休み期間中には、川底が丸見えになった高知の四万十川の異常渇水の様子がニュースで伝えられた。最後の清流と呼ばれた四万十も、昨年の11月からの乾燥続きで、見るかげもない、変わり果てた姿になっている。石の荒野が広がるなかで、佐田沈下橋(今成橋)の空色の橋げただけが妙に目立っている。四国の水がめである早明浦ダムでも、50年前に沈んだ幻の大川村役場の旧庁舎の屋根が顔を覗かせていた。雨よ降れ。豪雨災害にならない程度に。

 

ABCテレビで1月31日放送の「LIFE~夢のかたち」で、東之華さんの創作雛人形作りが紹介されていた。滋賀県草津市に人形巧房「ひなや」を構える。近江の雛人形作家の東之湖さんに弟子入りし、修行を重ねたという。今は男雛と女雛だけのシンプルな核家族雛が主流であるが、東之華さんのものは、女雛の華麗さに特色があり、源氏物語の絵巻から抜け出たように、極彩色の十二単衣の流れるような優雅さが感じられる。

 

私たちにも娘がいるので昔ながらの雛人形はある。童謡にある雛祭のイメージは昭和の段飾りと共に私たちの心に定着していたが今は昔となりつつある。「灯りをつけましょ雪洞に/お花をあげましょ桃の花五人囃子笛太鼓/今日は楽しい雛祭、お内裏様お雛様/二人並んですまし顔/お嫁にいらした姉様に/よく似た官女の白い顔、金の屏風に映る灯を/かすかに揺する春の風/少し白酒召されたか/赤いお顔の右大臣

 

3月3日の雛祭の前に、2月3日の節分がある。元々、某店の巻き寿司が好きで、節分にはこだわった恵方巻も出回ることから、当日は、私たちは1人2食分の恵方巻を買って、朝晩、吸い物やサラダと共に、美味しくいただいた。逆に、豆撒きについては、ワンコの関係で、近年は撒かなくなった。うちのワンコは食い意地が張っているため、撒くと、すぐに、拾い喰いをする。硬い大豆を呑み込むと体によくないからである。

 

恵方巻と同じ理由で、2月14日のバレンタインが近づくと、凝ったチョコレート・アソートが出回るため、何かのついでに、家内に買って来てもらうように頼む。この時期は自分で買うのも何となくためらわれるからである。ところが、今年は、たまたま、用事で息子夫婦が13、14日と拙宅に来ていたため、孫娘からもチョコをもらった。ありがとう。酒は呑まないが、ブランデーやウイスキーの入ったボンボンは大好きだ。

 

27日には2026年版「終末時計」が発表され、前年から4秒短縮され、残り85秒となった。算定開始の1947年以来過去最短のようである。ロイター報道によれば、「核保有国であるロシアや中国、米国の攻撃的な動き、核軍縮の気運後退、ウクライナや中東での武力衝突、人工知能(AI)の軍事利用を巡る懸念」が短縮の主な要因として挙げられている。これでは有事の安全資産と言われる金の価格が急騰したのも無理はない。

 

8日には衆議院選挙の投開票が行われた。開票速報直後の20時にはANNの議席予測で早々に与党の圧勝が伝えられた。蓋を開けてみると、高市自民党の単独過半数どころか、戦後初という単独3分の2を超えた。316議席獲得の歴史的な大勝だ。参議院で否決された法案の再可決も可能となり、今後、同党が参議院でも3分の2以上の議席を獲得できれば、憲法改正の発議も可能になる。これで日本の今後の方向性は決まった。

 

公示前勢力は自民198中道167(立民139/公明28)維新34国民27共産8であったが、改選後は自民316中道49(立民21/公明28)維新36国民28参政15みらい11共産4となった。自民党は120近く議席を増やし旧立憲民主党は120前後議席を減らした。比例で参政とみらいの躍進も目立つ。今回の選挙では消費税減税が争点にならず、安全保障や外国人対策といった世界の趨勢を睨んだ内向きの動きに関心が集まった。

 

30日の全豪オープンの車いすテニスの男子W決勝では、小田凱人/G.フェルナンデス組がD.カベルサスチ/R.スパーガレン組にストレートで勝ち、優勝を飾った。また31日の車いすテニスの男子S決勝でも、小田がデラプエンテを逆転で破り、2年ぶり2度目の優勝を果たした。おめでとう。なお、2月1日に行われた全豪オープンの男子S決勝はアルカラスが3-1でジョコビッチに勝利した。世代交代が進んだかたちだ。

 

