米誌フォーブスの長者番付によると、米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の純資産が19日までに約7490億ドルとなり、初めて7000億ドルを突破した。
デラウェア州の最高裁は同日、マスク氏の巨額報酬パッケージを無効とした下級審の判断を覆した。報酬パッケージは当時の株価で560億ドル相当だったが、テスラ株の上昇に伴い19日終値時点で1390億ドルに価値が膨らんでいた。
マスク氏の資産は、同氏率いる宇宙企業スペースXが新規株式公開(IPO)を準備中で、その一環として企業価値を8000億ドルとする「二次株式売却」を開始したと報道された後、15日に6000億ドルに達していた。
フォーブスによると、マスクの資産は2位のグーグル共同創業者ラリー・ペイジ氏を約5000億ドル近く上回っている。
資本主義社会であるので、資産に上限はない。その一方で、貧困層が増加し、米国民の大半が生活に困窮している現実がある。人間の尊厳が保たれるレベルの生活は保障されるべきで、それを社会システムが支える仕組みが必要なのだろう。そのための財源として、巨額報酬に対する税金も設定されるべきだ。もちろん、起業家が意欲をなくすような税制は困るが、報酬の分配率は、もっと公平であるべきだろう。ただ、そのあたりのバランスをどのあたりにするかは、価値観が多様化した社会では、いつまでも定まることはあるまい。
アメリカ本土からすれば、輸入品を受け容れて、他国の繁栄に貢献しているのだから、少しくらいの関税は許容されるべきだとする論理は、理解できないことはない。デトロイト等、米国内の産業が廉価な輸入品のおかげで衰退している現実を前にすると、なおさらである。
個人レベルでは極端な資本主義でありながら、国家レベルでは保護主義が強い二面性をもつアメリカは、今後、どうなっていくのだろう。米国財政の財源不足の多くを関税で担保することに味をしめると、アメリカという市場は、輸出する国からすれば魅力を失い、他の大きな経済圏に市場の中心が移る可能性は否定できない。
中国、インド、欧州、アセアン、中東、南米等が思い浮かぶが、どの地域がゲームチェンジャーになるのか、わからない。ただ、関税とマスク氏の巨額報酬の二つは、100年単位で見れば、社会システムを変えるきっかけになりうるのではないかと考えている。