2020年夏から翌年春先にかけて、半年間の別居生活について書きます。

夫が出て行った日のこと↓

 

 

その夜、息子と私は解放感で満たされ、

しみじみうれしかった。

夫が占拠していた部屋をきれいに掃除して

ベッドのシーツを清潔なものに取り替えて私の部屋にした。

 

常に不機嫌でイライラしていて

ささいなことで声を荒げたり拳を振り上げようとする人がいない

静かな家、穏やかな夜ー。

久しぶりに深く息を吸えている気がした。

 

でも、早くも翌朝には電話で夫の不機嫌な声を聞かされた。

財布が見つからない、そっちに忘れてないかというのだ。

ここには何もないよ、引っ越し荷物の中に紛れてるんじゃないのと答えたけど、

あのぐじゃぐじゃ状態の引っ越しなら、

いろんなものが見つからなくても仕方ない。

数時間後にはうちに来て、

やっぱりないからお金を貸してくれと言われた。全く…。

 

さらにその2日後には

「インスリンがなくて朝ごはん食べられない。

そっちの冷蔵庫に何本か入ってない?」と。

何も置いていかれないように冷蔵庫からタンスの隅まで全部私がチェックしたし、

命綱であるインスリンを忘れさせるわけがない。

きっとこれまた引っ越し荷物に紛れているだけに違いない。

 

仕方なく、リモートワークを中断して自転車で15分かけて

夫の新居へ。

案の定足の踏み場もない状態だったけど、

どんなに探してもインスリンはない。

何本残っていたの? 冷蔵庫からは持っていったの?

などと問いただした結果、

使いきってなくなってしまったのだという結論に。

 

高次脳機能障害の夫は薬にしてもお金にしても

目の前にあるものを使うだけで、

「残りはこれくらいだな」と意識することがない。

完全になくなってから「あ、ない」と気づくのだ。

 

結局、夫はリモートワークを半日休にして

空腹のまま、電車で1時間近くかかるかかりつけの病院へ。

私はやれやれ…とつぶやきながら家に帰った。

仕事を再開してすぐ思い立ち、ケアマネさんに電話。

その方には別居のことを伝えてあったので、

夫の(名ばかりの)身元引受人ははるか遠くに住む義妹に替わり、

私とは関係が切れたことになっていたのだけど。

 

インスリンの一件を伝え、一人暮らしだと

同様のトラブルが頻発しかねない、

申し訳ないけどインスリン含む薬の管理をお願いしますと伝えた。

ケアマネさんの計らいでその後すぐ、

夫の新居には週いちで訪問看護が入るようになった。

 

そんな調子で、夫の一人暮らし、私達の別居生活は

波乱万丈の幕開けとなったのであるーつづく。

 

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あんなことがあったのが嘘のようにとりあえず平和な2022年春。

息子の明日のお弁当(今年度最後)用に

夫に焼きそばを作ってもらった。

私達のリモートワークのランチにもなる。