折鶴お千 | Untitled



折鶴お千(’35)日本

原作:泉鏡花の小説「売色鴨南蛮」

監督:溝口健二


1935年というと、昭和10年。 18歳の山田五十鈴が艶やかな色気を醸す。

サイレント映画に弁士と呼ばれる語り手がつく、いわゆる “Talking Silent”

この頃の日本映画って、撮ったらフィルムぽんぽん捨てていたらしいので

永久に観れない作品も結構多い。 ありがたく鑑賞させていただきます(笑)



お千(山田五十鈴)はやくざな男・熊沢(芝田新)に食い物にされている。

ある夜、前途をはかなんで自殺しようとする青年・宗吉(夏川大二郎)をお千は救う。

これがきっかけで宗吉はお千の弟分となり、熊沢の下で働くことになるが

熊沢の横暴は増す一方であった。 やがて熊沢が逮捕され、二人は逃げ出して

自分たちだけの暮らしを始めるが、今日食べる米の心配をするほどの貧しさで

宗吉の学費捻出のために、お千はある仕事に手を出すことに・・・・・・



お千はその美貌から美人局をさせられ、熊沢の悪業に加担させられる。

一方、宗吉は医者を志し田舎から上京してきたものの、世間の荒波に呑まれ

夢破れ自らの命を絶とうとする。 そこに、慈悲深き女性が青年の命を救う。

二人は虐げられる毎日を過ごしながらも、宗吉に希望を持つよう諭すお千。

いつか自分も自由に羽ばたきたい。と、折り鶴を折って思いを込める。



「姉さんが魂をあげます」

胸から口で折り鶴を運びフッと飛ばし、愛する宗吉へ未来を託す。

女の情念、女の慈しみ、女の魂・・・・・・

弱冠18歳で、女優として完成しきっている山田五十鈴。恐るべしっ

家屋の窓越しから大胆に横切る、溝口健二の長回し移動撮影はこの頃から健在。

ラストのお千と宗吉が再会するシーンは 『山椒大夫』 の基となったらしい。



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