2018年10月に脳梗塞で倒れた夫は、

救急搬送された病院に2カ月弱入院。

杖をついてゆっくり歩けるようになった12月中旬、

リハビリ専門病院に転院した。

 

最初の病院のケースワーカーから地元のリハビリ専門病院を4つ紹介され、

そのうち、良さそうだった2つを私が見学。

一つは自宅とは別の区だったけど、ホームページを見ると

新しくて明るくホテルライクの施設で、夫が絶対気に入ると思い、

候補に入れて見てきた。

一般的にリハビリはとても辛いと聞くから

少しでも気持ち良く過ごせる施設で頑張ってほしい、

そう思っていた。

 

区内の病院も比較的きれいで落ち着いた印象だったし、

スタッフの感じも良くて迷った。

しかし、ちょうどインフルエンザの流行期で、

院内での子どもとの面会は不可とのことだったので、

1階ロビーならOKというもう一つ(ホテルライクの方)に決めた。

 

入院でありがちな「大部屋に空きが出るまで差額払って個室に入る」となり、

1日1万円ちょっとの部屋代で、

その辺のビジネスホテルよりよほど広々、

きれいで「私が入院したいわ」と言いたくなるほどの快適な部屋に入った。

相部屋も十分きれいでプライバシーに配慮されたつくりだったし、

一日も早く空きが出て移れるといいなと思ったものだ。

 

が、結局夫はそれから退院までの3カ月半、

ずーっとその個室で快適な入院ライフを過ごすことになった。

いや、1カ月弱で相部屋に空きは出たのだ。

ところが、義母と義妹が 可愛い息子、愛しいお兄ちゃんに

「気分良くすごさせてあげたい。差額は出すから」と言ったから。

 

その頃はすでに、私は夫の「リハビリやる気ない問題」に悩み始めていたので、

義母と義妹には

「相部屋に入り、他の人とのコミュニケーションで刺激を受ける方がやる気が出るのでは」と

言ってみたのだけど、一顧だにされず

「とにかく私達は個室希望だからね。あとはお兄ちゃんと話して」

で終わり。

元々ぐうたらで「明日できることは今日絶対にやらない」タイプで、

自分の辞書に「根性」「努力」という言葉など載っていない夫に言ったら、

当然のごとく

「お袋が金出すって言ってるんなら、ありがたくここにいさせてもらうわ」

で終わり。

 

こうして夫は、20平米はあろうかと思われる

清潔な部屋で1日2、3コマ、計1時間半ほどの「正課」のリハビリをする以外は

いつもベッドでゴロゴロして、スマホをいじる暮らしに興じることとなった。

 

 

 

 

入院時、担当のスタッフからは

「ここでは『正課』のリハビリ以外も、

起きている間は全てがリハビリというつもりで過ごしてください。

朝起きたらパジャマからリハビリ用のウェアに着替え、

寝るまでそれで過ごしてもらいます。

その気になれば、リハビリのための道具もスタッフもいくらでも活用いただけます。

いろんなアドバイスもできます。

ワタナベさんは職場復帰を目指しているわけですから、

ここでの期間、しっかり頑張ってください」。

そう言われたけど、「正課」以外で何かやるとしたら私に言われて渋々。

それすらも、2分継続させるのに5回声をかけないといけない、という具合。

そして、そのうち私からの声かけも無視するようになった。

 

今、障害の当事者会で出会う人たちは

「この病気で、ましてや発症直後に真面目にリハビリする人など皆無ですよ」と

言われるけれど…。

それでも、私は嫌だった。

ちゃんとやってほしかった。

私と子どもと3人で、元通りとはいかなくても以前に近い暮らしをしたいんだという

気持ちを見せてほしかった。

たとえ、結果的にリハビリの効果が出なくても

頑張っている姿を私と子どもに見せてほしかった。

「あの時、お父さんは精いっぱい頑張ってたよね」と思えるからこそ、

子どもと一緒に夫を支えて、

3人の楽しい暮らしを築き直していけると思っていた。