10月に入り、Aちゃんが出産の為に実家に戻ってきた。
9月下旬の連休に行った沖縄旅行のお土産を渡しに会社が終わった後にお邪魔。
11月の始めが予定日だったのでまだ少し余裕はありそうだったが、とりあえず元気そうな顔を見て安心する。
実家に戻ってからは随分精神的にも安定したようだったので旦那さんも喜んでいた。もちろん、あたしを含め友達一同も。
それが、様子が変わりだしたのは10月下旬。
Aちゃん夫婦やオンラインゲームをしている友人達の間でその頃mixiが流行りだした。(流行りだしたというか、イモヅル方式で次々とmixiに引き込んだというのが正しいのだけど。)
Aちゃんはそこで日記に出産までの検診の結果などを報告しはじめた。
まぁ、それを見れば当然友達はコメントを着けるし、オンラインゲーム中にもそんな話しをして、『楽しみだねー』と言ったりしていた。
それが、ふと気付くと旦那さんが毎週決まった時間くらいに「電話」でゲームを中座していることをよく見かけるようになった。
ある日、何人かでチャットで話している途中で旦那さんが中座。かれこれ1時間くらい電話は続いた。相手はもちろん実家に戻っているAちゃん。
それが毎日毎日になり、ある日旦那さんと2人だけの時に再び悪夢が繰り返されることになった。
旦那さんの愚痴がはじまったのである。
別に愚痴を聞くのはいい。
予定日までは検診で医者に「今週くらいにはもう生まれるよ」と言われてそれが外れても、イマイチその病院の医者に対する信頼感が薄かったAちゃんは「またはずれたー」となどと軽口を叩く余裕もあったのだが、実家に戻る前にかかっていた病院で当初言われていた予定日が近づいたころからどんどん鬱状態が酷くなっていったらしい。
その頃にはあたしも友達も薄々Aちゃんの状態には気付いていたので、Aちゃんと話すときは私達の方からは出産のことを話題に出さないようにすることにしていた。もちろん、Aちゃんから話す時は別として。
それがある日。
「毎日電話の向こうで泣いてるんだよね」
と、旦那さんは話し出した。そして、
「今日なんて『もう、子供要らない。お腹の中で死んじゃえばいいのに』っていいだしてさぁ」
と衝撃発言をかましてくれた。
しかし、未婚で出産経験もないあたしにそんなことを言われてもいいアドバイスが出来るはずもない。その上、旦那さんも自分の実家で生活していたのだが、両親に出産よりも仕事を見つけるほうが重要だと言われると文句たらたら。
「俺達は出産の方が大切だって思ってるのに。俺達夫婦の間にある感情とか気持ちなんて両親に判るわけがないのにうるさいんだよ」
と。
え?ちょっと待ってよ!
と言いかけた言葉をあたしは無理やり飲み込んだ。
確かに、出産は重要だよ。初産だしね。
でも、旦那さんのご両親は出産がどうでもいいと言ったわけではなく、生まれてくる赤ん坊や奥さんのためにも、一家の主である旦那さんが早く仕事について生活を安定させないと……という親心で言ったんじゃないのそれ?
それをあなたは『うるさい』で片付けちゃうの?
第一、実の親だから口に出してくれたんで、きっとAちゃんのご両親だって相当不安に思っているだろうけど遠慮して口にしないだけなんだよ!
そう言いたかった。でも言えなかった。
やっぱり若いから……という理由で自分を納得させ、胸の中にあるもやもやしたものを見ないように心に蓋をすることにした。
だが、その翌日、別の友達とチャットで話しているとAちゃんの旦那さんがログインしてきた。
いつものように挨拶を交わして、別の話を続けていた友達とあたしに、旦那さんは、
「2人にお願いがあるんだけど」
と、切り出した。
「なに?」
と、聞くと、
「もう妻にこれ以上出産の話しとかしないで欲しいんだ」
と言われた。
表向きはもちろん、
「うんうん。わかったよー」
と、答えたが、このときあたしはもう駄目だと思った。
もちろん旦那さんとしてはあたしたちを信用していないとかそんなつもりは全くなく、ナーバスになっているAちゃんのためを思ってのお願いだったのだろうが。
でも、正直あたしは傷ついた。
散々、口や相談を聞き(本来なら妻の友人に話すべきではないであろう奥さんへの愚痴も聞いた)、そのため大事な友達である奥さんに嫉妬までされもした。
しかし、それもこれも全てAちゃんを思ってのことだったのだが、それは旦那さんには全く伝わっていなかったらしい。
やはり、あまり馴れ合うのも良くないのだろうと思い、しばらく旦那さんと顔を合わせそうなオンラインゲームもしないし、旦那さんにもなるべく近づかないようにすることにした。
でも、それは上辺の理由。
本当は旦那さんに近寄りたくなかっただけだ。
まぁ、結果、2週間遅れでAちゃんは無事出産。鬱状態も治り、あとは旦那さんの就職を待つのみである。
なので、最近はまたゲームにも復帰した。
すると娘はやっぱり可愛いらしく、しょっちゅう親ばか全開ののろけを聞かされる。
でもやっぱり、あたしはもう、この旦那さんを信用は出来ないだろう。
少なくとも、信用していた人に傷つけられたことはそう簡単に忘れることは出来ない。
傷つけた本人が全く気付いていないとしても。
正直、旦那さんに対する嫌悪感は今でも心の中にある
ごめんねAちゃん。
こんなことを思ってしまうあたしのほうがおかしいのだろうか?