明治維新の立役者、西郷隆盛を生んだ鹿児島県は、全国2位の源泉数を誇る「温泉県」でもある。

 

薩摩半島の南端部、砂むしで有名な指宿温泉の西にある鰻温泉もその一つ。

 

小さな宿が数軒と共同湯の区営鰻温泉、そのほか民家が何件か集まるだけでの素朴な山里だが、江戸時代からの歴史を持つ温泉地。

 

集落の南西に広がる鰻池は5千年以前も前に形成されたといわれる火山湖で、周囲は約4キロ、最新部は約60メートル。

 

「かって大ウナギが現れた」という伝説からその名が付いたようだ。

 

征韓論を巡る新政府内での論争に敗れ、鹿児島に戻った西郷さんは、その後、13頭の犬を連れて鰻温泉を訪れ一カ月ほど逗留したそうだ。

 

協同湯はごくシンプルな造りの男女別内湯で、タイル製の楕円形の湯船が浴室の真ん中に鎮座。

 

源泉は80°Cを超える高温のため加水されているようだ。

 

湯はドバドバと投入され、湯船の縁から惜しげもなく掛け流されている。

 

波乱万丈の人生を歩んだ西郷さんにとっても、世俗から離れたのどかな温泉地で、いい湯に浸かり、愛犬たちに囲まれてのんびりと過ごした鰻温泉での日々は安息のひと時だったに違いない。