配布元:ヒソカ
4:師匠と弟子(エルドラント最終決戦前 NOCP)
『師匠(せんせい)!今日はたくさん付き合ってください!』
限られた世界、まるでおおきな鳥籠の中に貼り付けられた絵のように限られた空の中、中庭で自分の剣術の師によく言った言葉だ。
よく知って何も変わらない毎日の中での剣術の稽古は一番の楽しみで、唯一自分を叱り、心から褒めてくれる師が大好きだった。
七年間か。自分が生きたのは。
本当の見果てぬ空を知り、その中で自分を確立させ、『レプリカルーク』ではなく『自分』として生きた時間はあまりに短すぎた。
殺らなければ殺られる。そんな不条理な世界を知って悲しんだ。
この戦いで、ローレライとの約束で、自分も、彼も消えるのだ。不条理な世界の為に。
死にたくない。まだ自分として機能していたい。死ななきゃいけない。自分を犠牲に、世界の為に。
「ルーク?」
心地良い声だ。ティアが呼んでいる。此れももうすぐ聴けなくなるんだ。そう思うと、寂しかった。
生きたい。この場所で確かに存在していたい。
「なぁティア、師匠は・・・・ヴァンはやっぱり、俺の事を捨て駒としか見てないかなぁ・・・・?」
ぽつり、と小さくわいた疑問を口にする。この音は長くは続かず、徐々に小さくなって朽ちていく。
ティアは少し困ったような表情をしてから、「貴方は此処まで来たのよ。捨て駒なんかじゃないと思うわ。」と答えた。
そうか、と呟き、微笑んだ。
自分はまだ弟子でいたいのだろう。大好きな、優しい師匠と、世界を滅ぼさんとする恐ろしいあの人は別人だ、屋敷に帰って待っていれば笑顔で稽古に付き合ってくれるんだ。とありもしない事実を心の隅で信じている。馬鹿で、愚かだ。
此れを『現実逃避』と言うのだろうか。よくわからないが、戦いたくないのは事実だろう。
「ヴァンを倒して、ローレライを解放するんだ。それが俺に出来る唯一の仕事だ。」
暗示するように。盲目的にその言葉を信じるように一度呟いてから心の中で復唱する。
「怖いのですか?」
後ろから低い声が聞こえる。ジェイドだ。思えば、あの厭味(イヤミ)は自分を元気付けるための物だったんだ。気付くのが遅すぎた。
「怖くないよ。戦うんだ。此れは世界がかかってるんだから。」
本当は戦いたくないし、怖い。世界がかかっていようとも、大好きな師と戦い、自分は消え、この面子で揃う事は無いのだと思うと、此処から逃げ出して、『世界なんか知ったこっちゃねーよ!』と走り去りたい所だ。
「貴方は嘘が下手ですねぇ。戦いが怖くないのは感情が欠乏している人間だけですよ」
見透かされていた。でも、なんだかその言い方は自嘲的だった。違う。ジェイドは完全な人間だ。何処もかけちゃいない。でも、言った所で「其れは貴方の推測でしょう?」と言われ、私は完全な人間ですよぉ~?と茶化されるに決まっているから口にはしなかった。
「そうだぜ、あまり正直すぎるのも難だが、嘘ばっかりも駄目だぜ。程ほどに。いつもどうりでいこうぜ」
ガイは優しい。いつも困った時に助言を与えてくれる。自分が家族の仇の息子だとしっていても。
「あぁ。ありがとうガイ。」
「この階段の先に、総長がいるんだよね。気を引き締めていこーよ」
アニスの言葉に、ナタリアが頷く。「そうですわ。相手は本気ですから、こちらも全力で挑まなければ。」
「そうだな。全力で。」そうだ。全力じゃないと倒せない。
「皆で頑張るですの!」ミュウが言う。「力をあわせればできない事はないですの!」
全員の言葉に、背中を押されたような気がした。前へ進むんだ。先のことなんて気にするな。世界を救うのは俺たちなんだ。その俺たちが立ち竦んでいてどうするんだ。
目の前の階段を駆け上がれば、世界をかけた戦いが始まる。そして自分は消えるのだ。
それでも、後ろにいる仲間や、協力してくれた人、自分が愚かな行動をとったために命を落とした人たちのためにも負けられない!逃げられない。
大きく息を吸い込んで、吐き出した。後何回この深呼吸が出来るだろうか。おそらく、簡単に数えられる数だろう。
「行くぜ!」
発した声は、震えてはいなかっただろうか。自分への鬨(トキ)の声だ。これから始まるんだ。
大好きだった師匠との戦いが。
時を刻むように、一段一段飛ばさずに階段を駆け上がった。
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本題ずれてるわOTZ
しっかりかけるようになりたいですね。最終決戦前の階段イベントを少しもじっただけです。
次は
5:博士と助手
ですね。
予定はフォミクリー研究時代のバルフォア博士とネイス博士。