石井> いや、画一的にその色という
ことではなくて、話しているうちに
どんどん色が濃くなっていくことも
あるんです。
久保> それは昔からですか?
石井> そうですね。そういえば、
小さい頃は、仏壇と蔵が好きだったん
です。自分の顔を仏壇の中に入れて
扉を閉めるんですよ。そうすると、
ろうそくの灯りだけで黒と金の世界が
ワーッと広がるんですよね。それが
もう、宇宙のような感じがして、
顔だけじゃなくて体ごと中に
入りたかったですね。
久保> 夜中に起きて、仏壇を
開けるんですよね?
石井> だって、仏壇は夜でしょ?
久保> 夜に、仏壇に顔を入れたく
ないなぁ(笑)。
石井> 昼間に仏壇にろうそくを立てても、
神秘的でも何でもない
じゃないですか。
久保> そうですね。はい・・・(笑)。
石井> ある時、「ああっ!」という
声が聞こえるんで仏壇から顔を出したら、
おばあちゃんが柱にしがみついて
倒れかかってました(笑)。それで、
僕が、夜な夜な仏壇に顔をうずめている
ことが発覚したんですけどね。
そういえば、仏壇って遺品を入れておく
引き出しがあるじゃないですか。
僕はそんなことは知らなかったから、
開けてみたら歯が出てきたんですよ(笑)。
奥には懐中電灯もあったり
して、もう、子供にしてみたら冒険!
久保> お家の中だけど、すごい
大冒険ですね。(笑)
石井> 子供は、「あのドアの向こうに
とんでもない世界がある」と思って
冒険できるんです。ところが大人に
なると、そんな無駄なことを考えて
はいけないような気がして、
どんどん小さなマスの中に入って、
いろんなことがつまらなくなるんです。
久保> そういえば「大人って何だろう?」
と考えると、我慢ばかりして
いるかなと思ったりします。
石井> じゃあ、喜びはどこにあるの?」
と聞くと、「わが子の成長」と
言う人が多いでしょ?「じゃ、自分は?」
というと、「俺はもう、
どうだっていい」となっちゃうけど、
自分がどうだっていい人に、人間が
育てられるとは僕は思わない。
久保> そうですよね。
石井> でしょ?自分を大切にする
からこそ他人を大切にするし、他人を
大切にするからこそ子供を育て
られるし、子供を大切にするから社会も
大切にするんですよ。だから自分
を蔑ろ(ないがしろ)にするとすべてが消えて
しまう。日本と言う国は、そこに気が
付いてない国なんだと思いますね。
久保> ナルシシスト万歳ですね。
備考:この内容は、「JAF Mate 8-9月号」より紹介しました。