キャスト違いとはいえ、同じ演目を3回も観たものだと呆れられそうですが、パリ・オペラ座バレエ「眠れる森の美女」3回目の鑑賞記録です。

 

ずっと楽しみにしてきた「眠れる森の美女」鑑賞も早くも最終日。

 

この日の主演は、カン・ホヒョン(プルミエール・ダンスーズ)とロレンツォ・レッリ(スジェ)。






 

カン・ホヒョンのオーロラ姫は、スラッとした美しいスタイルが目をひきました。

東洋人らしい繊細さと堅実なテクニックを併せ持ち、これが役デビューとは思えない堂々たるオーロラ姫。

 

ただ、「パリ・オペラ座バレエのオーロラ姫」という雰囲気はあまり感じず、どちらかというとマリインスキー・バレエを観ている感じ。

永久メイさんがもう少し長身だったらこんな感じなのかな…なんて想像してしまいました。

先に観たマッキントッシュとバティストーニがいずれもフレンチ・スタイルを体現する踊りだったため、「外部入団のダンサーが、フレンチ・スタイルを習得することの難しさ」を見せられた気が。

 






対するデジレ王子は、ミラノ・スカラ座バレエ学校出身の新星、ロレンツォ・レッリ。

入団3年目(うち1年間は契約団員)で、ヌレエフの大作での主演デビューという大抜擢。

 

ヌレエフ版といえば、ダンサー泣かせともいえる振付で知られていますが、ロレンツォ・レッリは、かなり果敢に食らいついていっていたと思います。

まだまだ若いので、勢いで踊っている部分もあるとは思いますが、第2幕のヴァリエーションも手堅くまとめていましたし、サポートも有名なフィッシュダイブを含めて、大きなミスなくこなしていました。

 

何よりも、デジレ王子に相応しい貴公子のオーラは、さすがイタリア出身。

このまま順当にいけば、「パリ・オペラ座バレエのロベルト・ボッレ」として、エトワールになる日も遠くはないのではないでしょうか。

もっと彼の舞台を観てみたいと思わせる、チャーミングな魅力に溢れていました。

(チャーミングといえば、先に観たドギールとディオップが、どこかメランコリックだったのに対し、オーロラ姫の幻を見て、「こんなに綺麗な人と結婚したい!」みたいに情熱的に見えました笑)

 

他のキャストは、1回目とほぼ変わらずでしたが、やはり舞台全体を通じて、夢の世界が広がっていました。

最後のマズルカが流れ始めたとき、3時間近い上演時間にもかかわらず、「もう終わってしまう…」と名残惜しい気持ちに。

 













バレエオタク歴が長くなると、過去に観た舞台と比較したり、あれこれ分析したりと、純粋に「美」を感じることが難しくなってきてしまったのですが、この3日間は、深いことは考えずに、ただただ「綺麗だな...」と思えたひと時。

これが、人生で最後のバレエ鑑賞になっても悔いはない、というくらい満たされた気持ちで、バスティーユの舞台に別れを告げました。