「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」。
小説家、劇作家で俳人でもあった久保田万太郎の句。
湯豆腐を詠んでこれほど知られた俳句はないとしわれる。
豆腐は、中国・唐時代の8.9世紀に北方遊牧民の
乳腐(にゅうふ)からヒントを得て作られたものらしい。
乳腐は、牛乳、馬乳などを酸や酵素で凝固させたもので、
ヨーグルトやチーズとなる。
その乳腐の原料として大豆の煮汁を代用したものが豆腐。
「腐」は「くさる」ではなく、「ブルンブルンするもの」の意味だそうだ。
日本伝来の時期は平安末頃。
豆腐は植物からタンパク質が得られる画期的な発明で、
精進料理などには必須の食品となった。
日本の豆腐は、湯豆腐や冷っ奴の食感を楽しむために
柔らかいのが特徴。
中国、朝鮮半島の豆腐は固いそうだ。
湯豆腐は鍋の中の豆腐が動き出して浮き上がるまでを
煮加減とする。
万太郎の「あはれ火かげん うきかげん」は、その煮加減の
ことに違いない。