71フラグメンツ(’94)
監督は、ミヒャエル・ハネケ
1,993年12月23日のオーストリア、ウィーンの銀行内で
19歳の大学生マクシミリアン・Bが銃を乱射して、たまたま銀行内にいた3名が死亡。
その後、犯人はガソリン・スタンドに置いてあった自分の車に戻り、頭部を打ち抜いて自殺した。
実際にあったこの事件を、青年と銀行にいて被害にあって射殺された人たちの
事件が起きるまでの数日間の日常生活の “断片” を描いています。
ガス・ヴァン・サント監督の 『エレファント』 を思い起こすような作り
映像が無機質で、味のなくなったガムをずっと噛んでいるような感じです。
特典映像にハネケ監督のインタビューが収録されていたのですけど
彼の言葉を聞くと更にこの作品の奥深さを感じます。
「“現実は断片だ” という考えが、映画の構造にある。」
「断片からでなければ理解できない。」
ある青年が卓球の練習をしている。
マシンから次々出てくるボールを打ち返す。
固定カメラでの長回し。ずっと、そればっかり
私、後から計ったんですけど、2分50秒でした(笑)
だんだん、この兄ちゃんが 「もう、やだよ~」
って、半泣きの顔になるんですよ。
腰が入らなくなって手振りなってくるし。
それから少し持ち直すんですけど
「俺は一体、何をやっているんだろう・・・」
みたいな顔になってくるんです。
私たちも普段の変わりのない生活を送っていて
こう思うことってありますよね。
うっとうしくてイライラする2分50秒ですが
“現実は断片だ”
このシーンは、もっと長いです。
このおっちゃんが、嫁いだ娘に電話するシーン
長回し固定ショット9分間
しょうもない話をぐだぐだ話しているんです。
別の話に移ったと思ったら、また前の話に戻ってしまったり
さっきの卓球シーンもそうですけど
一見、無意味そうな長回しを、意味深いものに見せるハネケ監督って・・・・
やっぱりスゴイ
このシーン、私大好きなんです。
晩ご飯をまずそうに食べる夫婦。
旦那は警備会社に勤めていて、嫁は病弱な赤ちゃんの看病に疲れている。
この後の2人のやりとり、間が絶妙なんですよ。
かけがえのない “断片” が描かれています。
そうなんですよね・・・・・
この人たちが吸い寄せられるように銀行へ・・・
ミヒャエル・ハネケ監督作品
19歳の大学生が銀行で銃を乱射。 3人が死亡し本人も自殺を図る。
犠牲者と加害者それぞれの過去を遡りながら、ドラマ性を排除した演出で現代社会の矛盾に迫る。
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