2021年5月から1年近く、毎月通っていた障害家族会の会長(梨田さん)と

半年ぶりに会い、お茶しました。

ご自身は結婚4年目で夫が交通事故で脳の障害を抱え、

当時3歳と1歳だった2人の娘を育てながら37年間寄り添ってきました。

夫の障害の程度は軽くなかったらしく、復職はかなわず

障害者向けの作業所で働いてきて、今70歳前半とのこと。

 

発症当時は今以上にこの障害のことが一般には知られておらず、

医療や福祉の知見もほとんどなかったはずで、

事故の加害者を相手にした裁判も抱えながら

どれほど大変だったか、想像に難くありません。

 

梨田さんは、

自分は長年にわたって献身的に夫を支えてきた(私にはそう見える)けれども、

誰もがそうすべきだ、それが当たり前だとは考えない。

障害の症状の出方や程度は人それぞれ違い、

家族の辛さもみんな違う。

そんな考え方で、

会のメンバーに対して「こうすべき」とは一切言わない。

私が吐き出す愚痴や恨みがましい言葉もそのまま受け止め、共感してくれました。

だから、私にとってあの会は大切な癒しの場でした。

「頑張ってるね」「無理しなくていいんだよ」という言葉をかけてもらうために通っていたようなもの。

梨田さんとは10歳ほどしか違わないけど、

母親のような包容力を感じて甘えていた気がします。

 

さて、そんな梨田さんとの久々の再会。

元夫は家を出た後も、月いちのその会に通っています。

だから、私よりも梨田さんの方が今の彼の状況を知っている。

というわけで教えてくれた、「げげっ」な話。

 

元夫は2カ月ほど前(? 離婚後2カ月の頃ですね)、

「ちゃんとしたお見合い」をしたそうです。

離婚後すぐ、「ツ○イ」という大手結婚情報サービスに入会したことは、

クレジットカードの明細(今でも見ることができます。めったに見ないけど)でわかっていました。

でもお見合いはそれじゃなくて、知り合いの世話好きおばさんの紹介だったらしい。

独身時代、10人前後のお見合い話を世話してくれたその女性の話は私も聞いていて、

結局それらのお見合いはどれも成就せず、

初婚の時も私との時も普通の恋愛結婚でした。

 

なるほど、「離婚したからまた誰か紹介してほしい」と頼んだわけですね。

とにかく節操もなく結婚したいと思っているのはわかっています。

その話を障害の当事者・家族会で報告したらしい。

きちんとした履歴書も書いたそうですが、

障害や脳梗塞については

「会う前に断られてしまうから書かなくていい、

見合いの場で私から説明するから」とその女性が言ったそうです。

 

お見合い時の具体的なやりとりは知りませんが、

結局、先方から断られた。

「私は介護のために結婚するつもりはありません」と。

 

当たり前すぎる話だし、そのお見合い相手はまともな人だと思う。

元夫が誰かのために生きるつもりがないことは私にはわかりきっていて、

ただただ自分のお世話をする人が欲しいだけ。

その本音を見合いの席であからさまにさらしたとしたら

アホだけどまあ、正直でよろしい、

おかげで相手はちゃんと断ることができたし、と思いますが、

その世話好きおばさんはひどいと思う。

 

恐らくはこの障害の一般的知識もなければ、

元夫の具体的問題も何も知らず

(離婚の原因は「妻が僕の病気を理解せず、介護を放棄したから」と伝えているはずだから)

趣味とも言えるお見合いの世話を無責任に引き受けたのだと思います。

こんな重大な障害を申告せずに相手を連れてくるなんて詐欺でしょ。

 

元夫が誰とお見合いし、どんな結婚をしようと構わないけど、

この軽さに、私が抱えていた辛さや悲しみをナメられたように思えたし、

少なくとも当初は、愛する夫だからこそ守り、支えようとしていた自分の気持ちが

「介護の後継者探し」という行為によって踏みにじられたようで

正直、とても不愉快でした。

そんな断られ方で、お見合い斡旋おばさんも元夫もざまみろ。

 

息子は今日、自ら誘って父親に会いに行っていたのですが、

(お見合いのことを先に知っていたら行かせなかったと思う)

元夫やそのおばさんは、

息子が胸に抱えるものに思いをいたすこともないのでしょう。

 

元夫はお見合い失敗について梨田さんに報告した後、

「看護師や介護スタッフの女性はみな優しくしてくれる。

ああいう人がいいと思うのだけど、知り合いに誰かいませんか」と言ったらしい(笑)。

梨田さんは「あの人達が優しいのはお仕事だからね。

わざわざ家族になって面倒みてあげたいと思う人はいないと思うわ」と返したとか。

こんなサイテーな男が自分の夫だったなんて情けない、恥ずかしい。

 

梨田さんからは

「だからね、Daisyさんが離婚したのは本当によかったと思うよ」と言われました。

「しんさん(元夫)は、何で離婚に至ったかを一生理解できないし、

悪かったとも思わない、後悔もできない、

そんな人と一緒になんか暮らせないわよね」と。

 

「私だって、37年やってきたって、今だに絶対添い遂げようと思ってるわけじゃない。

あなたのように暴力ふるわれるわけじゃないけど、

それでもこん畜生と思って腹の虫がおさらまらないことだって多い。

70近い今でも、自分の人生って何なんだと思っちゃう。

これからだって離婚するかもしれないし、

早々と施設に押し込んで気楽に暮らすかもしれない」。

 

「私自身含め、経済的な問題で別れられない人も多い中、Daisyさんはラッキーなケース。

経済的な不安が少ないなら

『もう面倒みるのやめて別れます』っていう選択肢もあっていい。

相手に障害があるからって

みんながみんな、死ぬまで一緒にいなきゃいけないなんて、そんなのおかしいよね。

私はね、苦しんでいる家族に

Daisyさんのような選択によって、自分の人生を回復できることもあるって伝えていきたいの。

そのためにもDaisyさんのこれからをちゃんと見ていたいから

お付き合いを続けましょ」と言ってもらいました。

泣けました。

 

「Daisyさんは自分を責める必要など全くないよ。

あなたの元旦那は私達の会を心地よい居場所と思って通ってくれるけど、

この会を見つけて彼をつないでくれたのもあなたでしょ」と。

梨田さんに出会えて、わかってもらえてよかった。救われます。

 

包容力に満ちた梨田さんは、

これからもアホな元夫のことも見守ってくれるでしょう。

それは、私にとってささやかな安心感です。