8月26日(月)午前1時35分から、BSプレミアムで、オランダ国立バレエ「ジゼル」が放送されます。

 


2023年10月の収録で、日本の映画館でもライブシネマとして上映、多くのバレエファンが酔いしれた名演がテレビで観られる貴重な機会です。

 

<出演>
  ジゼル:オリガ・スミルノワ
  アルブレヒト:ヤコポ・ティッシ
  ヒラリオン:ギオルギ・ポツヒシヴィリ
  ミルタ(精霊ウィリの女王):フロア・アイマース ほか
  オランダ国立バレエ団
  管弦楽:オランダ・バレエ管弦楽団
  指揮:エルマンノ・フローリオ  

 

 

バレエ初心者の方にもお楽しみいただけるよう、ストーリーや見どころをたっぷりとご紹介します。

(今回は、真面目な記事…のはず)

 

 

 

<あらすじ>

 

第1幕

 

舞台は、中世ドイツ、葡萄畑が広がる美しい村。

 

村に住むジゼルは、踊りが大好きな美しい娘。

身体が弱いため、母親ベルタからは、「踊りすぎるとダメ」と言われていますが、彼女の耳には届きません。

子どもの頃は、親からの忠告って、「もう、分かったよ」とスルーしがち。

ジゼルも、そんなお年頃のごく普通の少女でした。

 

そんな彼女は、最近村にやってくる、ロイスという若者に恋をしていました。

村ボーイズとは少し違う、どこか垢抜けたロイスは、彼女にとっては、まるで王子様。

家のドアを叩く音がすると、急いで駆け出し、いたずら心で物陰に隠れたロイスを探す、恋する乙女でした。

 

彼が「君をずっと愛すると誓うよ!」と宣言すると、嬉しい一方で、その気持ちを確かめたくなります。

 

★Key Point ① 真実の愛と花占い

 

ロイスが、胸に片手をあて、もう片方の手を天に高く掲げる仕草。

これは、「あなたへの愛を神様に誓います!」という意味。

「ジゼル」の他、「白鳥の湖」や「ラ・バヤデール」でもキーとなる重要なマイム(ジェスチャー)です。

 

バレエオタクの皆様は、「バレエで愛を誓うイケメン、噓つき説」はよくご存知のはずで、毎回客席で「こいつ、やりやがった」と思うのでした(違😂)

 

そこで、彼女はマーガレットを使って、花占いに勤しみます。

花びらを1枚ずつちぎる度、「ロイスは私を愛している、愛していない…」と数えていくジゼル。

この花占いの結果と、その後のロイスの行動も、しっかりとチェックしましょう!

 

そして、真実の愛と花占いのジェスチャー、重要な伏線として、後半で登場しますので、しっかりメモ、メモ。

 

「ジゼル」のリハーサル映像。この場面も観られます。

 

 

そんな2人のリア充ぶりが面白くないのが、森番のヒラリオン

彼も、ジゼルが好きなのですが、「ロイス大好き」なジゼルには、その恋心は届きません。

「どうして俺だとダメなんだ!」と迫りますが、ジゼルは怯えて後ずさり、挙句の果てにロイスに追い払われてしまいます。

しかし、その時にロイスがとったある行動を、嫉妬心に燃えるヒラリオンは、見逃しませんでした。

 

このジェスチャーとつながる重要アイテムが、後半でジゼルの運命を変えることに…。

 

踊りを楽しむジゼルとロイスですが、母親ベルタは、身体が弱いジゼルに、この地方に伝わる伝説を語ります。

それは、結婚前に生命を落とした乙女は、死後にウィリという精霊として、森に迷い込んだ男を死ぬまで踊らせるという恐ろしいもの。

村人たちは、震え上がりますが、ジゼルは「まただわ」と受け流す程度。

 

★Key Point② 乙女の精霊ウィリ

 

「ジゼル」の元々のタイトルは、「ジゼル、あるいはウィリたち」だったくらい、ウィリの言い伝えは、このバレエの重要テーマ。

詳細は、こちらで解説しています。

 

そんな村へ、この地方を治める、クーランド大公と、娘のバチルド姫が、狩りの途中で立ち寄ります。

ジゼルたちは、領主様の御一行を恭しくおもてなし。

 

ジゼルは、バチルド姫のドレスにウットリと見とれ、思わず触れてしまいます。

バチルド姫は、そんなジゼルに興味をもち、「普段はどうして過ごしているの?」とか、「好きな人は?」とかガールズ・トークに花が咲く2人。

そして、ジゼルが「結婚を誓った人(ロイス)がいますの」と答えると、贈り物として、自分の首飾りをプレゼントするのでした。

 