6日からはミラノ・コルティナ冬季五輪が始まった。スケートボードと共に日本の新たなお家芸となりつつあるスノーボードの男子ビッグエア決勝では、木村葵来が1回と3回にバックサイド1980(5回転半)、女子ビッグエア決勝でも、村瀬心椛が1回と3回にトリプルコーク1440(4回転)、男子ハーフパイプ決勝でも、戸塚優斗が2回目に2連続のトリプルコーク1440に成功し、各々、金メダルを手にした。おめでとう。

 

休み期間中の室内ランは60分(L4通し)を週1~2回程度の負担にならないものに決めている。長い間、気温が低かったため、運動で身体が温まるまではガスストーブを利用していたが、息苦しくなるタイミングで暖房を切る。エアコンの暖房は音がうるさいし、顔に温風が直接あたるので、好きではない。息苦しいと言えば、最近は室内でもマスクをすることが多くなった。鼻が温かいし、口の乾燥を予防できるからである。

 

今回の映画紹介はヒッチコック監督の『断崖』(1941)の第1回である。例によって、日本語字幕の引用に物を言わせる手法で、会話のデテールを吟味することを可能にさせる提示である。完全ネタバレが気になるようなら、スルーされたい。同じヒッチコックの名作『レベッカ』(1940)を観て、ヒロイン役のジョーン・フォンテイン(1917-2013)の、内面の成長を感じさせるような自立する女性の演技に魅了されていた。

 

『断崖』で彼女はアカデミー賞の主演女優賞を獲得するが、『レベッカ』以後、彼女の演技がどのように進化しているのか楽しみである。本作はヒッチコック作品に初出演のケーリー・グラント(1904-86)との共演になるもので、彼は、その後、『汚名』(1946)、『泥棒成金』(1955)、『北北西に進路をとれ』(1959)とヒッチコック作品のお馴染みとなる。原題は”Suspicion”で、文字どおり、疑惑・疑念・不信感などを示す。

 

舞台は1938年の英国である。汽車の汽笛が聞こえるだけの真っ暗な画面から始まる。男の声が言う。「失礼、あなたの足?トンネルで暗くて」トンネルを過ぎると車内は外光で明るくなる。車室には男女が向かい合わせにいる。背広姿の男性(ケーリー・グラント)が、荷物を置きながら、言う。「ここは空室かと」女性(ジョーン・フォンテイン)は帽子を斜にかぶり、眼鏡をかけて本を読みながら、無言のまま席に座っている。

 

男性は向かい側に腰を下ろして、黙ったままの彼女にさらに言葉をかける。「怪我はない?隣の客室は煙がひどくて逃げてきた。タバコは?」女性は、相手の様子を窺いながら、そっけなく答える。「吸わない」「助かった。ゆうべからひどい頭痛に悩まされてる」そう言って、彼は、女性の足先から上へ目線を上げて行き、彼女が読んでいる本のタイトルに目をやる。『児童心理学』それから、彼は彼女の無表情な顔を見上げる。

 

そのとき、車掌が入って来る。「切符を拝見」女性が速やかに切符を車掌に見せると、そこには「1等車」の表示が目につく。男性が切符を示すと、車掌は言う。「席が違います」「1等車だろ?なら合ってる」「切符は3等です」男性の示した切符の大写し。そこには3等と明記してある。「1等の金額を払ったのにひどいな」「恐れ入りますが、あと5ポンド4ペンスです」女性は明らかに男性に不信感を募らせている様子である。

 

「釣りはあるか?でも札がない」彼は小銭で払おうとする。「これで何とかなるか?」男性は車掌の表情を見て言う。「無理らしいな」今度は女性に向って言う。「他人の君に悪いが、小銭は?」「さあ、どうかしら」彼女はハンドバッグのなかを探す。そのとき、彼女の持ち物のなかに、目ざとく切手を見つけた彼は言う。「その切手でいい。これで5ポンド4ペンスだ。切手は法定通貨だぞ」車掌はしぶしぶ切手を受けとり退室する。

 

男性は車掌に嫌みを言う。「ママに手紙を書け」車掌は心なしかガラス扉をバンと強く閉める。男性は呟く。「まったく」女性は読書をやめて新聞に目を通している。向かいの席に座る男性と同一と思われる有名人らしき紳士の顔写真が女性のそれと共に掲載されている。見出しには「エイスガース氏とニューシャム夫人」とある。彼女は思わず目の前の男性の顔と新聞の紳士の顔とを見比べる。男性は景色を見てから眠りにつく。

 

