盛夏の刻 60 | くぅの気まぐれ日記

くぅの気まぐれ日記

ほぼ雄ちゃんのことと、たまに仕事のことを気まぐれに書いていきます。

雄輔は、気になるのか、私の短くなった髪をやたら掻き回す。




『ねぇ。変?』


『んなことねぇよ。
なんか新鮮だから。
それより、そのアシスタントの話し、どうなったんだ?』


『うん。それがね!』




私は、レストランもちゃんと辞められて、早速篠原さんのスタジオで働くことになったことを説明した。


『なんか、めちゃくちゃ大変そうだけど、なんかワクワクする。』


『なぁ。
その篠原さんって、どういう人なんだ?』


『ん?だから、昔からすごく好きだったカメラマンさんなんだけど・・』


『そういうんじゃなくて、いくつくらいの人?』


『う~ん。40歳くらいかなぁ・・・』


『結婚してんのか?』


『どうだろ・・・
聞いたことないけど、してるんじゃない?
なんで?』


『いや・・・
だって、可南ちゃん、篠原さんとずっと二人きりで仕事するわけだろ?
やっぱなんか気になるじゃん。』


『ふふふ・・・』




私は、なんかうれしくなった。


そういえば、モデルになる時もそうだった。




雄輔って、意外と心配性でヤキモチやきだ。




自分はさ、どんどんいろんなこと、挑戦したりするし


女友達とかとだって、平気で飲んだりしてるくせに。




そんな雄輔に、モヤモヤする時もたくさんあるけど、こうやって私のことを心配したりしてくれる雄輔を見てると、なんだかうれしい。


雄輔自身が、そうやって私に対して心配性だったり、ヤキモチ妬きだったりしてるのを気づいてない感じがするのも、なんだかかわいかった。





次の日から、私は篠原さんのスタジオに出勤した。




私の仕事は、スタジオの掃除。
それから、膨大な写真の整理のファイリングから始まった。


篠原さんが、写真の現像とかチェックとかしてる間は、私はもっぱら写真を時系列や種類に分けていく。




篠原さんは、撮影の時は人当たりがいいけど、やっぱり職人気質というか、スタジオにいる時は、なんとなく近寄り難いものがある。


分類に迷ったりした時に確認したくても、声をかけるのを躊躇する時がある。




それに、前のアシスタントが辞めてからの短い期間で、これだけの数だ。


先が思いやられた。




篠原さんは、結構アナログにこだわりがあって、デジタル時代の今でも、基本的にアナログカメラで撮影してた。




もちろん、撮影にもついて行く。




準備する機材、セッティングの仕方


もう、準備の時点で覚えることだらけ・・・




撮影中も、スムーズにいくように、たくさんやることあるし、その間に篠原さんのタイミング見て、フィルムチェンジもしないとならない。


これが、ほんとに難しい・・・




少し前まで、私はあのライトのあたる向こう側にいたのに


今は、汗だくで裏側で駆けずり回っている。




それにまったく後悔がない自分に、少し驚いた。




ほんとに毎日ヘトヘトだったけど、楽しくて仕方ない。




撮影はスタジオならまだいいけど、野外とかだとめちゃめちゃ朝が早い。




まぁ、基本的に役者も朝が早い。




だから、雄輔と会う時間が極端に減ったりすることはなかった。




雄輔も、ほんとに一歩づつだけど、台詞の多い役をとったり、端役っていっていいくらいの脇役だけど、連ドラの仕事があったり、映画があったりと、途切れることなく仕事があった。




雄輔はそうやって仕事をする度に、どんどん人脈を広げて、いろんな人にかわいがってもらってる。


だから、食事や飲みに誘われることも結構あって、なんだかんだもう4年近く付き合ってるけど、あんまりお互いに馴れ合いになることもなくって、ある程度の距離感があった。




雄輔は、私といる時はいつも優しいし、楽しそうにしてる。


私も楽しいけど、やっぱり物足りなく感じることもある。




その上、雄輔は昔の友達ともずっと仲がいいから、とにかく付き合いの輪は増えていく一方だった。




私との付き合いは、事務所も知ってるし、雄輔自身がワイドショーに追われるとこまで名前が売れてないから、隠すわけでもないし、私も雄輔の友達とも一緒に遊んだりはしてた。