先週の盆休みには、遠方から娘が帰郷した。今回は、都合で、自身の愛犬を連れて来なかったので、うちのワンコは彼女に存分に甘えることができた。娘は以前から、顔面のビション・カットが苦手で、ビションの血も混じっている彼女の愛犬の頭部は、トイ・プードル式に刈り込んであった。一方、うちのワンコも、この猛暑で、ピンクの地肌がみえるぐらいに短く刈り込んでいたが、頭部だけはビション・カットを死守していた。

 

ところが、ある時、うちのワンコの様子がおかしい。よく見ると、顔だけトイ・プードルのような白い犬が、リビングのソファに鎮座している。下半身はずんぐりしているので、頸から下はトイ・プードルには見えない。頭の割合の小さなミニ・シロクマの誕生である。まるで、体のシルエットが浮かび上がるシャンプー後のワンコのようになっている。どうも、娘が家内と共謀して、自分たちでカットしたらしい。不亦楽乎。

 

今週の室内ランは、60分(L4通し)と120分(L4)の2回に終った。この程度で、基礎体力は高めに維持されている気がする。どちらも今の筆者にはハードで、間に3日は休まないと、疲労が蓄積する。毎日なら30分(L4)、隔日なら60分(L4)が限度である。しかし、それでは、持久力が維持できない。筋肉にも水分が貯蔵されるせいか、熱中症にはかかったことがない。スタミナ料理と栄養ドリンクで今夏を乗り切ろう。

 

運動時には、スーザン・サランドンの『依頼人』(1994)ほかを観返した。2本分のブログ記事となると、長すぎたり、負担が大きくなったりするため、これからは映画ネタを1本に絞ろう。彼女は、『シャル・ウイ・ダンス?』(2004)では、リチャード・ギア演じる主人公の妻役で、控えめな演技を披露していたが、『依頼人』では、名優トミー・リー・ジョーンズ(1946-)を向こうに回しての、かっこいい演技が見ものだ。

 

母や幼い弟とトレーラー・ハウスに住む貧困家庭の11歳の少年マークが、ある男性弁護士の自殺現場に居合わせたことから、事件に巻き込まれる。マークから大体の事情を聞いた女弁護士のレジー(スーザン・サランドン)は、元夫の裏切りで引き裂かれた愛しい我が子と、助けを求める少年を重ね合わせることで、たった1ドルで弁護を引き受け、必ずしも協力的でない突っ張り少年のために、奔走するという物語である。

 

マークは、母のバッグからタバコを盗み、隠れて吸うために森に行くと、弟がついてくる。二人は、そこで、車内で排ガス自殺をしようとする男に出くわす。少年は、自殺を止めようと排気管に差し込まれたホースを外す。彼は、男の手で再び繋がれたホースを外そうとするが、サイドミラーに映る姿を見られ、車内に連れ込まれて、心中を強要される。兄弟は逃げ出すが、男は拳銃自殺を図る。弟は、ショックで、心を閉ざす。

 

マーク少年が車内で自殺男から聞いた話は、「自分はマルダーノの弁護士で、彼に殺された上院議員の死体の埋め場所を知っているために、消される」というものだった。マルダーノは、血の気が多くて、すぐ切れることから、剃刀の異名をもつマフィアの一員であった。FBIは組織を追い詰めるために、躍起となって、死体の隠し場所を探していた。少年は、警察官から脅されて、家族を守るために、弁護士を雇おうとする。

 

少年と女弁護士との最初の出会いも印象的である。彼がレジー・ラブ弁護士事務所のドアを開けると、彼女は、窓のほうを向いて、後ろ向きに立っている。「レジーさんはいます?」「私がレジーよ」「なんだ、女の弁護士かよ」「男の弁護士が隣にいるけど紹介してほしい?」「あなたの勝率は?」「半分以上よ」「料金はいくら?」「いくら持ってるの?」少年はくしゃくしゃの1ドル紙幣をポケットから出す。

 

