昔の料理レシピ備忘録、今回は 「いりだし蒟蒻」。
里芋科の植物である蒟蒻芋のルーツはインドだとかベトナムの辺りだとか言われるが、日本でもすでに飛鳥時代には食べられていたとか、いやもっと以前からだとかという説もあるようで何とも驚きだ。
何しろ蒟蒻芋にはエグ味の強いシュウ酸カルシウムが含まれていて、そのままでは食べられない。石灰などを使って、大袈裟に言えば「化学反応」させて食用にしているのだ。
我が家の食卓にたびたび登場する酒の肴が「いりだし蒟蒻」だ。
誰が考え出したかなどという料理ではなく、おそらく自然発生的にどこでも作られていた料理だろうと想像する。
江戸時代の料理本「素人包丁」(文化2年 1805年刊)にも「蒟蒻百珍」(弘化3年 1846年刊)にもこの「いりだし蒟蒻」という名の料理は見られる。
蒟蒻は、手でちぎったり、隠し包丁を入れて味を染みやすくするのが通常で、この「いりだし蒟蒻」や「炒め蒟蒻」などと呼ばれる料理もそのようなやり方をするものが多い。
ただ「蒟蒻百珍」の場合は「こんにゃくうす平目につくり」とあるので、薄く刺身のように切ったものらしい。
実は以前から作っている我が家の「いりだし蒟蒻」はこの「蒟蒻百珍」のものに近い。
これは、残念ながらいまはなくなってしまった門前仲町の名居酒屋「浅七」の一品をまねたものだ。
大根おろしを添えるところも「蒟蒻百珍」の表現にあるとおりなので、案外「浅七」はこの本を参考にしたのかもしれない。
現代に生きる我々にとっては決して贅沢な料理ではないが丁寧に作れば、滋味溢れる最高の肴となる一品だ。
「浅七」に関する過去記事は
https://ameblo.jp/qpkokko71922/entry-10976169210.html
https://ameblo.jp/qpkokko71922/entry-11070337301.html
https://ameblo.jp/qpkokko71922/entry-11400130654.html
<いりだし蒟蒻の手順>
① 蒟蒻を塩でもんでしばらく置く。
② 水洗いをして、塩を入れた湯であくを取りながらしっかりゆがく。
③ 蒟蒻を刺身くらいの厚さに切り、油を引いた鍋で両面を焼いて、土佐醤油と香りづけの胡麻油を入れ、煎り付ける。
おろし大根と一味唐辛子を添える。おろし大根を蒟蒻で巻き、一味唐辛子をつけて食べる。このおろし大根がアクセントになる。
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