11年間一緒に暮らした熱帯魚『シルバー』が死んだ。
種類はシルバーシャーク。銀色の鮫、という名前だけど、鮫みたいな形をしていただけのお話。
だからそのまま『シルバー』。
部活を終えて、友達と喋りながら、玄関空けて「ただいま。」といったとき、玄関に散らばっていた妹の荷物。
異様に静かな雰囲気。
「おかえり。シルバーが死にそうだよ」
母親から聞いたのは、驚愕の内容だった。
おそらく妹も其れを聞いて、荷物をほっぽっていたのだろう。
私も同じ。荷物をほっぽって水槽の前に走った。
彼(そもそも雄雌の判断がつかなかったが、ここでは彼にしておく)は、狭い水槽の中の隅っこで、仰向けに、白い腹をみせて沈んでいた。
そのまま駆け寄って目線を同じ高さに合わせた。
もう体勢を立て直す元気も無いのか、彼は苦しそうに鰓を必死に動かしながら、目だけで、白内障になってしまった見えない眼で私をみてくれた。
鰓の動きがまちまちで、鰓の隙間から見える真っ赤な血液の流れは、彼はもうすぐ死んでしまうのだということが信じられなかった。
やがて、彼は動かなくなった。
さようなら
ありがとう
ごくろうさま
最期に、彼は笑った気がした。
彼の命の灯火は、彼の身体から消えてしまった。
魂一つぶん軽くなった身体はやはり浮くことなく、静かに倒れただけだった。
ねぇ、最期の君の命の灯火はきっと、私たちの中で燃えてるよね。
ありがとう