2018年 アメリカ

 

1980年代のロサンゼルスで裕福な若者たちのグループが犯した詐欺事件を基にした映画。

根はまじめだが庶民育ちであることにルサンチマンを抱く投資コンサルタント、ジョー(アンセル・エルゴート)

口の上手さで世渡りしてきたテニスプレイヤー、ディーン(タロン・エジャートン)

クラブの構成員は学生時代にジョーをのけ者にしていた裕福な親のすねかじりたち

芸術家として成功を夢見るシドニー。演じるエマ・ロバーツのお父さんはエリック・ロバーツ。あの濃い悪役顔からよくこんなクールな美女が生まれたものだ。

表向きは有名投資家、その実、詐欺などで訴えられている男。ケビン・スペイシーの胡散臭さがぴったりだ。

アンディ・ウォーホルがチラッと出てくるが、ケイリー・エルウィスがこんな所にも出演していた。

男手一つでジョーを育てた苦労人のお父さん。演じているのは、かつてテレビドラマでジョーを演じたそうだ。

 

詐欺の手法はポンジ・スキームという昔からある手。オーシャンズ11のように引き付けて最後にスカッとさせるような展開は無い。実話と知らず、きらびやかなシーンが続くので、どこかでどんでん返しがあるものだと期待していた。ケビン・スペイシーをだまくらかして事件解決とか、ケビン・スペイシーとドアマンが共謀して殺人を演じていたとか。

 

ディーンはやはり腹黒で、ジョーは実際の罪に比して重い刑を科せられたという解釈になっているが、真実はどうなんだろう。アンセル・エルゴートの無垢な見た目でジョーは善人に見える。投資コンサルタントとテニスプレイヤーでは頭の切れが違うように思ってしまう。

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

バイクごと崖からダイブする映像のメイキングがあった。10分ほどの映像にトム・クルーズとスタッフたちの職人魂が詰まっている。入念な準備と専門家の助けがあって危険なシーンが出来上がった。しかしトム・クルーズは映画ファンがハラハラドキドキして楽しんでくれれば現場で死ぬのは本望だと思っているのではないだろうか。

 

M:Iシリーズでは毎回イーサンが死んでいるような印象を受ける。今作は完結していないせいか死ぬことはなかったが、とことん楽しませてくれる。親日家として知られるトム・クルーズ。ルパン三世好きに違いないというシーンがあった。思い返せば彼がルパン三世になりたいと思っていそうなシーンはこれまでにも多々あった。また題材は暴走するAI、見えない相手との戦争、敵味方が曖昧な状態という、現実に既にあるか近く起こりそうなことで一抹の恐怖を感じさせる。

 

M:I第1作ではジャン・レノの存在感に嫉妬し、自分が目立つようにカメラのアングルを変えたという。ハリウッドでずっとトップランナーでいるには、自分が一番であり唯一であることを強く主張し続けなければならないのだろう。

アカデミー賞はノミネート止まりで受賞無し。却って天晴だ。年齢に抗うように物凄いアクションに挑み続けるのだから、社会的意義だとかメッセージ性などを重視するアカデミー賞から離れるばかりだが、最近のアカデミー賞はポリコレ臭がひどい。作家に本屋大賞があるように映画館賞があればと思う。興収成績で証明されてはいるが映画ファン一同からトロフィーを差し上げたい。

それに世界のトップを走るには演技力・実力はあって当たり前。初めは典型的米国俳優といった彼にさほど興味を持てなかったが「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」で役や作品の肝を見事に把握し表現しているのに驚いた。

 

蛇足だがデンリンガーという端役について。米国家情報長官という立派な肩書ながら小者らしさが漂う。エンドロールにケイリー・エルウィスの名を見つけて記憶が結びついた。「アナザー・カントリー」の美少年が俗物然としていたのに軽く驚いたが、彼の演技力なのか美少年も年を取れば、なのか。金髪碧眼のいかにも王子様とかイギリス訛りの役者は悪役、憎まれ役に回される。それでもコンスタントにテレビや映画に出演し続け作家でもあるらしいから、ちゃんと活躍しているのはうれしい。

2018年 アメリカ

 