画面が変わる。家並や木々の周りに人だかりが出来ている。乗馬を楽しむ紳士淑女もいる。車も行き来している。猟犬たちも群れで狩りを待つ。絵になる光景である。次第に人々の大写しになる。人垣の中心にはエイスガース氏がいる。「エイスガースさん、写真を。もう1歩だけ前へ」彼は精一杯の笑顔を振り撒いている。カメラマンが言う。「エイスガースさん、笑顔でお願いします」エイスガースが答える。「早朝は無理だ」

 

そこへ知人の女性がエイスガースに声をかける。「おはよう、ジョニー」彼女の2人の娘も歩み寄る。「あちこち捜したわ」カメラマンが割って入る。「すみません、撮影を」先ほどの女性が言う。「失礼したわ。あとでね。おいで娘たち」「元気いっぱいだ」とエイスガース。「その表情、いいですよ。もう少し笑ってください」とカメラマン。そのとき、馬の1頭が興奮して紳士を振り落とそうとする。エイスガースが振り向く

 

彼の視界の先では、車室で一緒になった女性が颯爽と馬に乗っている。エイスガースは言う。「あの時の。別人みたいだ」女性の大写し。「誰です?」とエイスガース。右隣にいた知人の女性が言う。「変な気は起こさないほうがいいわ。あなたとは合わない」「合う人には飽きた。紹介してくれ」とエイスガース。「ダメよ。箱入り娘なんだから」と知人の女性。「では自分で」と彼。左横の女性も、あきれ顔で言う。「行きましょ」

 

画面は変わり、マクレイドゥロー家を取り巻く風景画のような景色が広がる。そこから屋敷内の描写に移る。リナ・マクレイドゥロー(ジョーン・フォンテイン)は広間で窓際の作り付けの木製のベンチ椅子に座って本を読んでいる。ガラス窓の外から、先ほどの2人の娘を連れた夫人がノックしている。「リナ、開けて」彼女は横手の扉を開ける。「驚いた」「元気?」3人の女性の背後には、案の定、エイスガースが控えていた。

 

エイスガースがあの時の彼女に挨拶をする。「よろしく」2人の娘たちが口々に言う。「外から見えたの」「ジョニーが紹介しろって」「なぜ?」「この辺は独身男性が貴重だと聞いた」女性客らの笑い声。「聞いた?」「おもしろい人」リナも軽く笑みを浮かべている。「そうでしょ」「急いだほうが」とエイスガース。「何の話?」とリナ。「教会へ行く」と彼。「迎えに来たの?」とリナ。「違うけど」と娘の1人。「行く?」と娘の母親。

 

「ありがとう。ご一緒するわ」とリナ。「列車の時の変な帽子も忘れないで」と彼。「わかったわ。すぐに戻ります」とリナ。彼女は出かける用意をする。「座って待ちましょう」訪問客らはベンチ椅子に腰を下ろす。エイスガースはリナが読んでいた本を手にとる。すると、そこに自分と友人女性を写した新聞の切り抜きを見つける。彼女が車室で読んで取っておいたものであった。エイスガースは一瞬、嬉しそうな表情をする。

 

2階ではリナが母親と話をしている。「どこへ?」「やっぱり教会へ」「誰と?」「バーラム家」「嫌いでしょ?」「大嫌いよ」母親はやれやれと言う顔をする。「どうなってるの?」画面が切り替わり、教会周辺の絵のような風景が現れる。エイスガースとリナらの一行がやって来る。彼は教会には入ろうとせずに、リナを強引に散歩へ誘う。「教会へ?」「そうよ」「散歩しよう」「バカ言わないで」「コインで決める。表なら散歩だ」

 

知人の母娘が振り向くと、二人は付近を散策している。エイスガースはリナに無理やり近づき、キスを迫ろうとしているように見える。「殺されるとでも思った?ずいぶん必死で暴れていた」今も彼女は彼に握られた手を必死に振り払おうとしている。「放して」ようやく、彼は手を放す。「キスされると思ったんだな」「違うの?」「髪形を直そうとしてた」「何か問題?」「よく聞いてくれた。僕から言うのは失礼だ」「本気なの?」

 

「もちろんだ」「田舎育ちとは言え、こんな人は初めて。からかってるのね」「とんでもない。でも髪形はひどい。直せば素敵になるはずだ。僕に任せてくれないか」「どこがダメ?」「見てて」彼は彼女の髪に触れ始める。「そうだな」そのとき、彼女が無意識に胸元を隠すしぐさをすると、彼は言う。「閉めるな。胸骨のくぼみが美しい」(下線筆者)「それ何のこと?」「ここだ」彼女の胸骨に指を立てる。「できたぞ。いい感じだ」

 