少年が議員の死体の隠し場所を知っていると踏んで、FBIの首席検事ロイ(トミー・リー・ジョーンズ)他の面々が彼に会いにくる。ロイは、法廷で聖書の一節を引用することから、牧師と呼ばれている人物である。少年は、最初、母親も弁護士もいない状態で、5人の男と渡り合う。少年がなけなしの1ドルを出してから、弁護を引き受けたという彼女のサインはなく、視聴者には、少年が一人で戦うことになったようにも映る。

 

少年とロイらとの会話。「母がいないと困るなら別の日にします?」「いや君がいればいい」「弁護士いります?」「どうして?」「権利を守るため」「テレビの観すぎだ、質問するだけだよ、弁護士は話の邪魔ばかりする」「答えを拒否したら?」「君とママを署へ連れていく」[中略]「司法妨害って分かるか?法に触れる行為だ。犯罪のことを知ってるのにFBIや警察に教えなかった者は監獄に入れられる」と彼らは少年を脅す。

 

「質問に答えないと僕は監獄へ?」「多分な」「僕の立場なら弁護士が必要でしょ?」「法律屋なんてくそ野郎どもだよ」「くそ野郎?あなたも法律屋でしょ?」と少年は負けていない。FBI側はオフレコで対応したが、少年はこのやりとりを録音していて、後で彼らをやり込める材料になる。FBI側は楽勝で少年を落とせると喜んでいたが、この後、少年の代理人となった女弁護士の登場となり、彼らの目論見は見事に外れる。

 

その後、レジーは、母親に会いに行き、少年の弁護を引き受けたことを伝える。不安げな彼女に、レジーは、弁護料の心配をしないように言い、息子のために、たった1日休んだだけで、時給5ドルの仕事を解雇された彼女を励ます。「私ってだめね」「よくやっているわ」[中略]「あなた若くして母親になったのね」「バカだったのよ、夢ばかり見てたわ、[中略]愚かでしょ?」「夢は愚かじゃないわ、いつかきっとかなう」

 

マークはマークで、森で間近に身を潜めていて、例の弁護士の拳銃自殺の瞬間の音をもろに耳にした恐怖で、口が利けなくなった弟のリッキーを、なんとか、笑わせようとする。少年は、氷のかけらを何個か手にして、それらを下腹部から少しずつ落としながら、「エスキモーの小便」だとおどけて見せるが、弟はニコリともしない。マークは、リッキーを森に連れていったことへの責任を感じ、絶対に彼を助けてみせると誓う。

 

マフィア側はマフィア側で、議員の死体を現場から動かしたいが、FBIがうろついていて、なかなか動かせない。彼らは秘密をばらさないように、少年に脅しをかける。死体の在りかについて、少年は、恐怖心から、弁護士のレジーにも嘘をついていたが、うまく彼女に誘導されて、最後には知っていることを全て話す。この後は、サスペンス特有のハラハラドキドキの展開になるが、最後は、もちろん、ハッピー・エンドである。

 

本作の一番の良さは、人間的な温かい眼差しに満ちている点である。FBIも警察もマフィアも少年に対して執拗に脅しをかけようとするが、決して、血生臭い展開にはならず、安心して観ていられる。幼い身で父親代わりになろうとして突っ張る少年を、生き別れの我が子と重ね合わせる、心に深い傷を負った女弁護士の母性愛が作品のベースにある。また、牧師(FBI)と剃刀(マフィア)との戯画的な対立も面白い。

 

音楽ネタに入ろう。小坂一也の「オレンジ色の空」(1958)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にはテンポ数値112が付いていたが、2分の2拍子で、基準となる音符は一般的な4分音符ではなく2分音符で、倍の224に設定すると適正化した。小坂と言うと、爽やかイメージで、古賀政男の「青春サイクリング」(1957)が有名だが、服部良一の本曲もシンプルでいい。同じ小坂の「心にしみるブルース」(1958)のB面曲である。

 

