バレエ「くるみ割り人形」第2幕のディヴェルティスマンで、最も盛り上がる踊りの1つが「トレパック(ロシアの踊り)」。

 

「足を踏み鳴らす」という意味の古いロシア語が由来とされ、高い跳躍や勇壮なステップが見どころです。

 

 

「くるみ割り人形」第2幕の舞台は、お菓子の王国ですが、ではトレパックは何のお菓子でしょうか?

 

諸説ありますが、初演時は「Russian Candy Canes」ということで、キャンディの精。

 

男性ソリストと12名の生徒が、フラフープを持って、文字通り「跳び回る」振付でした。

 

ソリストを務めたのは、アレクサンドル・シリャエフ。

帝室バレエ劇場(マリインスキー劇場)で、キャラクター・ダンスの発展に貢献した舞踊手です。

 

当時は、男性ソリストは、自分が踊るパートを自身で振付することが多かったため、初演時のトレパックは、彼が振付したものと考えられています。

 

 

また、彼は、模型や手書きアニメーションを用いて、数多くの振付の記録を残しました。

これらは、当時のバレエを復刻する際にも、貴重な資料として活用されています。

 

その中に、1892年当時のトレパックの振付も残されています!

それがこちら。

 

 

19世紀の人々が観たであろう振付を、自分たちも目にすることができるって凄くないですか?

タイムマシンで「くるみ割り人形」の初演を観ているようで、感動しました!

 

これを復活させたのが、ジョージ・バランシン。

彼は、帝室バレエ劇場で、はじめは子役、そしてソリストとして、このトレパックを踊っています。

 

そのため、冒頭のシークエンスの一部以外は、シリャエフの振付を忠実に再現しています。

ぜひ、上の映像と比較してみてください!

 

 

こうして、時代を超えて受け継がれていくこと、それが古典バレエの醍醐味でもあると思わされました。