「なあちづる。ふと思ったんだけど」

 

「何よ和也。いきなり」

 

「なんで一緒に大学行くようになったんだ?」

 

「いまさらその話?」

 


そう、彼と付き合うようになってからできるだけ大学は二人で行くようにしている。
片方が講義がない日だったり、時間が全然違う日とかはさすがにしないけど、少し時間がずれてる程度だったら一緒に向かっている。

 

...まあ私の方から言い出したことなんだけど。

 


「だってちづる、前はあんなに嫌がってたし」
「今もずっと大学ではその服装だし、俺といていろいろ大丈夫なのかなって」

 

「またそんなこと言って...」

 

「ごめん...」

 

「...」
「別に、もうレンカノは辞めたんだし、こそこそする必要もないでしょ」
「前に話した通り、女優のことが周りに知られるのは覚悟の上だし、何の問題もない」
「いきなり普段の服装で大学に来るのも変だから、この感じのままにしてるだけ」

 

「そうか...」

 


彼に告白された後、お互いの友人にはすべてを話した。レンカノをしていたこと、でも今度は正式に付き合うことになったこと。
あのときはかなり驚かれたなぁ、特に木部さん・栗君以外の忍家の時のメンバーには。

 

だから、二人で歩いていることを友人たちに隠す意味もない。
...見られたときはたまに冷やかされるけど。

 

「それに...」

 

「それに?」

 

「...出来るだけ、あなたと一緒に居たいし」

 

「...」

 

「大学内で一緒に居ようにも、教養科目はともかく専門科目はほぼ違うから教室が違ったりお昼のタイミングが違ったりで時間合わせづらいし」
「それなら調整しやすい登校時間ぐらいはって」
「...いいでしょ?それぐらい...」

 

「......」

 

「......」

 

「......」

 

「...と、とにかくっ 私が問題ないんだからあなたは気にしなくていいのっ」
「いつまでもそういう情けないこと言わない!あなたは私の大事な大事な"彼氏"なんだからっ」

 

「ちづる...」

 

「ほら、早くしないと講義に遅れるわよ!」

 

「う、うん!」

 


大学はいずれ卒業する。こんな時間もいつまでも過ごせるわけではない。
それに、女優の方が忙しくなったら会える時間ももっとなくなってしまうかもしれない。

 

だから和也、これぐらいは私の好きにさせて?
だって私は、あなたの傍にいたいから。

 

 


おしまい

 

―2021.05.09(第2回妄想大会)投稿

 

コメント

前回の「落として上げる」展開に対する反応が少なくてちょっと寂しかったのと、皆さんの作品読んで追加で書きたくなったので衝動的に書いた。

シンプルにちづるデレさせた。

 

衝動的な作品なのであまり深いことはない

 

さばさばしたこと言った後、ぽっとデレセリフ出させるのがすごくちづる感出ていいんだよなあ