常陸宮の姫とのいきさつが描かれた「末摘花」は、
源氏18歳の1年間を描いたエピソード。
この時期はまた、物語前半のヤマ場ともいうべき
「若紫」の帖とほぼ重なります。
とりわけ2月半ば、初めて常陸宮邸でも姫君の琴を聴いた後、
恋文への返事もないまま過ぎた春から夏にかけては、
病気平癒のために出向いた北山で
生涯の伴侶となる幼い紫の上を見いだし、
同時に義母である藤壺と再度の密会が行われた時期。
こうした重要な事件にとりまぎれ、
半年あまりも途絶えていた姫君への想いが
復活するのは8月も20日を過ぎてから、
ちょうど1年前に死んだ夕顔の面影を求めるように、
源氏は常陸宮の邸を訪れたようです![]()
初心で奥手で従順でこれぞ姫君の理想像?
大輔や乳母子である侍従の言葉にのせられて、
何の疑いもなく源氏を邸に上げてしまった常陸宮の姫君。
源氏の求愛の言葉も、ろくに応じられません。
侍従に返事してもらい、
その挙句半ば強引に契りを結ぶ段になっても、
驚いたり、抵抗したりする様子さえ見せず…
思うに、姫君はあまりに初心で奥手で、
男性を邸内に入れることが
そうした結果を招くことすら知らなかったのでしょう。
とはいえ、こうした世間知らずで奥ゆかしい態度こそ、
宮家ならではの鷹揚な品性、理想的な姫君の姿だったのも事実。
もちろんプレイボーイの源氏が、
それに満足したかどうかは別問題ですが…![]()
頼りは乳母子、侍従の君 姫に代わって大活躍
訪ねた源氏の呼びかけにも答えず、
歌の返事さえおぼつかない末摘花の姫。
見かねて姫君の口元に顔を寄せ、
主人に代わって返歌したのが、
乳母子である侍従の君でした。
原作では「はねっかえりの若女房」などと言われていますが、
それもこれも姫君と宮家の経済状態を考え、
何とか源氏の気を惹こうという懸命の思いから。
侍従とは天皇の側近く仕える役職で、
彼女の場合は家族にこれを務めた男性がいたのでしょう。
源氏との逢瀬の翌日、姫君に対し後朝の文への返事を
かいがいしく教えるあたり、やはり血筋は争えません![]()
乳母子としてよく仕えた侍従の君だったが、
後には姫君の叔母にあたる人のすすめで、
九州へ下ることになる。
共に行こうという言葉にも、
源氏をひたすら待つ末摘花は首を縦に振らず、
かもじと薫衣香を形見に与えるのだった![]()
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