12月13日(月)
あたたかな声、何ら気負ったところのないおだやかな語り口。
まず、そのお声のやさしさに驚きました。
私の周囲にこれほどおだやかで静かな口調で語る人がいるだろうか、と思いました。
入佐明美さん
釜ヶ崎で30年以上も活動されているボランティアケースワーカーです。
今日のウイルセミナーは入佐さんに講師として来ていただきました。
大阪市西成区にある釜ヶ崎は、約800メートル四方の狭い地域です。
そこには、2万人~3万人の人が暮らしていて、その多くが男性のひとり暮らし。
待遇条件の悪い重労働に従事している人がほとんどで、
働けなくなれば路上での生活も余儀なくされます。
1年に300人の人が路上で亡くなり、10人にひとりが結核に感染しているという地域です。
医療が一番必要な地域なのに、医療から見放されているところ。
入佐さんは、その釜ヶ崎にケースワーカー・看護師として入り込み、
そこで働く労働者の話を聞き、支援してきました。
住まいのない人にはお金を貸し、アパートを一緒に探し保証人にもなってあげるとのこと。
お金なんか貸してあげて大丈夫?と思いますが、ほぼ100%の人がきちんと返済されるそうです。
「入佐さんが自分を信頼して貸してくれたお金だから、その信頼を裏切るわけにはいかない」
お金を返し終えた時、これで入佐さんの信頼を裏切らずに済んだ、とそのことにほっとするそうです。
労働者と入佐さんとの間には、強い信頼関係があるのです。
講演後、10名近くの方が残りお茶とクッキーをいただきながら
入佐さんを囲んでお話する時間を持ちました。
趣味として歌を習っておられるとのこと。
そういうリフレッシュの時間もちゃんと持っておられるのだと知って、安心しました。
入佐さんの活動は、全く個人レベルのボランティアでされているものです。
特定の団体に所属されているわけではありません。
また、その生活基盤は本の出版と講演の依頼などで賄われています。
そういう点から考えると、入佐さんの活動がいくら素晴らしく尊いものであっても、
私たちみんなが同じようにはできないものです。
また、その活動には行政や社会に対する抗議というものもあまり含まれていません。
広がりを持ちにくい活動とも言えますが、それは入佐さんの活動の素晴らしい価値を
些かも減じるものではありません。
全面的には関われない、少しのことしかできない私のような一般の人間には、
それはそれでまた別の活動の仕方があるのでしょう。
少女のような純粋さを持ち続けている人。
お別れする時、自然と頭が下がりました。