『シルク・ドゥ・ソレイユ3D』
エリカ「7つのショーの経験はアメイジング」
フランス語で「太陽のサーカス」を意味する「シルク・ドゥ・ソレイユ」。団員数5000人、出身国は世界50カ国以上で、世界の体験者1億人、日本の体験者1200万人、現在も6つの大陸の300都市2000カ所以上で公演が行われているという大サーカスだ。そんなシルク・ドゥ・ソレイユの世界をドキュメンタリーではなく、ラブストーリーで、しかも3Dで楽しむことができる映画『シルク・ドゥ・ソレイユ3D
彼方からの物語』が12月21日の全米公開を前に、世界に先駆け日本で11月9日に公開される。今年はシルク・ドゥ・ソレイユの日本公演20周年記念の年にあたり、第25回東京国際映画祭の公式オープニング作品としても上映された。
製作総指揮は3D映画『アバター』で、自身が監督した『タイタニック』の世界興行収入を抜き、歴代1位の大ヒットに導いたジェームズ・キャメロン。監督・脚本を『シュレック』『ナルニア国物語』のアンドリュー・アダムソンが務める。サーカスで出会った男女がお互いを探し求め、シルク・ドゥ・ソレイユの不思議な世界を旅するラブストーリーとして描かれた。シルク・ドゥ・ソレイユで10年間活躍したエリカ・キャスリーン・リンツと、エアリアル・ストラップ(ロープを使った空中演技)・アーティストのイゴール・ザリポフが互いに惹かれ合う男女を演じる。ショーと同じく台詞はないが、音楽とパフォーマーたちの素晴らしい表現力に引き込まれる。
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エリカはコロラドで生まれ、体操を始めたのは3歳の頃から。8歳の時にオペラに初出演し、高校を卒業した翌朝にラスベガスに。シルクのオーディションを受け、2001年12月31日に19歳でデビューを果たす。そして2011年12月31日の「KA(カー)」が最後のパフォーマンスと、きっちり10年間をシルクで過ごした。「エアリアル・ストラップのデュエットをやっているので、本作のテーマにぴったりはまったというわけです」とエリカ。演じたミアというキャラクターについて、「映画のタペストリーをつなぐ糸のような存在」と説明する。
エリカが本作の映画化を初めて知ったのは「オーディションを受ける気持ちはありますか?」という電話だった。映画の話を聞いて「すごく嬉しかった」という。「ライブの演技は、その瞬間にしか存在しない、瞬間でしか観てもらえません。観客の皆さんが持って帰るのは感情だったり、観た経験だったり、形のないものです。今までシルクとして形作ってきたステージを、アンドリューとキャメロンが関わり、それも3Dで撮ることで、最高の形で永遠に残ることになりました。映画になったことで、ラスベガスまで来られない世界中の人にも観ていただけます。また私が80歳になったときに、私の孫にこの映画を見せたいですね。それを考えたらワクワクします」。映画になったことで、より多くの人にシルク・ドゥ・ソレイユの素晴らしさを伝えることができるようになったと喜ぶ。
本作はラスベガスで行われているシルク・ドゥ・ソレイユの7つのショー、「O(オー)」、「KA(カー)」、「ミスティア」、「ビバ・エルビス」、「クリス・エンジェル
ビリーブ」、「ズーマニティ」、「ザ・ビートルズ・ラブ」の多種多様な要素を織り交ぜて作られた。「ショーからショーへと移り、それぞれが毎晩行っている公演に参加し、それぞれの文化といったようなものを感じ取る機会というのは、今まで誰にも与えられたことのないもの」と、エリカは7つのショーに関われた経験について「アメイジング(amazing)」と喜びを語る。
「シルク・ドゥ・ソレイユ自体が独自の文化をすでに持っています。世界中のいろいろな文化が合わさり、シルクの文化を作っています。だから1つの国みたいですね。それぞれのショーは国の中にある都市のようなもの。やり方は似ているかもしれないけれど、それぞれのショーのスタイルは異なっています。ショーはそれぞれが一つの家族のようなもので、醸し出す雰囲気も違っていて、独自の人格、独自のユーモアのセンスを持っています。その全てを体験できたことは本当に素晴らしいこと。それも、ショーを訪問して外から見ているだけではなく、それぞれのショーの中で自分が演じることができるという形で関わることができたわけです。これは本当に特別なことです」。エリカの経験もさることながら、観客にとっても7つのショーを一遍に楽しめるのは嬉しい。
そして、自分が所属していた「カー」は「家」だと説明する。「カーに戻ると本当に家族が集まったような感じ。いろいろなショーに行けば、いろいろ違うこともします。カーに戻ると私が一番楽な空間にいるという感じがします。この映画を体験することで、カーの特別さが、さらに感じられました。シルクに10年もいると、素晴らしいことなのに普通に感じてしまうところがあったのかもしれません。まだ編集される前でしたが、映画になる前の撮ったばかりの映像を見ただけで、シルクがどんなに素晴らしいのか、どんなに凄いのか、もう一度実感できました」。
キャメロンは「我々の目標は、シルク・ドゥ・ソレイユの身体的芸術、つまり彼らのパフォーマンスのデザインや美しさや優美さを称賛することだった」、「この作品で大事なのはエフェクトではなく、純然たる人間の肉体の才能とその驚異的な能力を見せることだった」などとコメントしているが、まさに本作ではパフォーマーたちの存在そのものに圧倒される。エリカも空中バレエを披露し、その素晴らしい肉体と才能で魅了する。
「私は完璧な例ではありません。私は太りそうな食べ物が好きですし、ビールも好き(笑)。ジムに行くのは好きではありません。でも、いつもトレーニングはしています。新しいことをいつも習いたいというモチベーションは欠かしません。痛かったり、すごい汗をかいたり、ケガをする恐れのあることでも厭わない。『絶対に私はこれをやるぞ』と自分がワクワクしている気持ちの時は、そんなことは大したことではありません。常に新しいことにチャレンジして、学ぼうという気持ちは絶対忘れないですね」。向上心が素晴らしいパフォーマンスを支えているようだ。
エリカは、その人が高名なキャメロンだとは知らずに会った印象を「青いシャツを着た、とてもフレンドリーな人だと思った」と話す。そんなエリカ本人もこちらの質問に対して「グッド・クエスチョン!」と返してくれるなど、とても率直でフレンドリーな人だった。日本では早速、歌舞伎を観たそうで、「素晴らしかった。西洋のもののどれとも似ていない。ものすごい細かく全てがきちんと決まっていて、まったく無駄な動きがない。すべての動きに意味があることに驚きました。何も動いていないこと自体に、ものすごく力があるというのは西洋の人にはなかなか理解し難いことです」と、パフォーマー目線で分析していた。
キャメロンは撮影に入ると、毎日誰よりも早く現場に来て最後に帰り、イスを動かす必要があったり、ケーブルを引っ張ったりする必要があれば、最初に走っていってやっていたという。そしてキャメロンもアダムソン監督も映画に参加している人にベストを尽くすことを求めたそうだ。その結果、観ている人がショーの中にいるような感覚を楽しめる本作が出来上がった。シルクに10年いたエリカでさえも「驚いたことがたくさんあった」と言う。シルクを観たことがない人はもちろん、観たことがある人も多くの点で楽しみが見出せる作品だ。(2012年11月9日・A)
『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』は2012年11月9日(金)、TOHOシネマズ 有楽座他、全国公開