彼女は、もともと、アップの髪形だが、彼は後ろの編髪を真上に立てたり降ろしたりして遊んでいるように見える。「写真の女性[ニューシャム夫人]と比べて珍しがってるのね」「馬と比べて、僕はどう?」「手綱があれば乗りこなせそう」「鞍に乗った君に振り向いてキスしていい?」「髪は終わったようね」そう言って、彼女はキスしようとする彼の顔をスルリとかわす。彼女は手鏡に髪を映す。やはり変な髪に仕上がっている。

 

「鏡を持ったサルみたいだぞ」と彼は茶化す。「なあ、おサルさん、さっきのほうがよかった」人を小ばかにした対応である。それでも、彼がまたしても顔を近づけようとすると、彼女は、そのタイミングで、手鏡をしまったのか、ハンドバッグのがま口をパチンと閉じる。「昼食に遅れるわ。遅れた上、あの髪形じゃ父が卒倒する」そう言って、彼女は、そそくさと彼から離れ、家路を急ぐ。エイスガースは後からついて行く。

 

彼女は屋敷に到着する。彼は彼女を見送る。彼らは家の前で話をする。「ここで結構よ」「3時に迎えに来る」「午後は外出できない」「できるさ」「母と電話をかける予定が」「ウソつき」「本当よ」「3時に来る」彼女が玄関前に来ると、中から父親の声がする。リナは生涯、独身だろうが、老後の資金は心配ない彼女は中に入りそびれて、外から声のするほうに近づく。今度は母親の声が答える。「あの子は結婚するタイプじゃない」

 

窓から覗くと、両親が話をしている。「オールドミスの何が悪い」「リナは賢いし、しっかりした女性だ。食事にしよう」彼女が動揺していると、何と、立ち去ったと思っていたエイスガースもその場に残っていて、話を聞いていた。このあたりの意外性も『レベッカ』(1940)譲りだ。リナは咄嗟に自分から彼にキスをして、家の中に入る。彼女は、そのまま、ダイニングに向かう。彼女は両親に遅刻を謝罪する。「遅くなったわ」

 

「ずっと教会に?」と母親。「行かずに散歩してた。男性と。ジョン・エイスガースさん」「ジョン・エイスガース?」と父親が驚いた様子で言う。「トムの息子?」と母親。「ろくでもない息子を持ってトムも気の毒にな。ホースラディッシュか、季節には早い」と父親。使用人が料理を運んで来る。彼女は考え込んでいる。「瓶詰めかね?」と父親。「まさか」と母親。「違うと思った。やはり本物は味が違う」「同感よ」と母親。

 

娘が口を開く。「なぜ《ろくでもない》の?」「カードでイカサマをやった」「知らなかった」「何か悪さをした。滞在先は?」「ミドルハム卿のところ、ズルする人なら泊めないわ」「なら女性問題かもしれん。何かで訴えられていたはずだ」「午後、また会うわ。3時に迎えに来るの」両親の顔色が変わる。そのとき、彼から電話が入る。「もしもし、ジョニー?来られない?仕方ないわ。お電話ありがとう。次を楽しみにしてる」

 

場面が変わり、リナが雑誌をめくっていると、エイスガースの映画スターのようなダンディーな写真が目に飛び込んで来る。その後、彼から連絡がないので、彼女はいても立ってもいられなくなる。リナは眼鏡を外して開いた写真頁の上に置く。リナは知人に電話をかける。「ジョン・エイスガースさんは?そう。あの方が舞踏会に出席するかご存じ?それじゃ。いいわ、またかける」彼のことが気になって仕方がない様子である。

 

次に彼から手紙が来ていないか、リナは郵便局の窓口を訪ねる。「ありません」「間違いない?」「ええ」「ほかの人の郵便箱に紛れ込んだ可能性は?」「その場合は戻ってきます」「そう、ありがとう」次は電話帳を検索し、エイスガースの項目を見つける。交換に電話をかけて、電話帳にある番号を呼び出してもらう。「リージェント0021番を。出ない?分かったわ」リナは物思いに耽りながら、彼と歩いた教会近くの丘に立つ。

 

画面は切り替わる。招待状の大写し。「マクレイドゥロー将軍夫妻とお嬢様をハンティングクラブ主催の舞踏会にご招待いたします」とある。リナがふさぎ込んだ様子でソファー椅子に眠っていると、彼女を呼ぶ声とドアをノックする音がする。母親である。「リナ」「お母さま」「もう7時よ」母親は舞踏会用に正装している。「新しいドレスを」「そんな気分じゃないの」「どうかした?」「頭が痛いのよ。舞踏会には行かないわ」

 

