今回は、2023年度入試で話題となった芝国際中・高について書いてみようと思います。
芝国際中学・高校
(港区・田町駅から徒歩5分)
(中学校…四谷偏差値80%ライン 男子48~51/女子50~53)
(高校…進学研究会偏差値60%ライン男女とも61)
1903年創立の東京女子学園を改名して共学化しました。
名前の通り、グローバル教育に力を入れた学校ですが、それにとどまらずデータサイエンスや起業家教育、進学指導等々受験生の目につくようなポイントをいくつも打ち出している学校です。
何が特に話題になったのかと言えば事の真相はこんな感じです
芝国際中の募集定員120名に対してのべ4681名の出願がありました。
(参考に)
足立学園 140名募集に対してのべ2177名出願(2023年度入試)
超人気の足立学園の2倍以上の受験生が集まったことになります。
複数回受験が行われることが多い中学受験では、当然合格したからといって入学するとは限りません。他校を本命にしている場合、合格しても辞退する人が多くいます。そのため多めの合格者を出していきます。その合格した人の中から入学手続きをしていく人が現れて、だんだんと合格者数そのものが減っていきます。ですから、複数回行われる受験の中でも序盤は倍率が低くなり、回を重ねるごとにだんだんと倍率が上昇していくのが一般的です。足立学園の場合、初日は3.7倍、二日目は12.9倍、三日目は52.0倍、四日目は58.0倍という具合です。高校受験を中心に見ていると、「3.7倍でも恐ろしいぐらい高いじゃないか!」と思う人もいそうですが、中学受験においてはそこそこの人気を集める学校であれば一般的な数と言えます。
話を芝国際中に戻します。
名前だけを見て「芝中の姉妹校なのか?」と、私は錯覚してしまいましたがそんなような人も少なくなかったでしょう。さらには、教育内容を見ると、「広尾学園みたいな学校か?この偏差値で広尾レベルの教育を受けられるなんて超魅力的!」と思った人もいるかもしれません。
中学受験は通常2月1日~5日ぐらいに渡って行われます。中には午前試験と午後試験が行われるなど複数回受験する生徒が大半です。例えば、あらかじめ午後試験に2校出願しておき、午前試験の結果次第でどちらを受けるか判断するというようなケースもあります。
そのため、合格発表のタイミングというものはとても重要なのです。ちょっと後ろにずれ込むだけで大幅な誤算が生まれてしまいます。
直前の説明会まで「合格者をかなり多く出す」と繰り返し伝えてきていました。
受験生たちは「芝国際でしっかり合格を取って、本命校にチャレンジ!」と思って受験した生徒が多かったのではないかと思います。
そんな中で…
・出題ミス(1回に限らず何度も問題訂正が入りました)
・合格発表の遅延(合格発表したものを一旦非公開になってしまいました)
・合格者が異常なほど少ない
異常な倍率になったのでした。2月1日午前の部は30倍、午後の部は36倍、2月2日午後は27倍…
30倍という倍率は、要するに30人中1人しか合格しないという状況です。(30人定員の教室だと、同じ部屋で試験を受けている人の中から1人しか合格者がいないという状況です)
先に述べたように
「芝国際できっちり合格を取って、本命へ…」と思っていた受験生たちは思いがけない不合格を突き付けられ急な対応を迫られてしまったわけです。
今回の件で芝国際中の何が問題かでいえば、「沢山合格者を出しますよー」と言って人を集めたにも関わらず、蓋を開けてみればちっとも沢山ではなかった、という点です。
そもそも人気が集中すること自体は問題ではありませんし、思わぬ不合格というのは受験にはつきものです。高校受験と違って、「確約制度(中学校の成績等を使った事前相談を行い、試験前に合格を保証してもらう制度)」が中学受験にはないわけですから、どんな偏差値の学校であっても不合格になることはあり得るのです。そんな背景があるので、受験するうえで複数の可能性にそなえていくつかの手を準備しておくのが常識になっています。そう考えると、芝国際中の準備不足、想定不足は否めないにしても、一方的に非難するのはどうなのかな、ともちょっぴり思うわけです。
ちなみに芝国際中の2024年度入試は、この過剰人気が落ち着き、出願者数のべ696名となり、倍率も本科1.8倍、国際アドバンスト1.6倍となりました。
新設校や新規リニューアル校では「ともかく人を集めなくては」という思いが先走ってしまうことも多いですが、その結果過剰人気になってしまうケースが度々見られます。
近年では女子校から共学化して校名を変えて人気校に踊り出た例がいくつもあります。
村田女子→広尾小石川
戸板女子→三田国際
嘉悦女子→かえつ有明 等々
いずれの学校も前年度までは定員割れしていたところからリニューアルしたとたんに3~5倍程度の倍率にまで上昇しています。
2026年に明治大世田谷中になることが決まっている「日本学園」はまさにその典型でしょう。明治大の附属校が増える!ということで人気が殺到しています。募集定員120名に対してのべ1322名が出願していました。この偏差値で高校受験大学受験を回避して明治大学にいけるなんておいしい!と思って出願する人が多いのでしょうが、本当にそうなのでしょうか。MARCHの附属は本当においしいのか検証する記事を以前書いているので、そちらも読んでみてください