もう1週間前のことですが、ウクライナ国立バレエ「 ドン・キホーテ」大阪公演へ。

 

ありがたいことに、公演時点で満25歳以下の若者を対象としたユースチケットがございまして、B・C席を通常の半額以下の4,000円で購入させていただきました。

 

フェスティバルホールの3階席って初めて座ったのですが、想像より見切れないですし、なにより気楽でいいかも。

1階席中央とかに座ると、観る側もついつい力が入ってしまうので、上階から時々オペラグラスをのぞきつつ、舞台全体を楽しむのも、(ここが1万円以上だと、強気の価格設定とも思いますが)悪くないと思いました。

 

 

 

さて、怪我やら劇場側の都合もあってキャスト変更があり、この日の主演は、イローナ・クラフチェンコとオレクサンドル・オメリチェンコ。

 

イローナ・クラフチェンコは、23歳で数々の主役を務める、注目の若手。

2022年来日公演で、日本での主役デビューを果たしており、その時は、舞台度胸に驚かされた若手のホープ。

 

 

 

 

そして、オレクサンドル・オメリチェンコは、ウクライナ出身ですが、ボリショイバレエ学校卒業後、モスクワ音楽劇場バレエやミュンヘンバレエでキャリアを積み、モスクワ国際バレエコンクール等でも入賞している実力派。

 

 

2022年の来日公演では、はるばる東京まで遠征したのですが(帰りに東海道新幹線が遅延して、もう1泊するというおまけつき😅)、その目的が、このオメリチェンコのバジルでした。

 

ウクライナへの軍事侵攻が始まった直後、アメリカのテレビ局が、ウクライナのバレエを巡る状況をまとめた報道映像を公開してまして。

 

 

その中で、劇場閉鎖の間「チェコの針鼠」と呼ばれる対戦車障害物の製造に従事していた、オメリチェンコが「必ず舞台に戻る」と語っていたのが衝撃的だったのです。

 

 

それから、数か月後、次のウクライナ国立バレエ来日公演で、ゲストとして日本デビューすると知り、ノリと勢いでチケットをとったのでした。

(だって、この報道をTwitterで紹介して暫くして、彼がゲスト出演とはなかなかタイムリー。勿論、キャスト決定への影響力は皆無です😅)

 

その思い入れがあったオメリチェンコのバジルを、キャスト変更とはいえ、もう一度観られて嬉しかった!

決して、派手なことをするわけでも、テクニックをひけらかすわけでもないですが、「正統派の振付を、パーフェクトに魅せることで生まれる美」に酔いしれました。

 

バレエコンクールが盛んになり、若いバレエダンサーが、これ見よがしにテクニックへ走るのを複雑な想いで観ていますが(ユースグランプリ、もはやびっくり人間大会ですよ、あれは💦)、こうした美しいバレエを目指してほしいなとも。

 

↓YouTubeで、見つけてきた動画をいくつか。彼のピルエット、素晴らしいのです。

 

 

 

 

 

 

↓こちらは、ボリショイバレエ学校時代の、バレエコンクール映像。

 

 

クラフチェンコとの息もぴったりで、1幕見せ場の片手リフトは、2回とも10秒ほど静止し、空いている手を振って客席へアピールするわ、リフトのままアラベスクまで披露するわでえらいこっちゃ(笑)

 

狂言自殺でも、大阪の客席からしっかりと笑いをとり、3幕のヴァリエーション後のレヴェランスでは、ナルシスト風に髪をなでつけて、客席を沸かせました。

 

対するクラフチェンコのキトリも、主演デビューの前回からパワーアップ。

勝気で情熱的なキトリを、小柄ながらスケールが大きい踊りで演じきり、見せ場のフェッテでは、もはや大阪名物の手拍子が響く中、音から少しもズレず、パーフェクトな出来。

この1年での成長ぶりも目を見張るものがあり、これからまだまだ進化しそうです。

 

フレッシュな恋人たちを演じた主演カップルに対し、「大人の余裕」を見せつけたのが、街の踊り子で登場した、プリンシパルのアナスタシア シェフチェンコ 。

走って出てきただけで、3階席まで発せられる圧倒的なオーラ!

 

エスパーダへ向ける流し目や、ちょっとした上半身の使い方からも、大人の色香が漂い、オペラグラスでエスパーダと踊り子のどちらを見るべきか、けっこう困りました(笑)

 

 

また、第2幕の夢の場では、アレクサンドラ・パンチェンコの森の女王が圧巻の出来。

1つ1つのポーズの美しさに加え、ヴァリエーションの途中、ただ歩くだけの箇所でも、その歩き方や群舞に向ける目線の使い方にも、女王の品格を感じさせました。

若手であの存在感を出せるのは希少と思うと同時に、若手の登竜門になりがちな森の女王も、やはりこれくらいのオーラを出せるバレリーナが踊ってほしいとも。

 

 

その他、バルセロナの人々やロマといったコールドバレエも、通常時よりは、1-2列分人が足りていないと思うのですが、1人1人の熱量が、それを補っていたと思います。

 

特に、ロマの踊りや酒場の民族舞踊は、振付に加えて、内側から滲み出る情感に、地域色が出ていました。

1幕のセギディリアも、1人1人が踏み出すステップや、上体の使い方に迫力があり、「優等生」になりがちな日本のバレエに足りないのは、ここよなと。

 

3階席は、けっこう空席も目立って少しさみしかったのですが、幕が進むごとに、客席のボルテージも上がってきて、あちこちで熱い拍手や歓声が起こり、大変盛り上がった公演でした。

 

首都圏では、「爆竹手拍子」と不評な大阪の手拍子カルチャーですが、特に東欧圏では、色々な箇所で手拍子が起こることもあり、バレエ団と演目によっては、アリだと思ってます。

それにしても、大阪人のラテン気質と「 ドン・キホーテ」、混ぜるな危険というくらい、盛り上がってびっくり😅

 

あと、クラシック界隈で敬遠されがちな「ブラボーおじさん」ならぬ「ブラボーお姉さん」がいらっしゃって、あまりの熱量で客席から笑いが(笑)

事前に、カラオケで発生練習されてきたのかと思うくらいで、全幕を叫び切った声帯、あっぱれ😂

Kバレエやマリインスキー、ロイヤルバレエではあまり遭遇しないキャラで、そう思うと、バレエ団ごとの観客のカラーもあるのかも。

 

 

始まるまでは、大阪まで遠いわーとブツブツ言っていたのですが、幕が上がったら、しっかり楽しんだ私。

決算期で、風車から落ちた老騎士並みに満身創痍でしたが、何だか凄く元気を貰いました。

 

東京公演だけだった「雪の女王」や「ジゼル」も好評だったそうですし、個人的に「森の詩」も気になるので、東京だけと言わず、全国公演も、色々持ってきてほしいです。

できれば、ウクライナ国立歌劇場のオケ帯同で!

(音楽が全く出来ない私が言うのもあれですが、この日の関西フィルハーモニー、びっくりするくらいヨレヨレで😅)