パリ・オペラ座バレエのエトワール、マチュー・ガニオのアデュー公演が、とうとう明後日3月1日に迫っています。
スジェから飛び級でエトワール任命されてから約21年間を、パリ・オペラ座バレエのトップとして努めてきましたが、それももうすぐで終わりです…。
そして、パリ・オペラ座から、アデュー公演を前にしたマチュー・ガニオのインタビュー映像が公開されています。
「オネーギン」のリハーサル映像がたくさん映っているのは、世界中のバレエファンへのプレゼントですね。
マチューがアデューの時期を考え始めたのは、上演予定のスケジュールが決まり始める3年前のこと。
当時の芸術監督であったオーレリー・デュポンから、「どの作品で、アデューを迎えたい?」と聞かれて、「オネーギン」と答えたそうです。
「オネーギン」でアデューをするのが夢だと。
クランコから「オネーギン」の指導を受けた、リード・アンダーソン(シュツットガルト・バレエ元芸術監督)とのリハーサル。
彼が、クランコに教わった通りに、マチューの腕を引っ張り、身体の使い方を指導する姿を見て、細やかなディテール、そして魂が受け継がれていく様を見た気がします。
「どこへ、いつ、誰と、どうして」ではなく「どうやって動くか」をイメージすることの大切さ。
それがリード・アンダーソンが最も強調したことでした。
「どうやって」というイメージを抱くことで、自分に対する理解が得られるのだと。
ここまでバレエのトップを極めても、最後の最後まで、終わることがない探求。
だからこそ、バレエダンサーはベテランとなっても、日々深化するのですね。
以下、拙訳で、意訳も混ざっていますが、インタビュー映像の和訳です。
まるで、自分へ言い聞かせるみたいに、言葉を嚙みしめたマチューの姿にグッときました。
「僕は、エトワールとして21年を過ごしてきた。
ソリストとして、これだけの期間を過ごせることは特別なこと。
やりきったと思うよ。本当に。思いっきり楽しんだよ。」
「一番辛いのは、たくさんの人たちからのメッセージや愛を、もう受け取れなくなるって気が付かされること。
でも、今は目の前に、踊るべき公演があるから、ベストを尽くしたいし、泣いてお別れはしたくない。
幸せに思い出であってほしいし、明るいイメージを残して終わりたいからね。
僕たちは、いつか次のステージへ進まないといけないし、それってとてもクールなことだよ!」
「前々から、バレエダンサーとしてのキャリアの終わりは考えていたよ。
僕たちにとっては、始めから決められていて、避けて通れない道だから。
今、ダンサーとして、そして自分の身体の状態からしても、”その時が来た”って思う。
毎日、鏡と向き合って、日々のレッスンを行うルーティンから解放されることは、正直嬉しいよ。
もちろん、舞台の上でしか味わえない魔法はあるし、素晴らしい人々と特別な職場で、同じ時を過ごせたことはかけがえのない思い出。
もう、彼らと同僚である今と同じようには、一緒に過ごすことはできないということ、それが舞台上の魔法とともに、名残惜しく思うことだろうね。」
「踊ることは、いつも、いつまでも、僕の人生にとって、特別なものであり続けるよ。」
この言葉を言い終わった後のマチューの表情、もう涙なしでは見られませんでした…。
3月1日のアデュー公演が無事終わりますように!
マチューの初舞台。母ドミニク・カルフーニと。