2023年 アメリカ

 

「第9地区」のニール・ブロムカンプ監督は大の車好きらしい。ゲームもカーレースも門外漢の私でも、大いに楽しめる作品だった。

 

IMAXや4DXなど普通の上映方式ではない方がいいという口コミを見て、初めてMX4Dを体験した。映像は4DXより劣るらしいが座席が振動したり風が吹いたり、作品によっては水がかかることもあるとのこと。アトラクションのようで口コミを信じて良かった。大馬力のエンジンをふかす、加速・減速、カーブを曲がる。主人公と一緒に本当に体験している気になる。

 

ストーリーは奇をてらわない王道。ゲームオタクで親に将来を心配される青年が実際にカーレーサーになる。困難を乗り越え、人間としても成長し、ガールフレンドとは良い仲に、両親も弟も青年を誇りに思う。何の驚きもないが俳優たちは素晴らしいし物語の見せ方が上手いのだと思う。ここでテストに合格するんだよね、分ってる、でも固唾をのんでしまう。

年を取って親や師匠に感情移入しやすい。お父さんの厳しさの陰に息子を愛し心配する優しさが見える。お母さんの心配しつつも見守る姿勢が心にしみる。気難しい職人肌の師匠は若者に自分と同じ轍を踏ませまいとする。

 

ゲームを作った山内一典さんの役を平岳大さんが演じていた。日本では一流の俳優で何か重要な役割を担っていそうだ。ほほ笑む平さんの大写しが意味ありげに感じたが、私の考えすぎだったのか編集で何かが切られたのか。知人は吹き替えで見たそうだ。発声が声優と違い過ぎて、知人は平さんを素人と思ったらしい。海外でも活躍できる実力ある俳優だと思うので次に期待しよう。

実在のヤン・マーデンボローがスタントドライバーとして参加しているとのこと。

応援上映の一種とも言えるが、元々インドでは応援上映的な楽しみ方が普通らしい。歓声・声援・鳴り物・紙吹雪・クラッカーなど、もの凄く盛り上がっている動画があった。

近くの映画館で、見たいと思っていた「マガディーラ 勇者転生」がマサラ上映されるというので初めて参加した。いや~楽しかった!大量の紙吹雪やクラッカーを用意しコスプレする人もいると知ったのが前日。仕方なく行きがけにクラッカー4個入を買った。ロビーには大荷物の人、コスプレの人がわんさかいる。インド映画ディスプレイがにぎやかだ。係員さんが全員に初心者セット(紙吹雪一掴み+クラッカー2個)を配っていた。

 

マッキー、バーフバリ、RRRなどの前にS・S・ラージャマウリ監督が作ったロマンティック・アクション。主演はRRRにも出ているラーム・チャラン。数人の有名人がカメオ出演しているが認識できたのは謎のボスだけだった。METAL BABYさんというYou Tubeチャンネル主さんがおり、インド映画や様々な映像に思いもよらない音楽を付けて面白い動画を上げている。そこによく出てくる恰幅のいいインド人俳優だ。館内の声援が一際高くなり、大スターなのだな、と思ったら、MEGASTARという歌詞の歌に合わせて踊りだした。後で調べると彼はラーム・チャランのお父さんで、150本以上の映画に出演したメガスター、インドの観光大臣も務めた。Boss Partyという曲は大ヒットしたようだ。

 

インド映画の長さ、くどさ、トッピング全部乗せ的な詰め込み加減にお腹いっぱいだという意見を聞くが、この楽しみ方にはそれが最適なのだと分かった。インド映画は映画ではなく別のエンターテイメントだ。歌舞伎や宝塚に通じるものがある。俳優が見得を切り、大技の見せ場があり、美男美女の思いが通じ合う所で大歓声、紙吹雪が舞い、鳴り物が鳴る。膝にも肩にも紙吹雪が積もっていく。申し訳ないが初心者と言い訳して膝の上の紙吹雪を投げさせてもらった。少し失敗だったのは買ったクラッカーだ。紙テープがコーンに付いたままのタイプで、紙テープを手繰り寄せなければならなかった。音だけの方が良かった。

 

終わって灯りが点くと通路全部がうずたかく色とりどりの紙で埋まっている。それを皆で集めてゴミ袋に入れていく。落とし物をしたら見つからないと注意されていたが見て納得。すごいイベントだった。

1989年 アメリカ

 

名門全寮制学校の型破りな教師と生徒たちの交流と成長。

大昔に見てロビン・ウィリアムズがいい先生だった、イギリスのパブリック・スクールみたいだった、いい映画だった、くらいの記憶しか残っていない。年を取って感想も変わったはずだ。

 

キーティング先生が学生の時に作った「死せる詩人たちの会」を生徒たちが秘密裡に復活させる。詩人たちは亡くなってしまっても言葉は残り、後世の人たちの心を動かす。心からの言葉は力があると教える先生に生徒たちが呼応していく。

演劇の道に進みたいという気持ちを抑えつけられ不幸な結末を迎えてしまうニール。彼はゲイなのかも、というのは読み過ぎだろうか。若いうちに自力で道を切り開くという経験をしなければ、将来また困難に遭った時、困難は大きくなっており潰れてしまう。自分の言葉で親を説得しなさい、心からの言葉なら突破できる。キーティング先生はそういうことを教えたかったのではないか。

内気でか弱そうに見えたトッド。強く明るく友達の事を真っ先に考え皆に好かれていたニール。一見、大丈夫かなと心配になる人は実は芯が強く、問題ないように見える人の方が繊細だったりする。

校長や親に巧みに誘導されてしまう生徒たち。キーティング先生は学校を辞めさせられる。最後の最後で先生への感謝を表す生徒がいれば、最後まで学校に従う生徒もいる。これからも様々な困難に直面し対応を間違い、間違いに気づいて修正できる者、できない者がいるだろう。エリート校が舞台だから間違い続けた者の社会への影響は大きい。キーティング先生はそんなことも考えていたと思う。

やはり親目線、先生目線になったようだ。

2017年 アメリカ(?)