松山恵子の「メノコ月夜」(1958)では、『歌謡曲全集』の原譜にテンポの指示はなかったが、2連結の32分音符や16分音符の3連符などが多数みられることから、スロー気味だと判断し、とりあえず、84に設定した。大津美子の「もう帰らない」(1959)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にモデラートの指示があったが、テンポ84では少し遅く感じられ、108ではやや速く感じられたため、中間の96に調整した。

 

石井千恵の「おちゃっぴギター」(1958)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にモデラートの指示があり、原曲の演奏時間(3分強)を念頭に置きながら、そのまま、昭和歌謡のスタンダードである84に設定した。また、前奏冒頭の4フレーズにまたがる音符群に1オクターブ上げて演奏する意味の8vaが付いていたが、アコーディオン音源による演奏では、一部の高音が無音化するため、とりあえず、8vaを取り払った。

 

大津美子の「落葉の街角」(1958)では、『歌謡曲全集』の原譜からの電子楽譜化の作成において、原譜どおりだと、歌唱末の歌詞の音配当に違和感があり、次のように修正した。「街の角」/「吹きだまり」/「宿もない」の箇所には全部で9音があてがわれていた。当初の構成は1番歌詞で言えば、マ・チ・イ・ノ・カ・ド・オ・オ・オになっていたが、聴いた感じが不自然で、マ・チ・イ・ノ・オ・カ・ア・ア・ドに変えた。

 

神戸一郎の「エジプトの夜」(1959)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭に「ゆるめに」の指示があった。「ゆるめ」については、テンポがゆったりしていて落ち着いた曲調と解釈した。実際、4分の2拍子の曲で、16分音符が連続する箇所もあり、スローテンポが予想されたが、原曲の確認はとれなかったため、とりあえず、84に設定した。演奏時間は3分強で、後で原曲確認ができれば、調整後の再アップも辞さないつもりだ。

 

村田英雄の「よさこい三度笠」(1959)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にModeratelyの指示があり、通常のモデラートの範囲も探ったが、いずれも速く感じられた。前奏部を中心に16分音符が連続する箇所が多く、スロー気味にしないと、テンポが不自然になることが譜面から予想された。そこで、原曲の演奏時間とも照らし合わせた上で、最終的には60に設定した。曲の構成の関係で、演奏時間は少し短くなった。

 

こまどり姉妹の「女の恋」(1964)では、『歌謡曲全集』の原譜からの電子楽譜の作成において、原譜どおりだと、DCが正しく機能しなかったため、閉じる反復記号の位置までずらしてから、MP3ファイルを作成し、後で手作業で不要部をカットした。テンポについては、原曲の演奏時間(3:50前後)を確認後、先の不要部を除いた電子楽譜の演奏時間が原曲に近づくように配慮した。結局、130に落ち着いた。不亦楽乎。

 

倍賞千恵子の「花はおくらないでください」(1965)では、『歌謡曲全集』の原譜からの電子楽譜の作成において、歌唱部の主旋律に付くオブリガートの悪影響か、後の全音符が無音化する現象が生じた。また、別な箇所では、これも助奏部の関係か、フレーズ内の音長の辻褄が合わなくなるケースに遭遇した。いずれも、該当するオブリガートを取り払うと、問題が解決した。違和感の小さなほうを選択するようにしている。

 

さらには、原譜の前奏部に一か所、誤植らしきものが混じっていた。1音にフラットが付いたオブリガートの箇所に微妙な違和感があり、確認すると、その1音からフラットを取ると自然になるように思われた。本曲はフラット3個の変ホ長調の曲で、けっこうあちこちの音符にフラットやシャープやナチュラルが付いていて、誤植を誘発する可能性の高い譜面である。案外、わずかの不協和音でも見つかるものである。

 

最後に、『歌謡曲全集』の原譜どおりだと、電子楽譜では、DSがきちんと機能しなかったため、閉じる反復記号の位置までずらしてから、MP3ファイルを作成し、その後、手作業で不要部をカットした。2分の2拍子の曲で、テンポ84にすると、かなり遅く感じられ、96でも遅く感じられ、108でもちょうどよいように思われたが、原曲の演奏時間(3:40前後)よりかなり短くなるため、最終的には、100に設定した。