 

※バージョンによっては、バチルド姫のドレスの生地を織ったのが、ジゼルであったという設定があります。中世の身分制度の下では、ジゼルをはじめとする村人たちは、領主に作物や織物を納めていたわけです。この身分制度も、「ジゼル」の重要テーマ。

 

村は、葡萄の収穫祭で沸き立ち、「収穫祭の女王」に選ばれたジゼルは、特別に踊りを披露します。

 

★Key Point③ ジゼルのヴァリエーション(ソロ)

 

作品中で、最も有名な踊りで、収穫祭の女王に選ばれ、恋人ロイスにも愛されるジゼルが、幸せいっぱいに踊ります。

バレエコンクールでも人気の踊りの1つで、後半、ポワント(つま先立ち)のまま進むパートが特に有名。

テクニックが、ジゼルの浮き立つ気持ちを表現していることに注目を。

 

 

 

お祝いムードが最高潮に達した時、ヒラリオンが割って入ります。

その様子は、どこか得意気で、村人同士のはずが、ロイスに向かって恭しくお辞儀をします。狼狽えるロイス。

 

ヒラリオンは、ジゼルに「ロイスのことを愛しているのか?」と問いただしますが、もちろん答えは「イエス」。

すると、ヒラリオンは、貴族の剣を見せ、「こいつは、貴族のくせに、身分を偽っているんだ!目を覚ませ!」と訴えます。

 

実は、ロイスが思わず剣を抜こうとした仕草を見逃さなかった彼は、密かにロイスの小屋を探り、隠してあった剣を見つけたのでした。

更に、領主の御一行が、ジゼルの家で休憩する間、軒先にかけてあった角笛と照合し、同じ紋章があったことで、ロイスが実は貴族であることを見破っていたというワケ。

 

 

「噓でしょう?」と信じないジゼルと、「そんなワケないよ。僕は、君を愛しているから」と安心させようとするロイスに業を煮やしたヒラリオンは、角笛を吹いて、貴族たちを呼び集めます。

 

すると、バチルド姫が、ロイスを見て、「まあ、アルブレヒト侯爵、ここで何をしていますの?」と声をかけるではありませんか。

ここまで来たら、もうどうしようもないロイスは、「ただの気晴らしですよ」と答え、バチルド姫の手をとります。

 

ジゼルは、思わず「彼に触らないで!彼は、私に愛を誓ったのよ!」と訴えますが、バチルド姫は、「何を仰るの、彼は私のフィアンセですよ」と。

まだロイスを信じたいジゼルですが、彼が目を背ける様から、真実を悟ります。

 

観客の心に殺意が芽生えるこちらの場面。ダメンズの代表格アルブレヒトが生まれた瞬間😂

 

ロイスだと思っていたのは、貴族であるアルブレヒト、そして彼にはフィアンセまでいたのです。

裏切りを知ったジゼルは、衝撃のあまり、恋人との思い出をたどりつつ、あたりを彷徨います。

そして、彼女の弱い心臓は、そのショックに耐え切れず、とうとう息絶えてしまいます。

 

★Key Point④ 狂乱の場

裏切られたジゼルが、ショックで正気を失ってしまい、生命を落とすシーンは、バレリーナの演技だけで客席を引き込む名場面。

哀しみの中で、必死に頼ろうとするかのように思い出すのは、恋人との幸せな思い出。

 

あの花占いの場面や、2人で踊った場面のメロディーが再度流れ、愛の誓いや花占いの仕草も再び登場。

ジゼルが踊るステップも、ロイスや村人たちと踊ったものですが、ボロボロの彼女には、大好きだった踊りも上手に踊れません。

それまでが幸せそうだったが故に、この悲劇が際立つ名シーンです。

 

 

(おまけ)ジゼルが死んでしまった後、「お前のせいだ!」とヒラリオンに逆ギレし、村人たちから総スカンを食らうアルブレヒトにもご注目を。こういう男、いませんか?😅

 

見苦しい男の争いが無駄にリアル。19世紀から、男はダメンズというワケ。

 

 

語りすぎたので、第2幕は記事を分けます😅

 

 

(地中にて)

ズルマ:やった!2幕は、私たちの出番よ~!

モイナ:今日のアルブレヒトも、ヒラリオンもイケメンやから楽しみ~♪

ミルタ様:…(聞こえん、聞こえん、何も聞こえん…)