヤーだって新品なんだ。
切れるはずネェだろ。俺を見ろ!テトラがきたら手で押さえるんだ」
と、、私にどなった。私は、仕方なく距離を1mほど詰めた。
次のテトラがきた。クレーンからゆっくり降ろそうとしたその時・・・。
バン!
まだテトラを3回しか吊ってない新品ワイヤーが切れ、重さ3t のテトラが川で
誘導している、私と部長の目の前15cmの位置にまともに落ちた。
さっきまで威勢のよかった部長は、テトラのしぶきをかぶって、ずぶ濡れのまま
固まっていた・・・。
死ぬかと思った・・・。
備考:この内容は、2010年2月22日発行(株)アスペクト
林雄司著 「死ぬかと思った5」より紹介しました。