昼と夜、12時間で人格が切り替わるように設定された二重人格の青年を主人公にしたSF、ミステリー、ヒューマンドラマ。

話は几帳面で真面目なジョナサンの視点で進み、家も職場もシンプルで清潔だ。時折見える通勤時の電車内や、夜を受け持つジョンの活動範囲に都会の雑然とした様子が垣間見える。その雑多さが段々とジョナサンの生活に浸食していく。

 

ジョンが狡猾にジョナサンを消えるよう仕向けたとみる人、ジョナサンが自ら主人格に譲ったという人、ジョナサンに人格入替装置を埋め込んだ博士が怪しいという人、様々な象徴の物語と受け取る人。ネタバレを見ると色んな解釈があっておもしろい。

私はただ素直に、自分を律する人は却って精神的に弱かったりするな、奔放に感情を表せるジョンがジョナサンを凌駕するのは自然の成り行き、ジョナサンは弱っていって死期を悟ってジョンに別れを告げたのだ、と思っていた。

また第三の人格が消されてジョナサンとジョンが残ったことが途中で分かる。この第三の人格が実は消えておらず、ジョナサンとジョンを最終的に吸収するという結末を期待した人もいて、様々な推理ができる余白の作り方が上手い作品だ。

 

アンセル・エルゴートがすばらしい。ジョナサンとジョンが微妙に違う人格だと分かる。他の出演作は「ベイビー・ドライバー」しか見たことないが、どちらも無垢で自分の困難を少し悲しんでいるような、それで必死にあがくというのでもない静謐さを感じさせる。物語の後半はジョンと二人でいることを維持しようと必死にあがくのだが、静けさを含んで不思議な味わいだ。

2011年 スペイン

 

中々激しいホラー映画だった。監視カメラに映るちょっとした変化に注意を向けさせるかと思うと、次は物凄いラップ現象・怪異現象に目を奪われる。サービス精神旺盛な作品だ。

 

お父さんと思春期の娘、幼い息子の3人家族が住むアパートで怪異現象が続くというので科学チームがやってくる。何事も論理的に読み解こうとする精神医学博士、ぶっきらぼうな実務家で何でもこなす美人秘書、ラテン系で軽口の多い技術者といういいキャラクターが揃っている。さほど広くないアパートに沢山の監視カメラと人感センサーを設置し、各部屋の記録写真を撮り、データを解析する日々。家族の人間関係が露わになっていく様子がおもしろい。

 

交霊術のシーンがある。霊媒はフランセスク・ガリードというスペインの役者さんが演じているが、奇声を発し不思議な筋肉の動きを見せて、胡散臭いような信用できそうな、何とも言い難い印象を残す。舞台・映画・TVで活躍されているそうだ。

 

年頃の娘とシングル・ファーザーというだけでもう不穏な感じだ。博士の「私は人の話を鵜吞みにしない。必ず検証する」というセリフが効いている。謎が明かされ一応の解決を見るが、違うよね、こういうことだよね、と思っていると案の定。だが予想を超えてびっくりさせられた。

2014年 オーストラリア

 

ロバート・A・ハインラインの短編「輪廻の蛇」が原作。

時間と場所を自在に移動できる政府のエージェントが、凶悪な連続爆弾魔を追うためタイムトラベルを繰り返す姿を描いたSFサスペンス。

 

非常によくできていて引き込まれた。主演のサラ・スヌーク、イーサン・ホークが複雑な役を見事に演じていた。しかし「自分の尾を際限なく食い続ける蛇」という言葉でどういう事か分かってからは反則技じゃないの?と思いつつ確認せずにいられない。結論としてどう評価して良いのか分からない映画だ。

ツッコミどころは爆弾魔を仕留めるのが目的なら一番簡単な方法があるのに、それを採らないのは生への固執だろうか。家族も友人もなく目的のみで生きているなら、その方法を採れそうに思うのだが。またやけどで顔を整形した後が骨格まで変わっているのはどうなんだろう。

 

人の性格は多面的で自分でも好きな所・嫌いな所がある。それを膨らませてSFとして具現化したように思える。オートガイネフィリアを連想させる所があるが「輪廻の蛇」は1958年の作品。オート…の概念が定義されたのは1989年だが、ハインラインは性的な好奇心が高かったようなので、そういう人がいると聞いていたのかもしれない。LGBTが関連する近年の映画となると、やはり活動家が監修に入り込んでいるのかと嫌な気持になるが、物語自体は自分でもタイムラインを描いて整理したくなるような興味深さがあるので、原作を読んでみたい。