「だけどお父様が何と言うか。頭痛薬を。熱はない?」「どうかしら」そのとき、またドアがノックされる。「どうぞ」家政婦が入って来る。母親は娘に言う。「頭痛薬は?」「引き出しに」家政婦が言う。「電報です」リナは眼鏡をかけて電文を読む。《舞踏会で会おう。くぼみによろしく。ジョニー》下線部の原文は‘Don’t forget to bring your ucipital mapilary.’ それまでふさぎ込んでいたリナは、電文を読んで、元気を取り戻す。

 

‘ucipital mapilary’をグーグル検索にかけると、次のようなAIによる概要が示された。「《ウシピタル・マピラリー》は、1941年のヒッチコック映画『断崖 (Suspicion)』のために脚本家のサムソン・ラファエルソンが作り出した造語で、医学用語のような響きを持つ架空の言葉です。首の付け根、鎖骨の間のくぼみ(胸骨上切痕)を指し、美の象徴として描かれます」普段はAIによる記述を信用しないが、本解説は真実味がある。

 

母親が頭痛薬を手にして娘に言う。「さあ、飲んで」「なぜ?」「頭痛よ」「治ったわ。すぐに準備する」またしても、急に元気になった娘を見て、母親には何が何だかわからない。以前にも、母親に教会に行くのは嫌いだと話していたのに、エイスガースに教会に行こうと誘われると、前言を翻して母親を当惑させた前歴がある。母親は言う。「訳がわからないけど、とにかく、よかった」これで彼女はドレスへの着替えに身が入る。

 

舞台は舞踏会会場に移る。招待客らが踊っているなか、リナは、心配そうに、エイスガースの姿を探している。なかなか、見つからない。リナに関心のある知人男性が声をかける。「ねえ、リナ」「レジ―」「踊ろう」「いいわ、もちろんよ」彼女は、内心やきもきしながら、彼と踊り出す。離れたところで、舞踏会の主催者らしき男性がリナの父親に話しかけている。「あれはお嬢さんのリナ?」「ああ」「驚きました」「実は私もだ」

 

そのとき、執事が主人に近づき耳打ちする。「将軍にお客様が」そのまま、主催者は父親に伝える。「お客様だそうです」執事に向って言う。「こちらが将軍だ」「失礼しました。将軍にお客様です。名刺はなく、名前はエイスガース」「何かの間違いだろう」そこへ、当人がやって来る。「将軍?ジョン・エイスガースです」「君は招待されていないと思うが」「変ですね。ロンドンから駆けつけたのに」「それは何と言えばいいか」

 

エイスガースは将軍に答える。「執事が困っていますよ」そのとき、彼はレジ―と踊っていたリナと目が合う。ちょうど1曲、踊り終わったところで、彼女は喜びを隠しきれない様子で、一気にエイスガースの元に歩み寄る。レジ―はあっけにとられた顔をしている。「ジョニー」すぐに知人の母娘も彼の元に駆け寄る。「遅くなりました。失礼します」皆にそう言って、彼はいきなりリナと踊り出す。近くにいた者は唖然としている。

 

皆とは、父親、エイスガースと親しい3人の母娘、レジー、主催者、執事の総勢7名である。彼らの視線の先には楽しそうに踊る二人がいる。「おサルさん、やあ、おサルさん」「こんにちは、ジョニー」彼は踊りながら彼女を玄関口まで導き外へ出る。「どこへ行くの?」「車は?」「抜け出すなんて」教会のときと同じである。「[車は]あそこ」「行こう。寒いから窓を閉めて」ドライブが始まる。車内の二人の大写しの画面が続く。

 

「車でキスしたことは?」「ジョニー」しかし、不信感から何度もはねつけた前回と異なり、今度はリナも嬉しそうである。「何だ」「そういう冗談には慣れてないの」「真面目に聞いてる。経験あるか?」「ないわ」エイスガースは車を停めて言う。「してみたい?」「ええ」今度は拒む理由がない。彼女はうっとりとしている。「こんなに素直な女性は初めてだ」「普通は違う?」「拒むフリをする」「でもキスする」「普通はね」

 

「[キスの]お相手は」「何だい、おサルさん」「大勢いた?」「かなりの数だ。眠れない夜、羊の代りに数えたことがある。73人で眠ってしまった」「いつも、そう素直なの?」「そうでもない」「私がほかの女性と違うから?」「君には正直でいるのが効果的だと思ったからだ」ここで、リナは少し不安を覗かせながら言う。「軽率かしら。あなたが好き」エイスガースは何とも知れない変な顔をしながら言う。「軽率じゃないさ」

 

