多数の傑作ユニットを送り出してきた
われわれ自作ユーザーの星(?)スピーカーユニット専門メーカー
フォスター電機のブランド「FOSTEX」だが、アッセンブリー製品であるスピーカーシステムを販売するようになってしばらく経った。
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特に作今はプロ機器のイメージではなくコンシューマー系にあえて振ってきているように思うほど、製品はお得意のスピーカーをはじめとして、レコーダーからマイクロフォンまで多種多様に及ぶ。
今回はその多様な製品群の中からヘッドフォンTH900である。
私なんぞはどうにも我慢しきれずに買ってしまったクチだが、
一般的にみて定価15万円という値段はとてもアダやオロソカで出せる代物ではない。

つまりそういうオタクでニッチな層をターゲットとしているわけで、普通は中級程度の製品で様子見と経験を積んでからフラッグシップに掛かるものである。が、ユニットメーカーとして十分な下積みも経験もあるからだろう。フォステクスはそれをせずいきなり高級機に殴り込みを掛けている。音を知り尽くしたメーカーとしての意地なのか。中身を含めて検証してみたい。
 
【外観】
ヘッドフォンハウジングはミズメ桜削り出しに特殊漆塗装を幾重にも重ねたもの。塗装の仕上げ含め文句無しである。ジャパンプロダクトが誇る工芸品は一見渋みすら感じさせ高級感あふれる作り。
FOSTEXロゴはプラチナ箔の型押しとのこと。もう充分です(笑)
ドライバーユニットはネオジウム磁石を1.5テスラまで高め、50mmのバイオ振動板はSENNHEISER HD800の56mmには劣るものの、大口径であることに変わりは無く密閉型構造であることも手伝って異例とも言うべき低音再生能力を備える。
その他にもコードは7N-OFC、イヤーパッドに出光が開発した高度な人口皮革を使用し本皮では不可能な軽量化と耐久性、肌触りまで考慮されているとのこと。ともかく技術的長所は枚挙に暇なくこれでもかという感じ。

【音質】
原音再生というありがちな言葉が浮かんだ。
何を持って「原」音とするのか疑問ではあるのだがここではソースに対して忠実という意味で
まさに地を行っている。
まずあくまでも聴感上だが耳に付くいやな音は一切しない。
しかし蒸留水のように味気ないわけではない。全域で音は締まっておりタイトだが不快ではない。ダンピングは良く利いていて引きずる感じはまったく無い。このあたりのさじ加減は絶妙且つきわどい。おそらくアマチュアライクながら何度も何度も視聴して追い込んでいったのだろう。
他社製品と比較しても充分驚くことが出来る低音の表現力は多彩であり大型スピーカーで超低域を再生したときのような風圧を(耳だけだが)冗談抜きで感じることも出来る。
低音好き高音好き含め大多数の人間に受け入れられると思う(価格という最大の問題は除いてだが)
良い意味で正統派且つクセは少ない。これそのままモニターヘッドフォンとしても持っていける(傷つくのが怖くてそれは出来ないけれども)
 
【音場】
下手なオープンエアータイプヘッドフォンよりはるかに広大な音場、
HD800までとは言わないまでも特筆すべき点だ。
狭さが苦手で私はオープン型に流れてしまったクチなので今回見直してしまった。
これなら密閉型でも良い。ユニットメーカーらしく前方定位。よくボーカルが遠いなんて感想が載るけどもスピーカーだとこんな鳴りだと思う。
ヘッドフォン特有の頭内定位が好きな人は認められないかもしれない。
総じて頭内定位なら簡単に作れてしまうが、前方定位の音作りは構造上工夫が必要だろう。大変好感が持てる。スピーカーが使えない状況下でも正しい判断が出来るものを提供したいというメーカーの強い意志が感じられる。
音響特性の完璧な部屋で聴く高級スピーカーシステムがこのヘッドフォン1つで再現できるのならこの金額も高くないんじゃなかろうか。ここまで書いていて思ったのだが、これ密閉型にして低音が超低域まで出るようになったHD800といっていいほど両者は開発コンセプト、音作りにいたるまで似ている。

【総評】
このクラスの高級ヘッドフォンともなってくると目立つのは自分の世界に引き込んで聴かせ込んでしまえ的な個性が目立って来る領域でもあるわけで、その世界も十分芸術的で魅力的な世界ではあるのだけれども、その中で異色とも言うべき味付けでごまかすことなく真っ向勝負なヘッドフォン、今のところ最良の密閉型。