我が家で作った昔の料理の中から「汁物」の第6弾も郷土料理。
「そば米雑炊(そば米汁)」。
この料理は徳島県の祖谷地方の郷土料理だが、いまでは徳島県全域でよく知られた料理だ。
「そば米」というのはそばの実の皮を除いて熱処理したもの。
玄そばを塩ゆでして黒い殻を除き乾燥させたものと考えればよいだろう。
いまは健康効果への期待で注目されているためデパートやスーパーでも手に入れやすくなっている。
半世紀近く前、私が徳島に赴任していた時分に、徳島在住の料理研究家の鈴木竹子さんからこの「そば米雑炊」の存在を教えていただいた。
最近こそほとんど作らなくなってしまったが、以前は、我が家では当たり前に食卓に登場する料理だった。
山深く米の作れない祖谷地方でそばは大切な作物だ。そのそばの実を使って作った汁物「そば米雑炊(そば米汁)」は特別な料理であったろう。
源平合戦に敗れて祖谷地方に逃げてきた平家の落人達が、都を偲んで作った正月料理が起源だとされている。
かつては山でとれる野菜や山菜、それに山鳥などを具材として入れていたのだろうと想像するが、いまはそば米、鶏肉、大根、人参、椎茸、焼き竹輪、三つ葉などが一般的な具材。家によっては豆腐、油揚げ、蒲鉾、牛蒡なども使うかもしれない。
だしは昆布や干し椎茸の戻し汁といったところが普通だろう。最近は鶏がらスープの素なども加えているようだ。
さて我が家の「そば米雑炊」は、関東風の「お雑煮」の簡略版。餅の代わりにそば米を入れたという体の汁物だ。
違いといえば、蒲鉾や鳴門巻きに代わりに焼き竹輪、小松菜の代わりに三つ葉を散らすというぐらいのものか。醤油は薄口ではなく濃口で。
さて、本日、久しぶりに作る。
準主役とも言える焼き竹輪は、徳島時代は小松島名物の「竹ちくわ」を使っていたが、にわかには手に入らないのできょうのところは諦める。
いつもは吸い物感覚なのでもっと具を少なくしているのだが、見栄えがしないので本日は少し多めに。
「そば米雑炊」
<材料> 2人前
鶏もも肉 50g
そば米 大さじ1と1/2
椎茸 1枚
人参 薄切り3枚
焼き竹輪(小ぶりのもの) 1本
三つ葉
だし(鰹節と昆布の一番だし) 350cc
酒 小さじ2
濃口醤油 小さじ1/2
塩 少々(小さじ1/4)
<作り方>
① そば米はざるに入れて洗い、水から軟らかくなるまでゆで(実の硬さによってはゆでてから30分ほどつけておく)、更に水で洗ってぬめりを取りさるにあげる。
② 鶏肉は好みの大きさ(我が家は2㎝角)に切る
③ 椎茸は薄切り、人参は薄切り扇形に切り、焼き竹輪は輪切り、三つ葉はざく切りにする。
④ 鍋にだしと酒、醤油を入れ火にかける。まず人参を加え、煮立ったら鶏肉、椎茸の順に入れてあくを取りながら煮る。
⑤ 竹輪、そば米を加えて塩で味を調え、火を止める。
⑥ 器に盛って三つ葉を散らす。
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