 

アマゾンプライムの無料配信作。ハリソン・フォードの映画と勘違いして借りる人向けの邦題だろう。知り合いの集まりで見るというから初めと終わりだけ見た。

 

オープニングタイトルに出てくる制作会社、出演者、スタッフ、皆やたらとデカい字だが全く知らないのでとてもダサく見える。主演俳優と共同制作者の名が同じだ。金持ちのドラ息子が「俺主演で映画作ろうよ」と言ったのか、金持ちが可愛い息子の主演映画を作ったのか、想像が膨らむ。

 

主役がある建物にやってきて知人?が血を流して死んでいるのを発見する。どこかから銃撃があり車で逃走。ある程度逃げた所でシートの間に派手な赤のバッグを見つける。中の札束とドラッグらしき包みを見て Shit!と悪態をつく。

一体どこから発砲してた?来る時も同じ車ではなかったっけ?そんな目立つバッグに気付かないってどういうこと?

主役は黒人、追ってくる悪党は頭悪そうな白人男たち、ガールフレンドは白人金髪女というポリコレ順守。

 

終わり頃、凍ったミシガン湖?の氷水から主人公を引き揚げ、寒かろうとビチョビチョのダウンジャケットを押し当てるヒロイン。シーン転換でジャケットは乾いていた?

 

全編見ていた人が、あれはどういうこと?これはどういうこと?結局ミシガンにたどり着いてないよね?と聞く始末。見てないから答えられないが、原題 Nowhere Michigan だからミシガン州の中を逃げ回っていたのでは?爆破シーンが良かったと言っている人もいて見どころはそこだけなのかも。

低予算クズ映画には面白いのもあれば詰まらないのもある。終わってしまったYahoo!の動画配信サービスでそういうものを結構見たせいか、少し鼻が利くようになった。本作はタイトル、ビジュアル、出演者、あらすじ、どれも引っかからなかった。

モサブ・ハッサン・ユーセフ 著

青木偉作 翻訳

 

イスラム過激派テロ組織ハマスの創設者を父に持ち、敬虔なイスラム教徒だった青年。半生を通してハマス、パレスチナ、イスラエル諜報機関、アメリカを見てきた。現在、FOXやCNNに出演したり自分のサイトで貴重な発信をしている。

 

彼が語る父、シェイク・ハッサン・ユーセフとは不思議な人だ。優しく勤勉で、近所に揉め事があれば出かけて行って双方の話を聞き教え諭す。家族や町の人々から広がり、多くのパレスチナ人の精神的支柱となった。彼自身は決して暴力をふるわない。イスラエル軍が捕まえに来ても素直に従う。なのに仲間のテロを許す。若者が自爆し、暴力的なデモで子供や女性、老人が亡くなっても良しとする。

モサブによれば、イスラム教を信じるということは梯子を一段々々上っていくようなものだ。最上段には恐ろしいものが待っている。神はイスラム教の下に世界を統治することを命じる。穏健派というのは梯子の途上にあるだけだ。

 

なぜパレスチナ人は自分たちの国を持てないか。ガザ地区を支配するハマスは過激派宗教組織だ。様々な国が存在する世界などあってはならない。イスラエル殲滅を皮切りに世界征服あるのみだ。

ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府はまだ政治的で交渉の余地はある。しかし紛争地のままで国連から援助を受けていた方が楽だ。ハマスと自治政府はどちらがこのおいしい地位を取るかで争っている。先進国は国連を通してパレスチナにジャブジャブと支援を行っている。本当に困っている一般市民に届くまでに多くが抜かれ、幹部は肥え太っている。インフラ整備のための建材がハマスの地下トンネル・基地に、水道管はロケット弾になる。

ハマスは子供にイスラエル人や異教徒を徹底的に蔑み憎むよう教える。異教徒を沢山道連れに自爆すればヒーローだ。

 

様々な人の考え、宗教について知ろうとする父の背を見て、モサブはキリスト教の勉強会に参加しだす。敵を愛せという教えに心打たれるところは劇的だ。怪しげなカルトでなくて良かった。その後のモサブの様子から、キリスト教が良い影響を及ぼしているようで良かった。敬虔なクリスチャンとなった今も良い人間になる努力をしている、自分は途上にある人間だ、と言っている。謙虚だ。

 

イスラム教では棄教はこの上ない大罪だ。家族の一員が大罪を犯したとなれば自分たちも地獄行き、悲しい複雑な思いは計り知れない。父はハマス幹部から息子を勘当しろと迫られながら、当初は愛する息子だと拒否し続けた。しかし原書が発売される前日、モサブはハマス創設者の息子ではなくなった。多くの敬虔なイスラム教徒が彼の命を狙っているだろう。

 

モサブの苦難多い人生を思うと言葉がない。しかし現在の世界情勢を見ると神のような存在に選ばれた人ではないかと思う。苦難を乗り越えるだけの強さと頭脳と心を持っていると思う。また彼が亡命を希望したアメリカに中々受け入れられなかったとき、本書に出てくるイスラエルの諜報員が名乗り出て身元を保証したそうだ。民族も宗教も違う者同士が深い友情で結ばれている。