皆さま
夢は、心の奥深くに眠るメッセージを私たちに届けてくれる、不思議な窓のようなものです。
ときに美しく、またときに不可解なその世界は、無意識の海を泳ぐ旅のようです。
今回は、ある女性と男性が見た二つの夢を取り上げ、それぞれに秘められた意味を探っていきます。
夢は単なる偶然の産物ではなく、私たちの心や人生、そして未来へのヒントを与えてくれるかもしれません。
「庭園」と「宇宙空間」という対照的な舞台で繰り広げられた夢の物語とその分析を通して、皆さま自身の夢に隠された意味を考えるきっかけをお届けできればと思います。
庭園の夢 K・Y 20代女性
大きな田舎家がある。木造で屋根は日本瓦である。
その家の主人と思われる誰かにノートや本を段ボール箱に詰めてもらっている。私は白と淡いピンクの服を着ていて白い。ショルダーバッグを持っている。
家から外に出ると、そこには大きな庭がある。野球ができるくらいの広さである。霞がかかったように景色が少しぼやけている。
向かって左側には何も植えられていなくて、枯れ葉ひとつ落ちてない。右側にはまばらに木が植えられていて、地面にはたくさんの葉が落ちている。私は落ち葉を竹箒で履こうと思うが、次々と葉が落ちてくるので無駄だと思ってやめる。
植えてある木の中にはイチョウの木があり、その枝からイチョウの黄金色の葉が、まるで滝のようにキラキラと落ちていく。
私はその光景に感動して、傍にいた小さな男の子に「綺麗だね、まるで滝のようだね」と言う。周囲にはその家の家族がいる。幼い子どもから老人まで、幅広い年齢の人々がいた……。
夢のカテゴリー:状況に関する夢
【分析】
この夢には彼女の人格を診断する上で手がかりとなるキーワードがたくさん詰まっています。
まず最初に出てくるのは、大きな田舎家です。夢に出てくる家は、その人の人格構造を把握する上で大変参考になります。
どっしりと落ち着いた感じの木造家屋。日本瓦の敷き詰められた屋根から判断すれば、彼女は現実と空想のバランスのとれた人格の持ち主という印象を受けます。しかも年齢の割には少し古風な考え方を持っているようです。それにしっかりと地についた自我を持っているようにも見受けられます。
その家に居る彼女は、「白」と淡い「ピンク」の服を着ており、白いショルダーバッグを持っています。
これは彼女もペルソナを表しています。人間関係の面での彼女の特徴を挙げるならば、社交性に富み、人に対して誠実で温かく触れ合うことのできる性格の持ち主ではないでしょうか?
さて、家の外に出ると広い庭があります。この庭は彼女の現実生活での出来事に関係があるように思われます。庭の左半分には何も植えられておらず、枯れ葉一つ落ちていません。右半分にはまばらに木が植えられていて、地面にたくさんの落ち葉があるのです。
この場合、「左」には過去、内面的な世界という意味があり、「右」には未来、現実の世界という意味が込められています。庭の右半分に立っている木は、彼女を取り巻く家族や友人を象徴している可能性があります。
しかも地面にあるたくさんの落ち葉は、周りの人間から何らかの圧力が加わっていたり、人間関係に対して敏感になっていることを意味します。何しろ落ち葉をホウキではこうとしても、後ろからパラパラと葉が落ちてくるような状態です。自分の力では解決しきれない人間関係上の問題を抱えているのかもしれません。
また、イチョウの木が彼女自身の「自我」を表していると考えることもできます。その場合は自分の存在を周りに誇示してみたいという強い願望が隠れていることになります。というのも、黄金色の葉は彼女の外見や立場に対するプライドの高さをシンボライズしているためです。
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宇宙空間の夢 N・H 20代男性
子供の頃、発熱した時によく見た夢で、今でもよく覚えている――。
僕はたぶん宇宙にいる。上下の区別がつかず、僕は浮遊している。まわりは暗く、夜空のように星が見える。
すると前方から巨大な”球”がじわじわと押し寄せてきた。直径100m以上で、もしかするともっと大きく、球の果てがわからない。その球が僕の身体まで迫ってきて、僕は押し出されるようになった。
球に押しつぶされるわけでもなく、痛くもないが非常に怖い。その恐怖は叫ぶような恐怖ではなく、心の奥底からにじみ出てくるような恐怖である……。
夢のカテゴリー:状況に関する夢
【分析】
非常に疲れている時や病気などの時には奇妙な夢をよく見るものです。このような時には、意識的な自我の働きが弱っており、そのため無意識的な心の状態が現れやすくなるのです。特に高い熱を出している時には、幻覚体験や元型夢が頻繁に見られます。彼の場合もそのケースのようです。この夢は典型的な元型夢として解釈することができます。
宇宙空間は無限の広がりを持っています。この宇宙は彼の”意識の広がり”を意味しています。つまり、宇宙は彼の「インナースペース」、心そのものであるのです。夢の中で自身の内的宇宙を旅しているわけです。
やがて彼の前に巨大な球体が進んできました。この球体は、以前説明した曼荼羅のイメージに結びつくものです。また、自分の心の中心を表すセルフのシンボルでもあります。
ユングはセルフを自分でありながら自分を超えている存在。暗い無意識によって支えられ、その中心で光輝いている星。真夜中の太陽、永遠の生命と言うように表現しています。
大変わかりにくい表現かもしれませんが、セルフは筆舌に尽くし難い「高い次元での自分」を示す元型なのです。
でも、夢の中でセルフと遭遇した彼は、その圧倒的な力に押されながら強い恐怖を味わいます。彼はそれを「心の底からにじみ出てくるような恐怖」と書いています。この段階で彼は自分の無意識の最も深い層にまで達していたものと思われます。
セルフは人智を超えた存在、人に畏怖の念を起こさせる「神」のようなイメージに通じています。
このセルフに遭遇して何も感じない人はいません。ただ、ひたすら恐れおののいてしまうものなのです。
この夢にはトランスパーソナルな要素が含まれているようです。これは”狂気”と紙一重の意識状態のことですが、自分の心の構造を洞察し、高い精神レベルに至るためには必要な体験です。
著名な高僧や哲学者が得る”悟り”や”天啓”もこのトランスパーソナルな意識状態がもたらす産物と言えます。
皆さんも、一度夢の世界で自分の中に広がっている宇宙を旅してみませんか!?
巫師麗月チャンネル
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