ちょっと昔に遡る。
私がジャズを好きになったのは母の影響である。
母はかつてレストランでピアノの弾き語りの仕事をしていた。大阪の飲み屋街、新地のバーで歌い、地元のジャズライブにもよく出演していた。
私は中学生時代まで、私はジャズが嫌いだった。確か、「大人っぽくて、なんだかやらしい」というイメージを抱いていたと思う。よくリビングで母が Peggy Lee の Fever やNat King Cole の Unforgettable などを流しているのを煩わしく感じたことだ。英語や独特のリズム感が理解できなかったのだろう。今思えば、最高の環境で生活していたと感じるのだが。
高校三年生のころに、Dave Brubeck の Take Five を皮切りに、ジャズピアノに目覚め始めた。大学でジャズ研究会に所属し、スタンダード・ジャズをひたすらセッションで弾いた。決してうまくはなかったけれど、弾くことに幸せを感じることができた。
Roland Hanna Trio の Day Dream には特別な思い入れがある。大学で最初で最後のぴょん・ピアノトリオだった。練習不足のせいで泣きたいほどひどい仕上がりだったけれど、とにかくものすごく楽しかったことを覚えている。
それから何年が経っただろう。ずいぶんピアノから遠ざかっていた。
でもジャズのスイングは体に染みついていたのだ。
自然なコード進行、アドリブ、MD とカセットテープの中の古いジャズ・ミュージシャンの声――私は何も忘れてはいなかった。
そして今、まさか協力隊でカメルーンに来て、こんなに音楽に救われるなんて。
Monsieur Limis はフルート、ギター、ピアノも弾ける。素晴らしいリズム感と絶対音感を持ち、コード譜を渡したその日にその曲を奏でてしまう。