 

田端義夫の「赤い花」(1967)では、『歌謡曲大全集』の前・間・後奏入りの完全な原譜ということで、電子楽譜化に大きな問題はなかったが、一か所だけ、付点8分音符のはずが無点8分音符になっていた。フレーズ内の青警告も出ていたし、リフレインの箇所でもあったので、すぐに誤植と判定できた。テンポについては、当初、84にしていたが、原曲を確認すると、これでも速かったため、最終的には76に落ち着いた。

 

荒木一郎の「紅の渚」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の2か所に、Codaに対応するto Codaが付いていた。前後関係から判断して、不要と思われるto Codaを削除した。テンポについては、当初、演奏時間3分前後を目安に100に設定していたが、原曲を確認すると、思いのほか、短い演奏時間(2分半前後)だったので、結局、スコアメーカーのデフォルト値である120までアップした。不亦楽乎。

 

黒沢明とロス・プリモスの「夜霧のインペリアル・ロード」(1969)では、『歌謡曲全集』の原譜における、歌唱末の「インペリアル・ロード」の不明瞭な音配当に苦戦した。変ホ長調の曲で、G3D3F3E3C3C3の6音(最初の3音は無点4分音符、次の2音が無点8分音符、最後の音が付点2分音符の構成)にカナ歌詞が均等に振られている。イン・ペリ・アル・ロ・オ・ドと分けたくなるが、それだとロードがロドに聴こえる。

 

当初、最初のC3の音程が1音低いのかとも考えたが、最後のC3とタイで結ばれていたので、誤植扱いはしにくかった。原曲を確認すると、ボーカルの森聖二が、インペリアルの箇所だけ英語風に歌っているのがわかった。これだと、im-perialと2分節で済むため、残りの4音をロードに回せる。当時は本曲を知らなかったが、好きな渡久地政信の曲とあって、テンポも原曲に完全一致させ、正確な電子楽譜化に気合も入った。

 

伊東ゆかりの「愛して愛して」(1969)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭に、Moderately Slowの指示があり、通常、スコアメーカーではモデラートで84、スローで60が初期値として設定されているが、実際には、それらのテンポでは遅すぎる。原曲の演奏時間(3分半前後)に合わせると、100に落ち着いた。本曲も、同じ伊東の「あの人の足音」(1967)、「恋のしずく」(1968)、「知らなかったの」(1969)とともに、筆者の耳に残っている。

 

都はるみの「惚れちゃったんだョ」(1969)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にモデラートの指示があったが、84では遅く感じられ、108では速く感じられたため、中間の96に設定した。歌唱の主旋律にからむオブリガートには16分音符の6連符が3連続の箇所もあり、スロー気味になることは予想できたが、原曲の演奏時間(3:40)に近づけようとすると、80以下にまでテンポをダウンさせねばならず、最後まで迷った。

 

水前寺清子の「真実一路のマーチ」(1969)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にマーチ・テンポの指示があり、スコアメーカーのデフォルト値である120を試したが、一発で、原曲の演奏時間(3分半強)に近くなったので、そのまま、テンポを確定させた。また、歌唱の主旋律に付くオブリガートの悪影響からか、一部の主旋律に音長の乱れが生じたため、やむを得ず、当該フレーズ内の助奏部を取り払った。不亦楽乎。

 

ザ・キャラクターズの「港町シャンソン」(1970)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にモデラートの指示があったが、スコアメーカーの初期値の84では遅く感じられ、108では速く感じられるということで、中間の96を選択すると、原曲の演奏時間(3分強)とも一致した。久しぶりのボカル嬢とのデュエットである。「昭和枯れすすき」(1974)のように、独特の野暮ったい雰囲気が癖になる、昭和臭がプンプン匂う1曲である。

 

 

例によって、歌三昧のアップ曲で、視聴数の多いものを3曲ほど貼り付けた。