「行き先は?」「さあね、どこかだ。僕も君に恋をしたらしい。怖くなって距離を置いた。自分でも意外だ」「何もかも意外よ」「そうだな」「普通の出会いを想像してた。例えば園遊会とか。何度か会って、やがて。私の家だわ。寄らない?」「いや、早く舞踏会に戻ったほうがいい」車はリサの自宅前で停まる。彼は言う。「降りて」「どうしたの?」「分からない。おいで」執事が玄関の戸を開けて出迎える。「お車が見えました」

 

彼女は言う。「お酒を飲みに寄っただけ。書斎へ」彼も入る。「座ってて。飲み物を作る」「鉄の女[=意志の強い女性]だな」「どうして?」「冷静だ。僕は震えてる。気絶しないのか?」「自分でも驚いてる。初めて望みを自覚したからかも」二人は改めてキスをする。「誘惑してるの?」「そうさ」「夢のような時間だわ。生まれた家にあなたと2人。お気に入りの部屋よ」彼女は大の読書好きである。「あなたは?」「気に入った」

 

そのとき、壁に飾ってある軍服姿の厳めしい父親の肖像画が彼の目に入る。なんだか、彼を睨んでいるように見える。彼は将軍の肖像画のほうに歩み寄る。「将軍、ここで何を?それは言い過ぎでは?嫌われてる」彼は勝手に肖像画相手に語り始める。「そうね」「僕が信用できない。そうですね?」彼はまだ将軍と話している。「確かにね。手を引くべきです。不幸になるとお嬢さんに言って。警告するなら、最後のチャンスです」

 

彼は彼女に言う。「聞こえた?」「はっきりと」と彼女。「大げさじゃない。お父さんの言うとおりだ」今度は、彼女が肖像画の父親に言う。「愛しているの」「飛び上がった」「そうね」「じゃあ、これは?」そう言って、彼は2人寄り添いながら言う。「将軍、お嬢さんと結婚させてください。返事は?」そのとき、父親の逆鱗に触れたかのように、将軍の肖像画がガタンと音を立てて壁から外れかかる。印象に残る面白いシーンだ。

 

「お前との結婚は絶対に許さない」と言っているようで、本当に拒絶のサインに見えるから不思議である。とにかく、彼は慌てて手で将軍の肖像画を抑える。「参ったね。聞いただろ?」「そんなこと気にしない」「哀れな、おサルさんだ」2人はまたキスを交わす。「音楽が」「はっきり聞こえる」「踊ろう。でもその前に」彼がさらにキスを重ねようとすると、今度は、彼女が言う。「踊りましょう」彼らは音楽に合わせて踊り出す。

 

夜が明ける。2階から外出の装いで彼女が降りて来る。両親の居室を覗くと、母親は無言で刺繍の作業中である。父親はパイプをくゆらせながら黙って新聞を読んでいる。リナは母親に声をかける。「郵便局に行くわ」「マーシャルの店でグリーンの毛糸を買ってきて。これと同じ色よ。太陽の光で確かめてね」「ええ、お母さま」彼女は父親にも言葉をかける。「お父様は?」「何もない」最後に母親が言う。「お茶までに戻って」

 

場面は変わり、結婚登録所の看板の大写し。建物の窓からは、エイスガースとリナが指輪交換など婚姻の手続きを行っているのが見てとれる。明るい音楽が流れ、画面は、新婚旅行先と思われるナポリの描写に移る。リヴィエラ・ホテルのポスターの大写し。すぐに、モンテカルロの風景とモンテカルロ・パレスのポスターに変わる。さらに、水の都ベネチアの描写。お次はパリ。2人はヨーロッパ各地を周遊していたようだ。

 

トランクに貼るラヴェルの大写し。《エイスガース夫妻、イギリス》とある。どうやら、彼らは新婚旅行を終えて戻ってきたようだ。トランクの全体が映し出されると、これまでの滞在先を示す欧州各国のホテルのラヴェルが所狭しと貼られている。ポーターがその大型トランクを重そうに運んでいる。夫妻は不動産業者のベイリーと共に新居の2階から降りて来る。エイスガースはポーターに指示する。「踊り場に置いてくれ」

 

彼はリナに言う。「奥さん、気に入らなければ、文句はベイリーに。家も内装も一任した。どうだい?」「気に入ったわ。素敵よ」「よかった。僕がベイリーにやらせた」「そのとおりです」とベイリー。「[夫に対して]あなたって最高ね」「私はこれで失礼します」とベイリー。「請求書は?」「テーブルに置いてくれ」「恐れ入ります」ベイリーは請求書を置いて、最後に言う。「末永い幸せをお祈りいたします」「ありがとう」と彼女。

