【3月31日の債権者集会の意味…】 | 【実録・倒産社長の奮闘記】~こうして店は潰れた!~小林久ブログ

【実録・倒産社長の奮闘記】~こうして店は潰れた!~小林久ブログ

老舗スーパー三代目→先代の赤字1.5億円を2年で黒字化→地域土着経営で中小企業の星に→中小企業診断士試験に出題→早過ぎたSDGs →2017年まさかの倒産→応援団がクラファンで3,000万円支援→破産処理後は「笑って泣かせる」講演講師に。『現代ビジネス』コラムニスト



5年前の年末に 、100年以上続いた家業のスーパーマーケットを倒産させてしまった私。

債権者へのお詫び行脚、従業員の再就職や破産のための事務作業など、様々な後始末に忙殺される毎日はとても辛かった。同時に無我夢中でタスクをこなしている間は、よからぬ事を考える暇もなくて済んだことも事実だ。

私の破産代理人弁護士から連絡が入る。

👤「小林さん、第一回目の債権者集会が来年の3月31日に決まりました」

🤞🏻『債権者集会』とは、倒産社長が債権者からの吊し上げや怒号にひたすら耐えてお詫びをする…、こんなイメージしかなかった。皆さんも同じかも知れない。

通常、会社が倒産した場合、資産調査や違法性の有無などを調査して、3ヶ月ほど後に開かれる。私にとって「債権者集会」とは人生で最悪・最恐の日となる。しかしご迷惑をかけた立場ならそれも当然のこと。逃げれば明日はない。

👤ふと思う…。年度末の3月31日、それも午後3時から、債権者700人も集めてそれをするのか?まあいい、破産した私にそれを聞く資格など無い。

重い気持ちを抑えながら、甲府地裁の大ホールの債務者席に着席した。

怖くて顔を上げられない…。

👤「社長、元気だったかい?早く戻って来いよ!」

長年の取引業者の社長(破産費用1,000万円をクラファンで集めてくれた人)が声を掛けてきた。

🎤『ご静粛に!』と注意する裁判長の声も、それほど厳しい口調ではなかった。

顔を上げた私の目には、ガラガラの大ホールの中に、よく知る取引先と顔も知らない(それ用の)銀行関係者、合わせて40人にも満たない参加者の顔が映った。ニュースを聞いて勝手に来た老夫婦も裁判所は入場を許可したとも聞いた(^^;

……債権者集会は何一つ問題なく20分で終了した……

予定していた警備員付きの裏口からの避難も、メディアの追跡もなく、私は終了後のホールで久しぶりに会った人たちと普通に話すことができた。

✅私は代理人弁護士に聞いてみた。

「なんでこんな年度末に債権者集会を開いたんですか?」

👤「我々も不思議に思って裁判長に聞いてみたんです。

「小林の案件を早く処理して、また社会へ戻して欲しい』との手紙が裁判所に多数届いたそうです。やはり第一回目の債権者集会が一番重要になりますから」

・じゃ誰も来れない日にわざと設定したのか?・そんなこと裁判所がする訳がないだろうに?

一番初めに退席する裁判長を一礼して見送った時、私を見ながら「彼女」が少し微笑んでいたのは気のせいだろうか。

私は一生、あの日のことを忘れないだろう…🙏🏻

(写真は実際に私が座った裁判所の債務者席)