[番外編]友人Yのお遍路日記その2 | 1・2・3・4・GOーーー☆

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ゼータクはできないけど、飲み会・旅行・ライブ等々 節約しつつ楽しんでます☆

イメージ 1今回の遍路は、前回のゴール地点であった室戸の第25番津照寺からの出発となる。前日から室戸に入り、吉田旅館という老舗遍路宿に泊った。夕食時に30歳前後の遍路さんがいた。室戸まで来ている遍路さんは、一人遠距離を歩いて来た迫力がある。1番から通し(1から88まで一気にまわる。)で巡礼しているという。野宿組ではなく毎夜宿に泊っているらしく何ともリッチな遍路さんだった。ちなみに通し遍路での宿代は、30万~40万はかかる。足を痛めてるらしく早朝から出発できないと言っていた。確かに前回の自分の足もひどいものだった。次の日、早朝から出発。向う先の第26番金剛頂寺と第27番神峯寺は、山頂にある寺で、海岸線をひたすら歩き、寺へ向かうために山道を登るというコースとなる。海岸線の静かな集落を抜け、やがて獣道が出てきた。獣道でも迷わない。ここが遍路の道だと印してくれる赤い布が枝に付けてあり、不安なカ所には必ずある。へんろみち保存協力会が維持管理をしている。とにかくその赤い布を頼りに進むことになる。金剛頂寺へ到着すると既にバス遍路さんがひしめいていた。必死に小一時間かけて歩かなくても今はバスで簡単に来れるとこなのである。


イメージ 2今回の遍路は一人ではない。大切なパートナーと一緒に歩く。体力にも差があるから無茶なペースはとれない。前回とは違った条件が加わる。第26番金剛頂寺の片隅では、おばちゃんたちが焼芋を作っていた。接待を受けた。「お遍路さん。ここの芋美味しいよ。」直径30cmほどの皿にゴロゴロと盛ってくれた。そんなに喰えない。寺を後にし、また赤い布目当てに山道を歩く。二人で歩くと会話をしているせいか、疲れが出ない。海を前にし獣道を下る。吉良川町に入る。ここは風雨から漆喰壁を守るための独特な瓦をもつ町家があり歴史的な町並みを残している。伝統建築物保存地区に指定されているだけに、綺麗に整備されていた。途中、おばさんに「お遍路さん。私の家の立派なお雛さんを観て。」立派な町家に連れ込まれてしまった。「京都と違って同じ町家でも汚いでしょ。使ってるからね。」そんなことはない。綺麗な京町家は、なぜだかわざとらしく。温かさがないとそんなことを答えていた。町並みセンターなど見学し思わぬ道草をしてしまった。急ぎ歩き出す。前方に高齢の遍路さんが歩いている。野宿組の歩き遍路だということを荷物の大きさから見てとれた。

イメージ 3高齢の歩き遍路さんのペースは足を労るようにゆっくり。追抜きざまに声をかけてみた。言葉少なげのお遍路さんで通し遍路で今日は24番寺から歩いているという。こちらより5km多いことになる。ガソリンスタンドのおばさんが突然走ってきて飴の接待を受けた。気軽に接待できる人達がいるのも四国の良い所であり、遍路文化が失われない理由の一つでもある。分れ道にさしかかる。海岸線の国道を進むルートか峠越えで距離が短いルート。それぞれ一長一短。景色の変化を求め峠を選んだ。高齢お遍路さんは国道を選んだようだ。また赤い布目当てに山道を歩く。途中「お遍路さん。足元に気をつけて歩いてや。」爺さんがスコップで雨で流れた山道を一人整地作業をしていた。「わしは、遍路したいが足が悪くて。だからせめてこの周辺の遍路道を歩き易くして奉公しとるつもりや。なかなか進まんけどな。遍路、頑張ってな。峠はすぐそこやきに。」峠を過ぎると柴犬の背中のようなフカフカ草原が拡がっていた。下りの山道には、所々に石が敷き詰めてあり歩き易くされていた。山道を出てからは、また海岸線を歩く。100m先に高齢お遍路さんが歩いていた。意外と早いペースに驚く。