 

「夢みたいに豪華な家ね。お金は大丈夫なの?」そこへ、新しい家政婦が顔を出す。「名前は?」「エセルです」「お茶の用意を」「すぐに」家政婦が離れると、彼が言う。「どう思う?」「いい子ね。だけど」彼は彼女の言葉を遮って言う。「客間に行こう」彼は音楽をかける。「ここは?」2人は踊る態勢になる。「舞踏会」「ほかは?」「ベネチア、ナポリ、カプリ、モンテカルロにニース」「そして」「パリ」そこへ家政婦が戻る。

 

「電報です」「ありがとう、エセル」彼は電文を確認する。「悪い知らせ?」「千ポンドの催促さ。古い友人だが困ったものだ」「でも、どうして?」「僕が借りたからだろう」リナの顔が曇る。「何のために?」「妻と新婚旅行に行くためさ。楽しかっただろ?」妻は深刻な顔をする。「自分のお金は?」「ない」「でも私はてっきり」「君は心配しなくていい。僕が何とかするから」「分からないわ。あなた、お金がないの?」次回へ続く。

 

ワンコネタを挟もう。休み期間中は寒い日が多く、ワンコは、飼主の布団かコタツのなかに潜る機会が少なくなかった。就寝時は必要に応じて電気毛布を利用することもあるが、ワンコが潜り込むと、なかが暖かすぎないように、温度調整を低くしたり、切ったりする。コタツも熱くなりすぎないように、弱に設定する。ワンコの体温は人間よりも高めだからである。手足に触れて冷たくなければ、ワンコは快適なはずである。

 

電子楽譜ネタに移ろう。東海林太郎の「お柳恋しや」(1938)では、『歌謡曲大全集』の原譜の譜頭にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、原曲の演奏時間(3:50)に近づけると、4分の2拍子の曲で、74に落ち着いた。曲頭はニ長調だが、前奏が終る前に、ヘ長調へ3半音の転調が行われ、2番歌唱後の間奏(本来は三味線)ではニ長調に戻り、間奏が終る前に、またヘ長調に変わる。調の変化に注意を払う必要がある。

 

北見和夫の「就職列車」(1959)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にはモデラートの指示があったが、最終的には72に落ちついた。当初はスコアメーカーのモデラートの初期値84に設定していたが、原譜では歌唱部に16分音符の3連符が多用されており、このテンポだと小節回しが速すぎて歌唱にゆとりがなくなるのに気がついた。本曲は4分の2拍子で、これだと、民謡のように、72ぐらいが普通の速さに感じられる。

 

譜面には1番歌詞しか記載がなく、2番と3番歌詞を追加入力の際に、一部の長音の配当に苦しんだ。1番「来たでしょうか」(6拍)/2番「父さんと」(5拍)/3番「くれました」(5拍)において、1番はキ・タ・デ・エ・ショ・オ・オ・オ・オ・カ・アと16音が配当されており、最終的にはそれに合わせて、2番をト・オ・サ・ア・ン・ン・ン・ン・ン・ト・オ、3番をク・レ・マ・ア・シ・イ・イ・イ・イ・タ・アとした。

 

本間千代子の「純愛の白い砂」(1963)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭には「感情をこめて」の指示はあったが、他にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、一般的な演奏時間(3分前後)に合わせると、4分の4拍子の曲で、80に落ち着いた。無点8分音符の3連符が多用される譜面からも、ゆっくりめのリズムが想定された。2番歌唱末に付いたDSに対応するセーニョが見あたらず、適正と思われる位置に挿入した。

 

本間千代子の「はじめて愛する」(1964)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にはタンゴの指示があったが、他にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、聴いた感覚に頼り、4分の2拍子の曲で、66に調整した。32分音符の多用がタンゴの切れの良さを表現していたが、当初の72では、やや速い印象をもった。前奏部の主旋律と、歌唱部の主旋律の一部に、それぞれ、32分音符と8分音符のゴースト3連符が隠れていた。

 

西郷輝彦の「願い星叶い星」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、聴いた感覚に頼り、4分の4拍子の曲で、110に調整した。一部の譜面で音程や音構成に違和感があり原曲を参考にして修正した。「見つけた」/「輝く」の歌詞に8分音符の3連結符(D3D3F3)が当てられていたが、他の箇所に倣って、16分音符の2連結符+8分音符の2連結符(D3D3D3D3)に換えた。

 

