4.6点/5点
人生は美しい。彼がそう言うのであれば、私はそれを信じよう。明日死ぬかもしれない極限状況で、それでも人生は美しいと言えるだろうか。この作品は、そんな究極に悲惨な状況でも、豊かな想像力を広げて、愛する家族を守り抜いた一人の男の物語。
「おもしろき こともなき世を おもしろく」と詠んだ高杉晋作。
「うつくしき こともなき世を うつくしく」を体現した主人公グイド。
寓話であるけれど、この奇跡の物語は、私の人生の指針にしたい作品だ。
前半はマジカルなラブストーリー。ユダヤ系イタリア人のグイドは、ある女性ドーラに出逢い、持ち前のロマンティックさ、ユーモア、そして純粋さで彼女の心をとらえて、傲慢な婚約者から奪還する。そして息子が生まれ、幸福な家庭が始まるまでは、彼の機関銃トークとテンポの良い展開で、笑いながら、心が躍る。
後半は一転、生まれた息子と愛する妻との幸せな生活も束の間、強制収容所に連れていかれ、絶望と死の恐怖に覆われる。そこで、彼は収容所生活がゲームであるかのように息子に信じさせることを思いつく。ドイツ兵の通訳シーンなど笑えるシーンはあるものの、そのあまりの現実に彼の持ち前の想像力でどう切り抜けていくのかハラハラしながら見守っていく。そして、クライマックス、スピーカーで妻にメッセージを伝える場面は深く心が揺さぶられた。
グイドは決して取り立てて頑強な男でも、聡明な男でも無いかもしれない。でも、恐ろしい現実の中でも、決して奪われない強さを誰よりも強く持っていると思う。人を愛する気持ち。希望を抱く事。想像をすること。それは誰にも奪えない人間の尊厳で、私はそれこそ美しいと思った。彼は、自分自身で創作したファンタジーの世界へ息子を逃がすことで、人生が生きるに値するものであることを証明しようとする。真実が美しいのではなく、美しい想像を真実にしたのだ。絶望の中の希望は想像力の中だけでしか生まれ得ないことを教えてくれた。
監督・脚本・主演の3役を兼ねたロベルト・ベニーニは、まさしく「イタリアのチャップリン」と言われる程に、この寓話を限りなく素晴らしい作品に仕上げている。ホロコーストをコメディも取り入れて描く勇気と覚悟も凄いが、ユーモアとロマンティシズム溢れる前半から人間の尊厳の美しさとクライマックスの奇跡に至るラストまで、そのストーリーテリングは見事。役者としても笑いと悲哀を見事に表現し、アカデミー賞主演男優賞を獲得、授賞式で会場の椅子に飛び乗って、喜んだ彼に会場全体がhappyになった瞬間を覚えている。
どんなに残酷で苦悩に満ちていても、人生はそれでも美しく、生きるに値する。そう、息子に伝えることは、自分にできるだろうか。現実も事実も真実も、時として美しいとは言い切れないかもしれない。そんな時にでも、現実が美しいのではなく、美しいものが真実だと言い切れるだろうか。
「ライフ・イズ・ビューティフル」の主人公・グイドは、美しいものを探しように無い、悲惨過ぎる現実の中で、家族への愛情と一縷の希望を見つめ抜く想像力で克服し、「美しい人生」を自らの手で築き上げていく。
そして、私は、この映画が寓話だからこそ、人生の指針になり得ると思う。グイドの経験した究極的状況を体験する人は少ないでしょうし、私ももちろん人生で訪れて欲しくないけれど、現実をじっと見つめた時に、一生、楽しいことだけでは済まされない。辛いことも、苦しいことも、悲しいこともある。愛する人の死、仕事や経済上での困難、そして人生最期の瞬間は、誰にでも訪れる。そんな哀しみの瞬間や過酷な状況に陥っても、それでも人生は美しい、という前提で生きていきたい(そう思えない自分がいても)その想いで息子たちにも接していきたい。
これは予感に過ぎないのだけど、死ぬ瞬間には全てがほどけ、人生は美しかった、、と気づくのではないだろうか。ならば、彼のように、今から信じてもいい、たとえ、現実が時にそうでなかったとしても。自らの愛で、魂で、想像力で、美しい人生にしていく。現実が美しいか、どうかは関係ない。美しい魂と生き方がそこにある。ここが、この作品が、「ライフ・イズ・ビューティフル」というタイトルに負けることなく、人生賛歌の金字塔であり続ける所以だと思う。
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