二十一 そのころ二十一であつた。僕は坊主になるつもりで、睡眠は一日に四時間ときめ、十時にねて、午前二時には必ず起きて、ねむたい時は井戸端で水をかぶつた。冬でもかぶり、忽ち発熱三十九度、馬鹿らしい話だが、大マジメで、ネヂ鉢巻甲斐々々しく、熱にうなり、パーリ語の三帰文といふものを唱へ、読書に先立つて先づ精神統一をはかるといふ次第である。之は今でも覚えてゐるが、ナモータッサバガバトオ、アリハトオ、サムマーサーブッダサア云々に始まる祈祷文だ。