橋幸夫の「殺陣師一代」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にはSlowlyの指示があり、スコアメーカーでは当初60に設定されたが、実際には、そのテンポだとかったるく感じられたので、聴いた感覚に頼り、4分の4拍子の曲で、80に調整した。電子楽譜化の過程で、原譜どおりだとDCが正しく機能せず、閉じる反復記号の位置までずらしてからファイルを作成し、後で手作業で4小節ほどの不要部をカットした。

 

和田弘とマヒナスターズの「北国は寒いだろう」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にはRubato(自由テンポ)の指示があり、そのままで原曲の演奏時間(3分前後)に合わせると、歌唱部がかったるく感じられたため、聴いた感覚に頼り、前奏部以外は100に調整した。前奏部は何パターンか試してから60に落とした。前奏部の2か所のフェルマータを残すことで、最終的な電子楽譜の演奏時間は2:45前後になった。

 

本曲では原譜に1番歌詞しか譜面記載がなく、2番と3番歌詞の入力に際して長音の音配当に苦慮した。問題になったのは、1番「今日も雪だろう」/2番「愁いに閉ざされ」/3番「雪を溶かして」と1番「いろり火で暖めよう」/2番「はるかなる君を偲べば」/3番「また君にも逢えるだろう」で、1番と3番の7拍・11拍相当に対して2番が1拍分多くなる。どこを長音にすべきか迷ったが、最終的には原曲を参考にした。

 

島和彦の「ガラスの接吻」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜からの電子楽譜化において、原譜どおりだと、セーニョがあるのにDSが見当たらなかったので、セーニョの位置は動かさず、適正と思われる位置にDSを挿入した。ところが、そのままでは、DSが正しく機能せず、閉じる反復記号の位置までずらしてから、ファイルを作成し、後で6小節ほどの不要部をカットした。Codaに対応するto Codaの位置も修正した。

 

三浦みちゆきとザ・プラネッツの「女の未練」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にはボレロの指示はあったが、他にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、原曲の確認もとれず、聴いた感覚に頼り、4分の4拍子の曲で、120に調整した。電子楽譜化において、原譜どおりだと、DCが正常に機能せず、閉じる反復記号の位置までずらしてからファイルを作成し、後で、手作業で、8小節ほどの不要部をカットした。

 

本曲では、1番歌詞しか譜面記載のない原譜で、音配当を考えて、別記載の歌詞から2番と3番を入力する際に、拍数が大きく合わない箇所があり、対応に苦しんだ。1番「どうなる私」(7拍)/2番「この身に沁みる」(7拍)/3番「あきらめぬ」(5拍)と、3番だけが2拍足りない。原曲の確認もとれなかったため、とりあえず、3番の「あきらめぬ」を「あきらめきれぬ」(7拍)の誤記だと解釈して、修正した。不亦楽乎。

 

水前寺清子の「いのち知らずにゃ敵はない」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、聴いた感覚に頼り、4分の4拍子メインの曲で、80に調整した。電子楽譜化の過程で、原譜どおりだと、DCが正しく機能しなかったため、閉じる反復記号の位置までずらしてからファイルを作成し、後で、手作業で、4小節ほどの不要部をカットした。電子楽譜の演奏時間は3:10前後になった。

 

大月みやこの「横堀川」(1967)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、聴いた感覚に頼り、4分の4拍子の曲で、とりあえず、84に調整した。5フラットの変ニ長調の曲だが、当初、電子楽譜の試演奏をしてみると、特に半音上げ下げの指定はないのに、半音のおかしい箇所がある。譜面をよく見ると、スコアメーカーの誤認識で4フラットの変イ長調の曲になっていた。不亦楽乎。

 

伊東きよ子の「花のマドンナ」(1968)では、『歌謡曲全集』の原譜の譜頭にテンポの目安を示す音楽記号の記載はなく、原曲の演奏時間(2:45前後)に近づけると、スコアメーカーの初期値である120のままになった。歌唱後半部の「幸せは遠く」以降の反復箇所については、そのままだと前半の歌詞が重なる部分があり、ファイルを作成後、手作業で余分な歌詞をカットした。最終的な電子楽譜の演奏時間は2:50前後になった。

 

青森県民謡の「弥三郎節」(1951)は、『日本民謡事典』(全音楽譜出版社2012)によれば、1808年、実際にあった嫁いびり事件を、嫁の立場からその悲しみを歌い上げた数え唄形式の民謡で、歌詞は15番まである。[中略]唄の節はテンポものんびりして物悲しかった。それを津軽民謡の大家の成田雲竹が節回しを一段と面白いものにし、高橋竹山に三下り調の派手な三味線の手を付けさせ、今日の形が生まれた」(同書87頁)。

 

 

例によって、歌三昧のアップ曲で、視聴数の多いものを3曲ほど貼り付けた。