先日ご紹介した「複雑さに挑む科学」(講談社ブルーバックス)で取り上げられている実例を一つご紹介します。


以下の26人の政治家に対する好き嫌いを100人の大学生に調査しました。選択肢は「好き」「嫌い」「どちらでもない」の3つです。


ケネディ、吉田茂、竹入義勝、レーニン、フォード、江田三郎、河野洋平、三木武夫、毛沢東、キッシンジャー、大平正芳、成田知巳、佐々木更三、春日一幸、福田赳夫、ニクソン、不破哲三、青島幸男、周恩来、コスイギン、田中角栄、野坂参三、ド・ゴール、中曽根康弘、宮田輝、宮本顕治


本書は76年の出版ですので、調査は75年か76年に行われたのでしょう。当時の世相を反映していますが、懐かしい(一部は時代錯誤的な)人が並んでいます。日本の政治家は三角大福中をはじめ与野党の指導者が並んでいますが、左右問わず、現在よりは人がいた気がしますね。


この調査結果に、多変量解析の一手法である「因子分析」を適用しました。(「因子分析」とは何かということについては、本書をはじめ、統計学の入門書をご参照ください)


その結果取り出された「因子」は次の通りです。因子負荷量が0.3以上の政治家を大きさの順に並べています。


第一因子:ニクソン、田中、キッシンジャー、吉田、中曽根、大平、福田、フォード、三木、コスイギン、河野、春日、ド・ゴール、ケネディ

第二因子:不破、宮本、野坂、コスイギン、レーニン、成田

第三因子:江田、河野、フォード、春日

第四因子:周恩来、毛沢東

第五因子:佐々木、宮田、竹入、春日


取り出された因子を解釈すると、以下のようになるでしょうか。


第一因子:コスイギンは例外ですが、保守系政治家を評価する因子です。

第二因子:革新系(それも左派)を評価する因子です。なんとなくマルクス・レーニン主義の香りがします。

第三因子:フォードはさておき、中道を評価する因子です。

第四因子:中国共産党の政治化を評価する因子です。

第五因子:宮田輝が入っているので、大衆的な政治家を評価する因子です。


本書には、本件のみならず、興味深い適用例がたくさん紹介されています。