イメージ 4また高齢の遍路さんに追付いた。足を傷めているので峠は避けたらしい。奈半利町という静かな町に到着。一日目のゴール地点である。本日宿泊する山本旅館を探す。こじんまりした旅館で、宿のお婆さんが出迎えてくれた。中は、襖だけで仕切られた部屋。「昔の宿は、こんなんよ。若い人は驚く方が多いです。今日は誰も泊らないのでゆっくりしてくださいな。」優しい面立の婆さんだった。他には爺さんだけで、実質、婆さんだけでやっているという感じだった。客も自分達だけだったので、婆さんも仕度も楽なのか色々話をしにきてくれた。満州で過ごしていた話。宿がいつも宴会場に使われた昔の話。なかなかプライベートが無いのも一緒に住んでいると思えば問題ない。一年程前に婆さんを亡くしているので懐しい感じもした。お風呂をゆっくり入っているうちに一室に食事の用意がされていた。そこにも婆さんは顔を出し、食材の話。志村動物園のパンくんの話。今日は7時からその番組があるので比較的急いで食べてあげる。食器も足の悪い婆さんが一人片付けるのだから手伝ってあげる。「あんたらも志村動物園観てみ。誰もおらんから音量気にせんとな。」よっぽど好きらしい。

次の日は、早朝から豪勢な朝食が待っていた。「たくさん食べて力付けて行かんと。山登れんで。」朝から秋刀魚が出てくる。確かに第27番神峯寺は、標高430mで「真っ縦の急坂」と言われ昔から難所の一つとなっている。話をしていて出発が大幅に遅れた。途中まで近道があるということで案内をしてもらい、奈半利町を後にした。向うは、神峯寺の麓にある茶屋。そこで荷物を預ってもらい、必要最小限の荷物で登ることを婆さんに教えてもらったからだった。そこには、陽気なおばさんがいて、「どうせ登るも降りるも同じ道や。荷物おいておき。」助かった。麓から寺のある場所が見えた。ゴールが遠くに見えるのはつらい。ゆっくり景色を楽しみながら歩いていると、中年お遍路さんが軽く会釈をしながら抜いていった。道は蛇行する車道とそれを真っ直ぐ突抜く獣道の旧遍路道がある。歩きだとこの両方の道を交互に歩くことになる。車道を歩くと排気ガスを激しく吐いてお遍路さんを乗せた車がどんどん上がっていく。なぜだか違う感じがした。遍路は寺を回るだけが重要なのではなく、寺と寺の間の道程で出会うものや感じる事が重要なのだと思うからだ。獣道に入るとホッとした。

イメージ 5想像していたよりは、楽に思えた道だった。荷物を預ってもらっていたからかもしれない。第27番神峯寺に到着。登り始めた店のあたりの海岸が望めた。意外と歩いていたのがわかる。会話をしながら歩くのは、疲れを紛わす効果がありそう。お参りをしていたら、室戸の宿で会った若い遍路さんに出会った。まだ足をかばった歩き方をしていた。昼食に山頂のドライブインに入る。メニューがない。「うどんしかないよ。」奥で店主が言った。とりあえずうどんにした。壁には菅直人のサインが書いてある。この人一応歩いたみたいだなぁ。しばらくすると茄子にトマトに白菜、ホウレン草ほか野菜色々入った見たこともないうどんが出てきた。味は、それぞれ野菜の持味を出している。が。出汁に浸かるトマトにはびっくり。帰りはまた同じ道を下る。下る方が膝に負担をかけ潰してしまうから注意。途中、登ってくるお遍路さんに出会う。「お疲れ様でした。」と声をかけられる。「頑張ってください。」と返す。気持ちがいい挨拶。へたりこんでる遍路さんもいた。「もう、あと少しですよ。」と言うと手を少し動かし笑顔で答えてくれた。麓の店に帰ってきた。

イメージ 6「遅かったね。長居したね。」おばさんが近所のおじさんとの話を切り上げて出てきた。昼御飯に山頂のうどんを食べてたからかなと言うと、近所のおじさんも参加。「あのうどん食べたか?不評でね。まずいってお遍路さん怒るんだよね。まずかったろ?」「腹が減ってたからまずいとは思わなかったなぁ」と答える。お遍路が怒るとはどう言うことだろうか。遍路をしていればそんな気持ちにはならないはず。味覚だけではなく心でも味わうものだから。この店でも話をして遅くなった。ほぼ一方的におばさんの息子の話。ようやく店を後にした。かなりロスしてしまった。目的地の安芸には着けそうにないと思った。でも、何もノルマなんて遍路にはない。日常は速さや能率だけの世界だが、遍路にはそれは全く意味が無い。正反対の世界。人間は、いつからか速さを求め駆け出し、これからも何もかもが人間の限界を超えた速さがこの世を取巻いていく。そんな中で、ぽつんと速さを求めない世界がある。なるほど遍路は心の故郷だな。と納得していながら、安芸より一つ手前の駅に向け、長い防波堤歩道を歩く。携帯で電車の時刻表を見て急いでいる。まだまだ修行が足りない。